第109話 新しい場所

現在俺は真っ暗な場所にいる。


叫び声の後からは、クランメンバーの声がまったくしない。


「キュイ?テテ?」


「キュイキュイ」


「キャンキャン」


うん、キュイとテテは一緒にいるな。


ペルルはミナミと一緒に居るのでここにはいない。


「エターナ?」


エターナの返事を待つが一切返事はない。


ライトの魔法を唱え周囲を確認する。


その後一歩目を踏み出した瞬間に壁際の光が灯る。


ここは…。


洞窟の中に同じ祭壇があることから場所は変わってない?


メンバーが一斉に消えた?


それとも…、魔法陣が展開されたことも踏まえると瓜二つの場所に移動した?


この二つの推測のどちらかの可能性が高いと踏んでいる。


祭壇を調べても何も分からないため、しょうがなく洞窟をでることにした。


俺は洞窟をでたのだが、この景色に覚えはない。


洞窟を出ると林の奥に遠目だが光が見える。


現在は夜で空には綺麗な星と月が見える。


光りの方へ向かうと次第に全貌が見えてきた。


柵で外壁を囲ってあることから村であることが分かる。


付近まで行くと村の裏手だろう場所に到着した。


そして、村人だろう人と目が合った。


「ギャー、でたー」


俺を見た瞬間門番と思われる者は村の中へ逃げていった。


えっ、門番の意味ある?と疑問になるほどだ。


俺は門番が逃げていった方向に歩いていくと、一段高い場所に紙垂で囲われたお祈りに使うような場所に巫女が祈りを捧げていた。


儀式の最中だからなのか門番の男が騒ぎ立てる様子もない。


徐々に近くに行くと今度は巫女さんと目があった。


その瞬間巫女は神に感謝の言葉を発した。


「神よ有り難うございます。


皆様、神は私達を見捨ててはいませんでした」


うん、何か嫌な予感がする。


案の定、巫女さんと村長が俺の所に走ってやってきた。


「救世主様、どうかこの村を救って下さい」


どうなっているのか分からないので取り敢えず聞いてみる。


「どうして俺が救世主だと思われたのですか?」


「この村の裏側には祠に繋がる林と崖しかありません。そして、絶望する危機に私共は祈りを捧げるしかなかった所に裏手から貴方様が訪れてきましたので…」


なるほど、都合良く俺が現れたことで神の遣いとでも思ったのだろう。


「残念ながら俺は救世主ではありません」


「そ、そんな…、でも古の伝達にある幻獣様をお連れしているのは何故でしょうか?」


巫女さんと村長の目線の先にはキュイがいる。


えっ、キュイって幻獣だったの?


牧場で出会ったから何も知らないのだけど…。


「そうなんですね。この子は偶然出会ってから懐かれたので一緒に旅をしています。このままでは話が進みませんので、良かったらこの村の状況を教えてもらえませんか?もしかしたら力になれることもあるかもしれませんので」


「わ、分かりました」


こうして俺は村長宅で事情を聞いた。


ここは海に囲まれた島国が二つある。


一つは各集落があり、人族や獣人族など多種多様な種族が存在している今いる島だ。


もう一つは強靭な鬼う妖が住み着いている島だ。


今までは賢者により結界が張られていたことで妖や鬼が来ることはなかったが、現在は結界を張っていた神器が劣化により弱まり、一部の場所に穴が空いている状況だとか…。


さらにはこのタイミングで流行り病が発生し、多くの死者がでているそうだ。


賢者曰く、本当の危機が迫りくる時、時空を越えて救世主が来るだろうと言われていたため、このタイミングで来た俺を救世主だと勘違いしたのだとか。


鬼に対抗しようにも流行り病のせいで戦死達の人数が足りず、このままいけば破滅しかないとのこと。


ちなみに賢者が訪れたのは500年も前の話で、それ以降賢者はこの村を訪れていないそうだ。


話を聞き終わった後の感想としては、そんなこと言われても弱ったな~と言う気持ちだ。


流行り病はもしかしたら魔法で何とかなるかもしれないが…、結界は専門外だからな。


取り敢えずは流行り病を見に行く。


これ以上病が広がらないように別の洞窟に布団が大量に敷かれ、多くの人が横たわっている。


スキルで病の耐性や病気にかかりにくい者が食事などの世話をしているらしい。


まあ俺も状態異常無効のスキルを持っているので、中に入って様子を見る。


「お兄ちゃん、この中に入ってきてはダメだよ。私の病気が移っちゃう」


こんな小さな子供が相手を気遣うなんて…泣けてくる。


自分が苦しいはずなのに、なんて強い子なんだ。


何がなんでも治すしかないな。


魔法はイメージが大切だ。だからこそ、病を知れば知るほど治る可能性が高い。


パーフェクトヒールといえども、何もない知識では体の一部を再現出来ないのと一緒である。


見て得た情報で手がない、足がないと分かるからこそ治せることであって、一切情報がなければ治すことは出来ない。


なので比較的軽い症状の者に話を聞いていく。


皆原因は分からないそうだ。


原因が分からないってことは傷口からではなく、食べ物や飲み物から広がった菌ではないかと考えている。


原因がすこしでも分かれば、後はパーフェクトヒールに任せるのみだ。


菌を取り除くイメージでパーフェクトヒールを唱える。


子供の体は光り輝いた。


「気分はどうだい?」


「うーん、何となく痛いのが無くなったよ」


取り敢えず症状は良くなってる見たいだ。










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