第119話 樹海
オルに魔族のことを聞いたのだが分からないと言われた。
魔王復活のことや魔族の習性などが知りたかったのだが、リザードマンは魔族と獣人族の中間のような存在で何も情報は得られなかった。
それからもアルバータ共和国を見て周ったが、俺が泊まるのはリザードンの村である。
何故?
それは川の麓に水田が立ち並び、新米が美味しいからだ。
リザードンが米を作っていることにびっくりしたが、美味しい米が食べれるので些細な事は気にしない。
ドワーフの村や熊の獣人の村、さらにはモグラの村まで見させてもらった。
そんな矢先、リザードマンの村が騒がしい。
オルに何があったかを聞いたのだがすこぶる機嫌が悪い。
オルは渋々だが話だした。
なんでもロードスター国から領土の明け渡し、もしくわ魔族が活発化になってきているため、魔境と呼ばれる樹海の手前にリザードマンの種族などを派遣して防波堤の村を建てよ。
それに従わぬ場合は戦争を仕掛けるとのこと。
何て身勝手なと思うが、異世界では対等とする国がないと権力が強い国が好き勝手する傾向が見受けられる。
魔族が活発化になり危険になってきているのなら協力して対策を考えろよと思ってしまう。
しかし、それを踏まえて長老会で話し合った結果が、リザードマンと猫族とモグラ族を派遣することに決まったそうだ。
さらにはリザードマンのみお年寄りから子供まで全ての者を派遣せよとのことで、それに対してオルは怒っているのだ。
ここで反乱を起こしても無駄死にになるので、まだ費用がでて一から村が作れるのならばと渋々受け入れたらしい。
「なるほどー、じゃあ俺も一緒に行くよ」
「お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「えっ、ダメなの?」
俺の言葉にシャムも反応する。
「幻獣様のご主人様にそんな危ない場所に行かせられませんニャ」
「猫族の戦士もどうせ派遣されるならシャムも一緒でしょ?」
「私は…そうです…ニャ」
「これも何かの縁だ、お前らが死ぬ姿を見たくないしな」
「なんてお方ニャ」
俺はついシャムの頭を撫でてしまう。
「にゃー、気持ち―ニャ」
「あ、ごめんごめん、つい」
「もっとニャ」
俺がシャムを撫でているとテテとキュイも一緒に撫でられに来る。
やっぱり動物は可愛いよな。
ロードスター国の汚いやり方に怒りを覚えていたが、テテ達に癒されてすっかり気分が良くなったのである。
もちろんアルバータ共和国の対応もどうかと思うが、戦争で亡くなる命を考えた結果の判断なのだろう。
ただ、一度要求を呑むとこれからが大変だと言うのに。
まあ俺は猫人族とリザードマン達の味方側につくことに決めた。
それに一つ気になることもある。
樹海と呼ばれる森の向こう側には何処かの大陸と繋がっているらしい。
樹海の奥深くなのか浅瀬の向こうなのかは分からないが、もしかしたら目的の大陸かもしれないからだ。
ちなみに樹海の隣りには霊峰山と呼ばれる龍が住まう山もある。
もし樹海に魔族がはびこっている場合や龍の存在も含めて慎重に集落を作っていかないといけない。
こうして俺達は樹海に向けて出発したのである。
やっと樹海に着いたのだが、目の前にそびえ立つ木々が日本の倍の大きさで、奥の方が見えないである。
あまりの光景に俺は驚きを隠せない。
その樹海を見ながら集落を作る場所を探す。
場所に指定はないが、向こうの連中と上手くやるようにと言われたようだ。
俺達以外にも派遣された種族や部隊がいるようだ。
もしかしたら大陸を上げての対策ならば、文句を言っていたことを反省しないといけない。
そうして周りを調べるとどうやら反省しないといけないようだ。
ロードスター国も兵を前線に送っていたようだ。
さらには違う国々も合わせれば万を超える部隊が派遣されている。
各国がそれぞれの場所に陣を張っているので、猫人族の村長にリザードマンが好む川付近に陣を張っていいか確認してもらう。
主要の人数が多い国々に確認をとると、前線に一番近い川付近なら許可がもらえた。
やはり川と言えど水源確保のため、どの国も水を汲みにくるのでその場所よりも前線ならばと許可が下りたのだ。
まあ川付近の前線にはなるが、樹海の中心の前線に比べればまだましである。
こうして俺達は樹海に集落を作るのだが、ここでモグラ族の有用性に気付かされるのであった。
まずは川から離れた場所に土も盛り上げ集落の土台を高くする。
その時にモグラ族に絵を書いて見せて頼んだのだが…。
3日とかからずに3m以上の高さの盛土が完成した。
さらには樹海の木を根っこから抉ることで木を倒してくれた。
木の枝を爪で切り裂き一本の丸い木の完成だ。
その木を盛土の外側に固定させ、さらに土を覆いかぶせて固めてゆく。
こうして低空差を利用して魔物を迎撃する体制を整える。
もちろん柵も作るのだが、策は3段式にする。
1m・2m・3mと段々と高くすることで集落から弓矢で魔物を討伐できるようにするためだ。
こうして立派な集落の柵と土台があっという間に出来上がったのだ。
さらにここで嬉しい誤算が現れた。
この集落の様子を見ていたドワーフ族が一緒に参加したいと申し出てくれたのだ。
ドワーフ族が仲間になったことで一気に集落作りが加速していった。
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