第121話 人が人を呼ぶ

実力者が思ったよりも多いおかげで、樹海を進行するスピードが思ったよりも早い。


樹海を進行した場所にはモグラ族が木の根から取り除き、獣人族が木の枝を切り落としてから左右に並べることで綺麗な道が出来る。


最後にドワーフが仕上げをすることで魔物が荒らさない限りはずっと続く長い道の完成だ。


3ヶ月の期間で真横にかなり奥深くまで進んで行ったのだが、ついに変わった場所にでくわした。


廃墟や崩れた瓦礫で見る影もないが、町とも思える場所に着いた。


以前はここに町があったのだろうか?


広さもかなりある。


そして、町の中心に見慣れた神殿と思われる建物がかろうじて分かる。


神殿に入り、俺は手慣れた感じで仕掛けを作動させて地下の階段を下りた。


案の定台座の中心に一本の剣が刺されていたことで確信した。


この街も結界で守られていたのだろう。


剣はひび割れ、いつ折れてもおかしくない状態だ。


結界を修復したいのだが、この剣を修復出来るほどの剣を持っていない。


一度まぜるを使って修復してしまうと同じ剣はまぜれないので慎重にいかないといけない。


しかし、こんな拠点に適した場所はないのでこの場所を立て直すことにした。


人間主義の連中から嫌がらせも日に日に強くなっているのでいい頃合いだろう。


ただであげるのはもったいないので、秘宝級の剣一本と食料で村を譲ると言っておいた。



こうして新しい町を修復しながら樹海を切り開いて行く。


新しい町を魔境町とし、樹海手前の村を樹海村と名付けた。


それから一ヶ月ほどで生活できる準備まで整ったので引っ越すことにした。


何故こんなに早くと思うだろうが、人族主義の代表・デレゾンが本当に宝剣をもってきたのだ。


デレゾンは肥えた体が醜い容姿を際立たせたような貴族だ。


たぶん少しでも快適に過ごしたいのだろう。


前に娼婦を呼んで楽しんでいたらしいので、居心地のよい家が是が非でも欲しかったのだろう。


デレゾンが宝剣を持ってきた時から、いつ引っ越すのだと急かしていたので予定を早めて引っ越すことにしたのだ。


まあ、これで結界も修復でき安全に過ごせるので問題はない。


魔境町は井戸水もあり、土の成分も優れていることから農業にもうってつけである。


こうして開拓と街の発展を繰り返すことで忙しい日々を過ごしていく。


気付けば樹海に来てから半年は経っただろうか?


魔境町も樹海に送られた種族達が噂を聞いてどんどん人が押し寄せてくる。


さらには大量の魔石を目当てに商人が続々と押し寄せてきた。


もちろん腕のよい冒険者を雇ってくるので商品はお高めだが問題はない。


魔石と交換なので町に必要な物を片っ端から買っているとさらに噂が噂を呼び凄いことになっていく。


しかし、一番の収穫は結界の外から安全に魔物を討伐できることだ。今まで戦闘に参加出来なかったレベルの低い者達までもがレベルを上げていく。


ここで始めて知ったのだが、神の祝福のスキルを授かってない者がレベルを上げることで突如スキルが手に入る事例が相次いだ。


おそらく一定のレベルに上がると授かるのかもしれない。


もともと一つのスキルも授からない者は稀なのだが、何故かそういう者が多く樹海に送り込まれていることに驚いた。


厄介払いとして送られたのだろうか?


ただ、今まで苦労した分の恩恵なのか使い勝手の良いスキルを手にする者が多い。


その中に《邪避け》と言うスキルを持つ者が現れた。


動物で言えば、嫌な臭いがするから近寄らない程度の効果みたいなのだが、今の状況に一番適したスキルだ。


その者には綺麗にした道をひたすら魔力が無くなるまで《邪避け》を使ってもらう。


魔物が嫌がる程度の恩恵らしいが、結果だけみると各段に魔物に遭遇する確率を減らすことに成功したのだ。


もちろん実力者達もさらにレベルを上げ、魔境町には屈強の戦士が増えていった。


それを聞きつけた冒険者ギルドが早急に駆けつけてきた。


魔石や魔物の部位だけでも儲かる算段なのか、ギルドをあっと言う間に建ててしまった。


これにより人族主義が雇っている冒険者とは別に魔境町に足を運ぶ冒険者まででてくる。


こうなると人が人を呼び、魔境町は人が増え続けている状態だ。


そんな中、冒険者ギルドから提案をされた。


樹海の場所はどの国にも属していないため、今後を見据えて国家として立ち上げないかと相談されたのだ。


この町を巡って戦争でも起こることを危惧しているらしい。


そのことを聞いた瞬間から俺はこのまま樹海を切り開くことで別の大陸にいけることを確信した。


この冒険者ギルドの提案を各種族の長を呼んで今は議論してもらっている。


もちろん急ぎの案件ではないので、それぞれの考えを聞くだけだ。


こうして順調に町を発展させ、樹海にきてから10カ月間が経つころに事件は起きた。


この町を見つけた地点と同じくらいの場所を切り開いていた時に、突如遠くの方から叫び声が聞こえたのだ。


その声が聞こえる方に耳を傾けると、さらなる叫び声や神に助けを求める声が微かに聞こえる。


その声が聞こえた方向に俺はさらに神経を研ぎ澄ます。


その瞬間、叫びとも思える歌声が聞こえた。


俺は居ても立っても居られなく走り出していた。


仲間に指示をだし、俺はユニスに乗って空を駆け出した。

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スキル「まぜる」がチートすぎta。~虹色の不死鳥使い~ アスラン @kawa1213

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