第108話 祭壇

俺はその後も買い物や食べ歩きを楽しんで宿屋に帰った。


宿屋のロビーではセツナ達が何かを話している。


「そんなに真剣な顔してどうした?」


「ミロード様か…。魔物の活性化の理由どころか森の中腹から先に進めなくてな」


「へぇー、何か理由があるの?」


「わからん。森の中の道を進む度に戻っている感じがする。最終的に道が無くなって帰るのだが…」


「そうなんです。途中印をつけて確認もしてるのですが…訳が分からなくて」


「まあ、今まで誰も解き明かされなかった事象は簡単には解けないだろうね」


「本当に謎だ。この街の冒険者達もやっきになって頑張っているが進展がないから互角だから問題がないが…」


「そうなんだ。別に毒使いのSランク冒険者が攻略してくれても問題はないんだけど、話を聞いて疑問に思ったんだけど、森の中に道がすっとある方が不自然だよね」


「「あっ」」


全員が気付かなかったことにビックリだよ。


「もしかして森の道自体が罠だったのか?」


「さぁー、見てもないから分からないけど…、興味がでたから明日は一緒に行くよ」


こうして明日は俺も参加することとした。



翌日。


皆と森の入り口に来たのだが、綺麗な道がゆるやかな曲線を描きながら奥に進んでいる。


明らかにこの道の綺麗さはおかしい。


皆、ダンジョンなどの思考から麻痺しているのかもしれない。


俺はナイトに訪ねた。


「昔の本に曲線をずっと進むと最終的に円軌道になって戻る話がなかった?」


「あー、戦の戦略であったかもですね。真っ直ぐではなくこのゆるやかな曲線も罠の一つと言うことか?」


「罠と言うよりも奥に行かせない一手だろうね。森にこの綺麗な道はありえない」


「じゃあ、どうする?」


「空からは偵察させた?」


「もちろん。途中から霧で前が見えないと言っていました」


「なるほど。じゃあ、このゆるらかな曲線の逆を進んで行こうか」


こうして俺達は道のない森を慎重に進みだした。


慎重に進むには訳がある。


足元はぬかるみ、木の根などの段差で不安定な場所を歩く。


さらには四方八方から魔物が襲ってくる。


擬態した木や花、そして巨大なカマキリなど多種多様の魔物が次から次へと。


普通の森では考えられないほどの高ランクの魔物が混じって襲ってくるのだ。


慣れない森で魔物と退治しながら進むため疲弊していく。


どのくらい歩いただろうか…気付けば太陽が真上にある。


「一旦戻りますか?」


「この規模なら何日もかけないとだろうが、夜の森も見たいからこのまま進もう」


「承知しました」


さらに2時間くらい進むと草木が壁のように茂っている場所が見えた。


「この方角は間違いではなかったのかもな?よし、ここは新しい武器の出番だな」


俺は《衝撃波》を3mはあろう草むらに放った。


「マジか」


「くきっと折れただけで草が戻ってきましたね」


「しょうがない燃やそうか?」


「えっ、ここは森ですよ」


俺は《炎剣術》を使用しながら《衝撃波》を放った。


周りからは無茶苦茶だと言われているのだが…。


「どういう原理だ…」


「えっ、どういうこと?」


皆の頭にハテナが浮かぶ。


草は焼き切れたのだが、衝撃波で切れた所のみ草木は跡形もなく消えてなくなり道となったのだ。


「これは凄いな。全てにおいてこの規模で仕掛けた者がいるとしたら次元が違う」


「ミロード様でも無理ですか?」


「無理だね。はっきりいって足元にも及ばないだろうね」


俺の言葉に全員が絶句する。


しばらく草を焼き切っていると草木は無くなり新しい道が現れた。


「この道は罠ですか?」


「どうだろうね、ここまできた者に同じ手を使うとも思えないし、この道をこのまま進んでみようか」


俺達はしばらく道を進んで行くと立て札が建てられていた。


内容はこうだ。

・この先は何百の道が迷路となり立ちはだかる。

・1人につきチャンスは一度のみ


俺達はこの立て札を見て4つのチームに分けた。


流石にこれ以上少数にすると魔物の襲撃があった場合が恐いからだ。


俺のチームはエターナと精鋭8名だ。


残りの三チームが前方の迷路に向かったので俺も挑戦しようとしたのだが、急にキュイが迷路には向かわずに迷路の壁沿いを左周りに飛んで行く。


俺達は慌てて追う。


ひたすら追う。


今度は迷路の壁沿いも関係なくキュイはさらに左の森の中を飛んで行く。


キュイを呼んでも返事をしないので、見失わないようにさらに追う。


そしてしばらく進んだ先には反り立つ崖が前方一面に見え、その中心に洞窟のような穴があった。


キュイがその中を示すので、洞窟の中に入っていく。


一歩一歩慎重に入って行くと洞窟の中は火が灯され、一本道が奥まで続いている。


10分も歩くと広い祠のような場所に辿り着いた。


中央に祭壇があり怪しさMAXである。


クランメンバーの1人が念のため自分が祭壇に上って見ると言って祭壇に上がったのだが何も起きなかった。


俺は祭壇に仕掛けがないかキュイとテテを連れて確認のため上ったのだが、その瞬間に祭壇の地面に魔法陣が浮かび、その直後に辺り一面に眩い光が放たれた。


「ミロード様」


「ミロードさまーーーー」


俺はメンバーの叫び声を最後に…。


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