第113話 救世主

最近は俺の頭の上で寝てばかりいるユニスを起こす。


「ユニス、あの剣の上に乗ってきて」


「うん、分かった」


ユニスが精霊剣に触れると一瞬だが剣が光り輝いた。


ユニスに反応することをみると精霊剣で間違いなさそうだ。


「ユニス、何か変わったことはあるか?」


ユニスは首を傾けている。


俺は精霊剣を台座から引き抜く。


精霊剣は簡単な力で引き抜くことができ青白い光を灯している。


これはユニスが水魔法の精霊だからかな?


秘宝と言うこともあって勿体ない気はするが、聖剣の修復のために使わせてもらおう。


「カグヤさん、これから何が起こるか分からないので非難しておいて下さい」


「別に構いません。邪龍が復活すればどの道この島はお終いなので」


しょうがない、カグヤさんに背中を向けてスキル《まぜる》を使おう。


こうして俺は聖剣と精霊剣をスキル《まぜる》にて一つにした。


まぜた瞬間に天まで届きそうな眩い光が辺り一面を包んだ。


「眩しい」


「な、なんて光なの」


光りが収まると聖剣は一回り大きくなったように見える。


薄っすらとひび割れていた箇所は無くなり聖剣は元通りになっている。


むしろ強化されているようにも見える。


俺はスキルが発動したことに安心して剣から手を離す。


この時俺は予想もしない出来事が二つも起こっていた。



一つ目は聖剣と精霊剣を一つにした瞬間スキル《結界》を覚えていた。


そして、一番驚いたのはユニスがユニコーンの実寸大の大きさになっていた。



「ユニス?何が起こった?」


「分かんない。ただ力が漲ってくるよ」


精霊剣とユニスが繋がり、精霊剣と聖剣が繋がったことでユニスが成長した?


大きくなったユニスを触って見た。。


「うわぁー、ふわふわだーーー」


テテとキュイもユニスの上で飛び跳ねている。


その姿が可愛すぎて、ずっと見ているだけでも楽しい。


ユニスに元の大きさには戻れないの?と聞いてみたら、なんと戻れるみたいだ。



俺達がキャッキャしている後ろでカグヤは茫然としている。


「あ、あのー、状況を説明していただけると…」


「あー、ごめんごめん。簡単に言うと結界の修復に成功したと思う」


「えっ?」


「取り敢えず確認してきてくれると嬉しい。俺達も戻るから」


洞窟をでた瞬間カグヤは急いで結界の様子を見にいった。


ちなみに結界はこの島の7割を覆っているそうだ。


残りの3割の場所に鬼と妖が島を囲っているらしい。


島と島の間には海があるのだが、一日に一度潮が引いた時に島を繋ぐ道が出現する。


こうして鬼が渡ってくる度に鬼が結界を囲ってくるらしく、今では結界の綻びを戦士達がずっと守っているのだが、流行り病と重なったことで今にも突破されそうと聞いている。


これで結界が修復したことで戦士達も一安心だろう。



そのころ島の戦士達は…。


「おい、こっちは大丈夫だ、向こうの綻びが危ない」


「アホな鬼と言えども、流石に周りの鬼共が結界の綻びに気付いているから向こうはヤバイ」


「助けてくれ、流石に体力がもたない。他の戦士も傷ついてこちらの結界にはもう人がいない」


その言葉が聞こえた瞬間にその戦士は鬼に殴られて吹き飛ばされた。


「急げ、鬼が結界の中に入ってきたぞ」


「もう無理だ、戦士が足りなさすぎる」


「神様はこの島を見捨てたの?」


「お願い助けて」


「村には家族が…」


「誰か侵入口を塞いで」


叫び声が響くなか非常にも鬼はどんどん侵入していく。


「誰でもいいからこの島を救ってーーーーー」


叫び声だけが木霊する。


さらに鬼が続々と島の結界の中に入ってきた瞬間…、叫び声に反応したかのように眩い光が天まで貫いた。


眩い光りの後は、後続の鬼達は結界にぶつかり結界の中に侵入することが出来ない。


「な、何が起こった?」


「そんなことはどうでもいいわ。早く侵入した鬼を倒して」


「侵入した鬼だけなら今の人数でもどうにかなるわ」


「そうだ、早く鬼を追え」


戦士達は訳がわからず鬼を追いかけ殲滅していく。


倒し終わった瞬間戦士達は地面に寝そべり空を見る。


「俺達は助かったのか?」


1人の戦士が結界の方を再度確認する。


「だい…じょうぶそうね」


「神は見捨ててなかったのね」


「神様有り難う」


戦士は疲れ果てしばらく寝そべって休んでいると巫女のカグラが走ってきた。


「け、結界はどうなった?」


「カグヤ様、結界は元に戻りました」


「そ、そう。修復したのね…良かった」


「もしかしてカグヤ様が?」


「いいえ、違います。救世主様が…」


「救世主?誰?」


「あー、戦士の方達はずっとここで鬼の討伐をしていただいていたので知らないのですね?」


「もうここに寝床を構えて1週間以上になるわね」


「そうでしたね…。救世主様はこの島に突如やってきて流行り病を治して下さいました。さらにはその合い間に結界を調べてすぐさま結界を修復されたのです」


「私達は救世主様に救っていただいたのね」


「マジで助かった」


「もう無理かと思った」


「大賢者様のような方がいるのね」


「そうね。お伽話じゃなくて実際に島を救ってくれた救世主の方に会えるのね」


「はぁ、今一番生きてるって実感してる」


「本当ね、これでしばらくはゆっくりできるわね」


結界が修復したことで戦士達はそれぞれの村に帰って行った。


その夜には各村に情報がゆき渡り、急遽明日に島全体でのお祭りを開催することとなった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る