第94話 テンプレ爆発という現象

ギルマス宛の封書を勝手に開けちゃったけどバレなければ問題なっしよ! そうとなったらあの猫が持ってきた紹介状を隠さなきゃ…!


…あれ? どこ行った? カウンターの内側の書類の山の上に置いておいたはずなのに…?


紹介状が見つからないと焦って探していると……


『あの~』


「ビックゥ~ン! …ってなんだノアか、おどかさないでよ!」


ノア「…? 別にーおどかしてはいませんけどー」


「いったい何?!」


ノア「冒険者登録するのに、魔力の測定しなくていいんですかー?」


「えっ…? …ああ、そうだね。魔力の測定ね。分かってる、いまからやるよ。ってか気が利かないねぇ、そう言うんだったら測定機くらい持ってきてくれりゃぁ~


ノア「これどうぞ~。そう言うと思って持ってきておいたよ~」


「え?! ああ、ありがとう……気が利くね」


ノア「主任の教育・・がいいカラネー」


よく言うよこの娘は…と思っているとノアが乱暴に測定用の水晶玉を押し付けてきた。危ないなぁ、落としたらどうすんだよ…。


で、あの猫は…? 居た、こちらに向かって来る。ああ、ノアが手招きして呼んだのか…。


ノア「猫ちゃん見てたよー、強いんだねー、びっくりしたー」


猫「まぁにゃ」


ノア「今から魔力の測定するねー。魔力紋をギルドカードに登録する必要があるの、ついでに魔力量も測定できるんだよー。じゃぁ主任お願いしますね~」


「あ? ああ、あとはアタシがやるから…、お前ノアはもういいよ」


ノア「は~い」


猫「おお、水晶玉魔力測定にゃ~! これもテンプレだにゃ!」


猫が前に置かれた水晶玉を見て何かわけの分からない事を言っているが…


猫「魔力を注ぎすぎて爆発するんだよにゃ?」


「……は? 爆発? 何を言ってるんのアンタ?」


猫「でも大丈夫にゃ! 俺は魔力のコントロールが上手だからにゃ。そっと注ぐにゃ…」


猫は肉球をペタッと水晶玉にくっつけると、淡く水晶玉が光った。


「なんだ、大した事はないね…。ああ、さっきの模擬戦で魔力を使い切ったのかい?」


この水晶玉は魔力が多いほど強い光を放つ。だが、猫が触れても薄っすらと光るだけだった。まぁ、獣人は体力はあるが魔力が少ないのが定説だからね。と疑問に思わなかったのが失敗だった。さっき模擬戦を見ていたのに、あまりに非現実的過ぎて心が受け入れられていなかった…。


「よし、魔力紋の登録はできた。もう離していいわよ」


猫「で、やっぱり魔力を注ぎすぎると爆発するにゃ? やってみていいかにゃ?」


「は? 何を言って……」


待てよ? さっきコイツ、治癒魔法使ってたよな? 治癒魔法って結構魔力を必要とするはず。それをポンポン何度も使って……しかも上級治癒魔法まで使ってたよな? 上級治癒魔法って、とんでもない魔力量が必要なはず……


……まさか?!


でもまぁ、どんなに魔力が強くたって、爆発はしないいよね? 大丈夫だよね???


だが…一瞬迷っているうちに、水晶玉が強く光り輝き始めた。あっという間に光は強まり、眩しくて目を開けられないほどになって…


「まさか! ちょまっ…!」


……遅かった。


水晶玉は目を閉じていても眩しいくらい強く光り輝き……


…バン! という音がした。


……どうなった?


強い光に目が眩んで部屋は真っ暗闇にしか見えない。


徐々に眩んだ視力が戻ってくると、台座を残して水晶玉は姿を消していた。周囲に居た者たちに白い粉が掛かっている。アタシも体を見たら粉まみれだった。これは…水晶が砕けて粉になったのか…?


てか猫! なんでお前は粉を被ってないのよ?


猫「俺は障壁を張って防いだからにゃ。爆発したら危ないにゃろ?」


自分だけっ?! 周囲のアタシ達はいいんかいっ!


猫「自分の身は自分で守るにゃ」


こんにゃろ。


しかしどうしよ、始末書もんだぞこれ……


猫「それで、身分証はできたにゃ?」


「……え? ああ…、それは先に済ませてたから大丈夫だけど…。ほら。失くすんじゃないよ? アンタの魔力紋が登録されているから他の者には使えないけど、失くしたら再発行には始末書と手数料が必要だからね?」


猫「へぇ、これが…。…ん? Fランク? Sランクじゃないにゃ?」


「ばっ、バカ言ってんじゃないよ、いきなりSランクなんて出せるわけないだろ!」


猫「さっきの…ラング…違ったラルクだっけ? あいつのランクは?」


「ラルゴね。アイツはCランクだけど…」


猫「じゃぁおかしいにゃ。Cランクに勝ったんだから、最低でもBランクじゃないにゃ?」


「そんな簡単にはいかないんだよ。確かに、アンタに戦闘力があるのは分かった。だけど、ランクアップに必要なのは単なる腕っぷしの強さだけじゃないんだ。ランクに見合った知識と実績、ギルドへの貢献度や人徳も必要なんだよ」


猫「人徳~? それはちょっと自信がないにゃぁ……」


「それ以外はあるのかい?」


猫「あるにゃ!」


「そっ、そうかい……。だが、アタシの立場では、Fランクスタート以上の許可は出せないんだよ。本来なら子供はGランクスタートなんだ。それをFランク認定してやってるだけでも特別扱いなんだからね?」


猫「子供? 俺は子供じゃないにゃ」


「小さいから子供と同じ扱いしてしまったけど、そういや何歳なんだい?」


猫「十六歳にゃ。この国では十六は大人と認められるんにゃろ?」


「じゅうろく? 本当に?」


猫「間違いないにゃ。先日自分を鑑定してみたら十六だったにゃ」


「…アンタ、【鑑定】も使えるのかい?」


猫「魔法は全て使えるにゃよ? 賢者猫だからにゃ」


「賢者猫~? なんだいそれ、聞いたこともない。あ、もしかして、賢者様の飼い猫かい? それなら納得だけど…」


猫「飼い猫じゃないにゃ~! まぁ強いて言えばメイヴィスとは “友人” かにゃ?」


「はいはい、賢者様の友人の猫様ね。何でもいいけど、ランクアップしたければ、正規ルートで挑戦しな」


猫「正規ルート?」


「ランクアップには試験があるんだよ。まぁその試験を受けるのにも条件があるんだけどね」


猫「その条件とは何にゃ?」


「ランクによって条件は変わってくるんだけど、例えばEランクに挑戦するには……なんだっけな? …五十体以上のゴブリンの討伐、二十体以上の魔物の素材の納品、だったかな?」


猫「ゴブリンだにゃ? 分かった。すぐ狩って来るにゃ!」


「え、ちょっと…?! ああ、行っちまったよ。ゴブリンがどこに居るか分かってるのかね?」


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