第93話 奴の失敗は、俺の剣の腕を舐めた事だ
奴の失敗は、俺の剣の腕を…いや俺の“剣”を舐めた事だ! 俺の剣は魔法防御無効化(弱)が付与されている、上級種の
俺は全速力で剣を振る。
その剣が猫人の胴体を薙ぐ。
斬った!
そう思った。だが…
手応えがまったく帰って来ず…
俺の剣は奴の体を素通りしていく…。
上下に奴が分断されたように見えたのは錯覚だった。俺が斬ったのは奴の残像だったのだ。
気がつけば、いつのまにか奴は先ほどとは反対側に居た。
猫人「シャキーン」
奴は妙な効果音を口で言いながら爪を出して見せた。
猫人「今度は魔法を使ってみるにゃ」
そう言いながら奴が手を振った。すると、
俺は慌てて一つを剣で撃ち落としたが、残りは三つ。二つは必死で身を捩って躱したが、一発掠ってしまった。
猫人「ほれほれほれにゃ」
奴が手を振る。その度に四つのエアカッターが飛んでくる。何度も連続で飛ばされるエアカッターを、俺は必死で逃げまわるしかなかった。
「くそっ! どうなってやがる??? 詠唱はしねぇのかよ?!」
通常、魔法攻撃は、呪文を詠唱するものだ。そして詠唱が終わってやっと一発撃てるのが普通だ。連発などできない。そのために前衛職が時間を稼ぐ必要があるのだ。それを奴は、シャドー猫パンチをする度に飛ばしてくるのだ。本当に、どうなってやがる???
猫人「呪文は知らないから詠唱したことはないにゃ」
「はっ?!」
声が後ろからした。
どうにかエアカッターの乱打から逃げ切ったと思ったら、いつの間にか背後に奴が居た…。
猫人「シュバーン」
すかさず奴の爪が俺の太ももをヒット。そして、俺の足は切断され飛ばされてしまった。
「だから効果音を口で言うんじゃねぇよ……」
なんかもう、恐怖で感覚が麻痺してきて、逆に冷静に状況を見ている自分が居た。
片足を失った俺は倒れる。先程、ニーゾの時は引っ掻かれても皮膚が切り裂かれるだけで、手足が切断されるような事はなかったはずなのに……?
斬られた足の断面から大量の血が吹き出る。
モルメル「ちょ! やり過ぎだ! ルール違反だよ!」
慌てて受付嬢の主任モルメルが止めに入ってくれたが、もうちょっと早くお願いしたかった…。
猫人「ルール? は殺してはいけないってだけだったはずにゃ。別に殺してはいないにゃ? 怪我まではOKってお前も言ってたにゃろ?」
モルメル「そっ、そんな事言ってない!」
猫人「言ったにゃ。ギルドで治療薬を用意してるって言ってたにゃ」
モルメル「そっ、それは……多少の怪我なら確かに
猫人「ああ、それなら大丈夫にゃ、俺が治してやるにゃ」
そう言うと猫人は俺の足を拾って俺の足の断面にくっつけると治癒魔法を使った。
一瞬、光とともに強い痛みがあったが、すぐに収まり見れば俺の足はキレイにくっついている。さらに斬られたズボンまで直ってるのはどういうわけだ???
猫人「さぁ、まだ勝負はついていないにゃ。続きを
俺の判断は早かった。最早メンツなどどうでもいい。これ以上この化け物の相手などしていられない。
ニーゾは繰り返し何度も切られては治療されてはまた切られる事を繰り返された。俺の場合は、手足を切り落とされてまた接合されてを何度も繰り返される? 恐ろしすぎるだろ!
俺は速攻で土下座を決め、大声で叫んだ。
「参りましたー!!」
猫人「なんにゃ、もう終わりかにゃ? …じゃぁ模擬戦終了、合格って事でいいにゃ?」
「もっちろんでございますぅ!」
背後で俺に賭けて損をした野次馬共が何か言ってるが知らねぇっての……!!
俺の背後では、猫人が口をポカンと開けている
猫人「試験は合格にゃ?」
モルメル「え?! そっ、そう…ね…。しっ仕方ないね。じゃぁ、
そう言うとモルメルはフラフラと受付カウンターに戻っていった。
+ + + +
■モルメル
ちょ、何なのさアイツ…! 化け物みたいに強いじゃないのさ…ラルゴって確かCランクだったはず。それなのに、まるで相手になってなかった…
大体、あの治癒魔法は何?! 切断した手足を
もしかして、アイツが言ってた賢者メイヴィスの紹介状って、まさか本物だったのか?
ギルマス宛になってたのを勝手に
これは……隠し通すしかない!
バレなければ問題なっしよね!
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