第112話 聖剣と精霊剣
大賢者でも邪龍を倒せない理由も書いてあった。
邪龍の弱点は聖魔法なのだが、大賢者は4大魔法に特化していたため聖魔法を得意としていなかった。
また、龍種も冒険者と同じく種類によってランクがあり、喋れるほどの知能を持った古代龍や神に近い存在の神龍が冒険者ランクで言うSランクとSSランクとなる。
この邪龍に関してもSランクほどの強さがあると大賢者の見識が捉えている。
まあ、人間の強さにも大幅な振れ幅があることを考えれば納得の内容である。
ワイバーンや飛べない竜の代表格の地竜が冒険者のなりたてのランクとも書いてあり、そのワイバーンや地竜が冒険者ギルドではBランクとAランクの魔物と認定されていることを考えるといかに邪龍がヤバイ存在かが分かる。
それを踏まえた上で封印が無理そうなら倒してねと書いている大賢者も他人事である。
一発殴ってやりたいところではあるが、この本にある知識には感謝しているのでグッと堪える。
この本のおかげで現在の状況も把握できたので当代の巫女の所に行く。
俺が突然訪れたことに巫女のイツキ・カグヤは驚いている。
この名前を聞いた時、巫女の名前だけ日本人のような名前なのは理由があるのだろうか?
大賢者が転生者であるように転生者の子孫とか?
「カグヤさん、急にスミマセン」
「村長ではなく私の所に来られたのでビックリしました」
「あまりにカグヤさんが綺麗なのでつい…」
「そ、そんな…。嬉しいですが、巫女は次の巫女候補を育てるまでは恋愛は出来ないのです」
いきなり邪龍の話をするよりはと思って、冗談で言ったのだが裏目にでてしまった。
まあ、カグヤさんはキツネの獣人族で茶色の綺麗な髪と金色の目が特徴的でもの凄く綺麗な方である。
そんな綺麗なカグヤさんにとっては、毎回男性に口説かれている可能性もあるので冗談と思うよりもまたかと思っているのかもしれない。
「大変な職業ですね。それでは本題なのですが、邪龍の封印されている場所を教えていただけませんか?」
カグヤさんは驚いている。
「えっ、口説きに来たのではないのですか?」
そっちで驚いているの?
「綺麗だと思っているのは本当ですが、残念ながら口説きに来たわけでは…」
「ッチ」
えっ、今舌打ちした?
気のせいだよね?気のせいだと誰か言って。
「結界の話は村長ともしていましたが、大賢者の本では巫女が封印の場所を知っていると書いていましたので」
またもやカグヤは驚いている。
「ふ、封印…。村長でも知らない内容なのに、本当に大賢者様の本が読めたのですね?」
「はい。私が知っている言葉で書かれていましたので」
「そうですか、ここからは極秘でお願いします。ではついて来て下さい」
こうしてカグヤに連れられて俺が転移してきた洞窟に来た。
「もしかしてここに?」
「はい。それでは灯りを消します」
そう言うとカグヤは隠しボタンを押して灯りを消して真っ暗にした。
そして、真っ暗の中舞を踊りだした。
暗くて良く見えないのだが、舞っていることだけは分かる。
カグヤの舞が終わると魔法陣が現れ、その場所から隠し階段が現れた。
「では、ついて来て下さい」
地下への長い階段を下るともの凄い広い空間が一つあるだけだった。
その広すぎる空間の中央に一本の剣が刺されていた。
良く見ると奥にも一本の剣が刺されている。
「中央の台座に刺されている剣が聖剣です」
「近くで見てもいいですか?」
「はい、大丈夫です」
俺は聖剣をまじまじと見る。
聖剣の剣圧が凄く、この剣が凄いことだけは分かる。
そして、光り輝く剣を良く見ていると薄っすらと亀裂が入っているのが見える。
「もしかして封印が綻びかけているのはこの亀裂が原因ですか?」
「恐らくは…。この亀裂が現れるまでは結界に問題がありませんでしたので」
「そうですか。邪龍のせいで劣化したのでしか?」
「劣化と言うよりは長年の封印による蓄積によるダメージが現れたと考えています」
「治す方法は?」
「私共では何も…。大賢者様の本には何か書いていなかったですか?」
カグヤはもの凄い勢いで聞いてきた。
「新しい聖剣で封印するか、それが無理なら邪龍を討伐してねと書かれてたのみですね」
「そ、そんな…」
カグヤは絶望している。
「ちなみに奥にある剣は何ですか?」
「あー、あれは精霊剣です」
カグヤは絶望しているからか、返事が雑である。
「精霊剣は何故ここにあるのですか?」
「邪龍の封印が解かれた時に何かしら役に立つかもしれないから秘宝・精霊剣を置いておくとだけ」
「この剣を活用できないのですか?」
「精霊と契約し者、または精霊に認められた者でしか精霊剣は使えません。ましてや台座から引き抜くこともできないのです」
「そうなんですね。ちなみに精霊剣の効果は?」
「精霊様にも依りますが、秘宝と呼ばれるだけあってもの凄い剣とだけ言われています」
その言葉を聞いて俺は瞬時に考える。
秘宝と呼ばれるだけの剣であればもしかして耐えられるかも…。
こうして俺は邪龍の再封印を決意したのであった。
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