第117話 可視化

やはり空を飛ぶと移動が速いな。


隣国アルバータが見えてきたので、俺はユニスに伝えて手前で降りて徒歩で向かう。


アルバータは多種族が一つの国として暮らしているそうで、国境のように長い関が境界線を守っている。


関を一歩入れば各種族が好きな場所に住み着いている。


森にはエルフと獣人が住み、平地には人族が住み、ドワーフは洞窟に住み着いていると聞いた。


さらには川沿いにリザードマンなどの種族もいるそうだ。


リザードマンって魔族にならないのだろうか?


そんな疑問を考えながら列に並んで入国する。


無事に入国することが出来たのだが、入った瞬間に目を疑った。


遠くを見渡すと絶景が広がっているのだ。


例えるならば、某遊園地を国の大きさに広げた感じだろうか…。


流石に俺もテンションが上がり、目を輝かせながら走り回った。


走っても走っても種族ごとに住み分けられた国は途中で家の作りや構造が違い、見るだけでも飽きない。


途中に川や瀧、森などもあり全てが共存している。


森の魔物はどうしているのだろうか?


あ、だから魔族もいるのかな?


そんなことを思いながら見て周るが、当たり前だが一日では全然時間が足りない。


そこで今日は猫人族の集落の宿で泊まることにした。


「いらっしゃいニャ」


「どうも、一泊お願いします」


もちろん冒険者ギルドに行ってこちらのお金をおろしてきている。


冒険者ギルドでは職員に驚かれたが、口に人差し指を当てて静かにしてもらった。


「夕食はどうするニャ?」


「お願いします」


可愛い猫の店員さんは返事をした後、最後こちらを向いて驚いていた。


「あ、あのー、もしかして幻獣ミーア様ですかニャ?」


幻獣と言う言葉でキュイを指していることが分かる。


「そうなのかな?懐かれて一緒に居るので、私も最近知ったばかりなので」


「よかったら長老に報告してもいいですかニャ?」


「別にいいけど料理だけ先に用意してくれると嬉しいな」


「はい、すぐにニャ」


確かにすぐに料理がでてきたのだが、これは俗に言う猫まんまなのでは?と思ってしまう。


まあ、鰹節の風味と汁ご飯の味がマッチして美味しいのだが…。


てか、この大陸は普通に米があるんだな。


そんなことを考えていたらネコ族の老人が凄い速さでこちらに来た。


「おー、これはまさしくミーア様。神々しい」


何故かキュイはソッポを向いている。


「み、ミーア様?」


ご飯中なので俺の隣りにいるキュイに話しかけているのだが、キュイは返事をしない。


テテもどうしたのという顔をしている。


「あ、あのー、もしかして怒っているのでしょうか?」


俺に質問が来たので返事をする。


「分かりません。ただ、違う名前が呼ばれているので気付いていないのかも?」


「お名前をお伺いしても宜しいですかな?」


「キュイと言います。ちなみにこちらの子はテテです」


「キュイ様ですね、承知しました」


やっとキュイは長老の方に顔を向けた。


「おー、ありがたやありがたや」


長老は手を拝みながら何かを言っている。


「ちなみに猫人族にとって幻獣ミーアとはどういう存在なのですか?」


「幸運をもたらす幻獣様ですな」


なるほど。


「もう一つ質問が。語尾にニャをつける方とつけない方の違いは?」


「育ちや環境ですな。私などは長老会議に出席するので、威厳などもも踏まえてつけないようにしています。代わりに若者はニャをつける人が多いですな」


「なるほど、有り難うございます」


「よろしければ私の家に招待致しますが?」


「いえ、今日は宿をとったのでこのままで大丈夫です」


「そうですか、明日以降泊まる際はお声掛け下さい。後、内の戦士に護衛と案内役をつけても宜しいでしょうか?」


「国の中なのに護衛が必要なの?」


「もちろん森には魔物が湧きますし、他の種族ともどうしてもいざこざがありますので」


「まあ、テテとキュイが懐く者がいればいいですよ」


こうしてテテとキュイは長老についていった。


えっ、俺はって?


もちろん宿屋でダラダラする予定だ。


俺はダラダラしながら今後のことを考える。


この大陸の位置関係次第では、また1年間転移を待たないといけないからだ。


他の大陸の情報はなかなか集まらない。


そもそも上級貴族や王家などの権力者などしか把握してないことが多い。


もちろん冒険者ギルド本部の上層部も知っていたが、気密情報と言うことで教えてもらえなかった。


ある一定の条件をクリアすると教えてもらえると言っていたが…、今度もう一度聞いてみるか。


そうこうしているとテテとキュイが1人の猫人族を連れてきた。


「君が護衛?」


「は、はいですニャ。よ、宜しくお願いしますニャ」


「緊張しないで。テテやキュイが選んだのなら間違いない」


「そ、そうは言っても私は戦士でもないですし、強くもないニャ」


「そうなの?君のスキルを見てもいいかな?」


「は、はいニャ」


こうして俺は目の前のシャムと言う名のスキルを見た。


へぇー、これはこれで面白いな。


シャムは《可視化》《猫パンチ》のスキルをもっていた。


何を可視化できるのか俺は楽しみにしながら聞くのであった。






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