第114話 寵愛

翌日、各村で宴が始まった。


島国とは言え、流石に一日で集合できる場所ではない村も居あるので各村々で宴が開催される。


遠い村には大賢者が置いていった伝言魔道具があるので大丈夫だそうだ。


日本で言うとFAXみたいな物である。


この大賢者だけは次元が違うと思っているのでもう驚きはしない。



俺は一段高い場所に座らされ、次々と料理が運ばれてくる。


この島では邪龍と聖剣の恩恵のおかげで島の食糧だけは充実しているそうだ。


なので戦士や狩人が居れば食うには困らないらしい。


それを聞いたので俺は遠慮なく食事やお酒を楽しむ。


ビールなどはないが果実酒が豊富なので俺的には有り難い。


食事やお酒を楽しんでいると村の人々が感謝を伝えにお酒を注ぎにきてくれる。


謙遜するのも面倒なので、感謝を受け取り酒を酌み交わす。


テテやユニス達は食事を楽しみながら子供達と遊んでいる。


その姿に癒されていると島特有の踊りが始まり、歌や楽器の演奏を楽しむ。


やはり人々が楽しんでワイワイするお祭りや宴は楽しい。


さらには感謝もされているのだ、気分が一段と増すのも人の性である。


こうして気持ちが高ぶっている時に巫女と村長が俺の前に来て土下座をしだした。


「い、いきなりどうしたんですか?」


「宴の最中に是が非でもお願いしたいことがありまして…」


「私で協力できることならしますので顔を上げて下さい」


お酒が入っているとは言え、この時に軽はずみな返事をしたことを後で後悔する。


「本当ですか?」


巫女と村長の顔が今までにないほど喜んでいる。


「それで何を協力したらいいのですか?」


「はい、数人の女性に寵愛をいただければ…」


「えっ?」


「救世主様がいつかいなくなるのは承知しております。なので子孫だけでもお願いします」


「本当にお願いします」


巫女は切羽詰まった表情で再度お願いしてきた。


「何か理由でもあるのですか?」


俺の質問に巫女がゆっくりと答えだした。


なんでも、大賢者様は頑なに寵愛を断ったそうだ。


そりゃー、男好きだからしょうがないとも思う。


ただ、断られたことで優秀な遺伝子を授かれなかったとのことで、その代の巫女は島全体から罵声を浴びせられたそうだ。


さらには好きな男性と一緒に居る権利もないとして、それ以降は聖魔法やスキルが優秀な男性と結婚するのが決まりとなったそうだ。


あー、この島も一夫多妻制だから、大賢者より昔の巫女は優秀な者の子供を産むのとは別に好きな人とも結婚出来ていたのか。


この島の巫女の家系は3家系あり、それをずっと継承しているそうだ。


その中で一番能力の高い者が当代の巫女となり島の厄さいから守る役目を司る。


なので、公平に3人に寵愛を授けて欲しいと言われた。


「あのー、聖魔法やスキルが優秀な男性と結婚しているなら今までと同じでいいのでは?」


「何を言っているのですか、今回も優秀な遺伝子を逃したら私達は罵倒の嵐に合うのですよ。一生島から出られない私達は一生魅力のない女と言うレッテルを貼られて後世にまでバカにされろと?」


「その風習自体を変えられないのですか?私にも婚約者がいますので」


「もちろん抱いて下さるだけでいいので」


確かに一生罵倒されるのは可哀想だとは思うが…、やはり風習を変えるのが一番なのではないだろうか?


「ほら、風習を変えれば好きな人と結ばれることも出来ますし…ね?」


「この島で巫女の家系で産まれた後は、全てを村のために捧げるように教育されます。その代わりに巫女は皆から敬われ親切にされ他の人達よりも美味しい食事を食べれるようになるのです。それがあるから巫女は決められた結婚でも我慢できるのです…分かりますか?」


うん、俺には全然分からない。


「分かりますかと言われても?」


「それが救世主様に寵愛をいただけないとなれば罵倒の嵐で敬られることもなく、さらには普通の食事で過ごしていかないといけないのですよ」


うん、分かった。


こいつは今の環境のままがいいんだな。


村のためとかではなく、自身の人生のために俺を使おうって言うならば話は早い。


俺も男だ、この女に罪悪感はない。サラサ達には申し訳ないが一夜限りの関係を築いてやるぜ。


まあこの言い方だと俺は男としては最低だな。


ちなみに一夫多妻制の国での浮気ってどんな基準なのだろうか?


権力を持つ者は愛人まで許されている世界で、巫女を守るためとは言え抱くとなるとどう言う扱いになるのだろう?


帰ったら怒られる覚悟で正直に話そう。


「巫女達の今後の人生を考えて協力はします。しますが、私にも婚約者が居るので結婚は出来ないのでそこだけは了承して下さい」


巫女は「よしっ」と言いながらガッツポーズをしている。


舌打ちの件と言い、この巫女はよほど今の生活を壊されたくないのだろう。


巫女のイメージが一気に崩れた感じである。


まあ、ことの発端は大賢者の男好きが原因なので、昔の巫女さんは可哀想だったとだけ言っておこう。


「あ、あのー、よければ私にも寵愛をいただけないでしょうか?」


「貴女は?」


「私の名前はヘンリルと申します」


「あ、名前ではなく、何故寵愛が必要なのですか?」


「優秀な遺伝子を欲しがるのは女の性。それではいけませんか?」


「ちょっと待てーー。お前には俺がいるだろうが」


他の男性が慌てて駆けつけてきた。


「流石に彼氏持ちはちょっと…」


「そんなこと言わずに…、先っちょだけでいいので。ほら、巫女様達に子供ができない場合もありますし」


こんな場所で、逆に女性から言われるとは…。


「仮にそうなったとしても俺が種なしだったと言えば、他の住民もしょうがないと思うでしょう。なので、貴女はそこの彼と頑張って」


こうして俺は3人の女性と………。




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