第116話 勇者?

半年後。


無事にこの島の全員の流行り病を治し終わった。


気付けば3つの惑星が重なるタイミングまで後すこしとなる時期だと聞いた。


一年の周期で転移すると思っていたのだが、邪龍の封印が弱まっている時のみ聖魔法の魔力に応じて転移する仕組みにもなっているらしく、今回は特例だと本を読んで解った。


おかげですこし早めに次の場所に転移できるので助かった。


ちなみにユニスの背中に乗って空から他の大陸にいけないか試したのだが、近くには島はなかった。さらには途中から天候が変わり空の魔物の大群が生息する場所などがあり無理はせずに諦めたのだ。


さらにはこの半年間で島を覆う結界の外の鬼を倒すことでかなりのレベルが上がったと思われる。


鬼は通常の鬼よりも凶悪で単純に強い。


俺が単純に上段から剣を振るうと真横に躱し反撃するほどだ。


上位個体になるほどスピードも速く力も強い。


セツナから剣の稽古をしていなければ負けていただろう。


魔法を含めれば余裕があるので、訓練としては丁度いい。


あ、そうそう、魔法で言えば結界が大変便利である。


無詠唱で結界を展開することで、相手が体制を崩してくれるので楽に倒すことができる。


さらには上空の足場として結界を展開できるようになり戦闘の幅が広がった。


こうして残りの期間を過ごし、気付けばお別れの時が来た。


なんだかんだ巫女が一番寂しがってくれたことが嬉しかった。


別れを済まし皆に感謝を言われながら俺は転移陣に乗る。


その瞬間眩い光が辺り一面を覆い…。




目を開けると祭壇の周りに多くの人が祝詞を唱えていた。


うん、絶対に違う場所だよね。


俺が現れた瞬間、歓声と共に凄い騒がしくなった。


そして、1人の姫と思われる人物が話しかけてきた。


「異界の勇者様、この度は召喚にお応えいただき有り難うございます」


勇者?なんか嫌な予感がする。


取り敢えずとぼけた顔をしながら聞いて見る。


「ゆ、勇者とはどう言うことでしょうか?」


「困惑していると思いますので、取り敢えず王宮にて説明させていただきますね」


こうして地下の祭壇から王宮への応接間に移動してきた。


応接間では姫様と護衛騎士とメイドのみである。


メイドは温かい紅茶とケーキを用意してくれた。


俺は遠慮なくいただきながら話を聞く。


俺が紅茶やケーキを食べる姿を見て姫様の口元が緩んだのが一瞬だが見えた。


「それでは勇者様、説明に入らせていただきますね」


「宜しくお願いします」


「まずはこのペンダントを見ていただいても宜しいでしょうか」


そう言われ、俺は赤い宝石をあしらったペンダントを見た。


その瞬間に姫は何かの紙を取り出し、俺にこう言った。


「汝は我セイナ・ロードスターを人生を懸けて守り、与えられた使命を実行することを誓いますか?」


説明は何処にいった?


これは絶対に契約魔法だろう。


と言うことは一連の流れは俺を魅了する工程だったのかな。


残念、俺には状態異常無効があるのだよ。


召喚させておいて何もしらない者に罠に嵌めるなんていい度胸だ。


実際は召喚されずにタイミングよく俺が転移してきただけだと思うけど。


まあ、こんな国がどうなっても俺には関係ない、おさらばと行こう。


こうして俺は返事もせずに窓をたたき割ってから空へとジャンプした。


「えっ、どうして?もしかして魅惑にかからなかったの?急いで捕まえるのよ」


セイナ姫の声が王城に響き渡る。


そんな中俺は黒のマントを纏い、結界を張って空の散歩を楽しんでいる所だ。


月夜にまみれながら、王城から繁華街の灯りの方へと向かって行く。


さてさて情報を集めないとな。



こうして王城から逃げ出した俺は宿に泊まろうと…。


あっ、この国の紙幣って一緒かな?


大陸は違っても冒険者ギルドはあるはず…、あるよね?


ただ、冒険者ギルド経由から召喚者を特定されないかが心配だ。


これらのことを考え、今日は裏路地で一晩過ごすことにした。


人がまったくこない場所を探し、ユニスに実寸大のサイズになってもらってからフカフカの毛皮に包まれながら眠った。



翌日。


街を詮索しているとやたらと兵士達が見回りをしている。


嫌な予感しかしないので、この大陸の情報を集めてから早く違う国に行くことにする。


こうして3日間かけて情報を集めた。


この国は姫の名前と同じロードスターと言う国で、割と豊な国だそうだ。


ただ、権力と実力者が好き勝手しているそうで、領土を拡大するために隣国に戦争を仕掛けようとしているそうだ。


俺は危うく戦争の道具にされそうになっていた。


さらには人族主義でそれ以外は見下し、何かと奴隷扱いするのだとか。


逆に隣国は各種族が集う共和国だ。


なので俺は隣国に行くことにした。


ちなみに紙幣は違っていたので使えない。


ただ、冒険者ギルドは同じだそうで大陸が違っても冒険者カードは使えるそうだ。


大陸間で冒険者カードの色が違うらしく、職員なら気付かれる恐れがあるため隣国に急いで向かうことにした。


こうして夜中に王都を空から抜け出し、離れた場所に来た瞬間にユニスに乗って隣国に向かった。










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