第106話 東のSランク冒険者
冒険者ギルドの沈黙に1人の男が割って入ってきた。
「おい、ジジィ。俺様がいるんだビビることはねぇだろう」
周りからは、Sランクのタンポイズンだと歓声が沸き起こる。
へぇー、初のSランク冒険者とのご対面かぁ~。
「そうは言うがな、こちらが王都にて頼んだ依頼だからのぉ」
「そんなのは俺達がこなしてやるぜ。たかだが聖魔法でSランクに上がった偽りの奴はいらねぇってことを証明してやろうじゃないか」
タンポイズンは周りを盛り上げていく。
「そうだそうだ」
「田舎者は帰れ」
俺は田舎者だったんだ。すこし笑いそうになった。
「依頼を受けなくてもいいのならば帰りますが?」
「まあ、待て。そうだのぉー、お主らのクランとソロモンの冒険者、どちらが今回の依頼を先に達成できるか勝負しないか?」
「別にいいですが、勝ち負けで何か変わるんですか?」
「今回の依頼の費用と別に勝った方には魔道具をつけよう。負けた場合は依頼費は当然なしだ」
依頼をしておいてなんて言い草だ。呆れて丁寧な言葉で話すのも無駄に思えた。
「こちらに来る往復の費用だけは負けた場合でも貰うがいいか?」
「もう負けたことの心配かの?」
「保全策だ。そんなことも分からないのか?」
「チッ、まあ、いいだろう」
このジジー、絶対に払う気がなかったな。
こうして依頼内容を聞いた上での勝負となった。
俺はダンダンと待ち合わせをしていた場所に向かった。
「どうだった?」
「ああ、ダンダンの言う通りにことが運んだぞ」
「そうか。じゃあ、後はのんびりしてようか」
「そうかじゃねぇよ。あいつらで依頼は達成できるのか?」
「いちよSランクやAランクもいるから大丈夫だろう。もしもの場合は漁夫の利を貰えばいい」
「まあ、雇い主がそう言うなら問題ない。これで依頼料が貰えるなんて楽でいいな」
「上からは冒険者と協力してとしか言われてないからな。費用は国持ちだから心配ないさ」
「じゃあ俺らは観光でもしているぞ」
「ああ。ただ念のため聞いておくが、負けて罵られてもしらないぞ」
「構わないさ。名声なんて興味がない」
「やはりミロードだけは想い通りには踊ってくれないな」
「本人を目の前にして言う言葉じゃないな」
「ほら、今回は依頼主だからな」
こうして俺はメンバーに今回の概要を話した。
話をしたのだが、何故かメンバーはやる気になっていた。
しばらくは自由でいいって言った言葉に対して、自由ってことはソロモンの森で自主訓練をしても問題ないですよねと言う始末。
まあ、成長することにこしたことはないのでOKをだしたが、無理はするなとだけ伝えておいた。
流石に情報だけは欲しいのでナナに頼んでソロモンの森の情報を集めてもらう。
こうしてメンバーはソロモンの森に向かい、気付けば俺とサラサとソンミンしか残っていなかった。
なんでセツナやエターナまで行ってるんだよ。
更には、サラサはソンミンと話がしたいことがあると言って二人で出かけていった。
えっ、まって、気付けば俺は1人になっていた。
久しぶりに1人になって新鮮な気分を味わいながら街を観光する。
久々にテテやキュイとのんびりとした時間を過ごす。
屋台でお肉を買って食べさせていると…。
子供達が寄ってきた。
子供と一緒に遊ぶ姿を見て……。
めっちゃ、かわいいーーーー。
テテ達も楽しそうでなによりだ。
そんな時間を過ごしていると、ギルドで雑草と呼ばれている男が目の前を通り過ぎようとした。
俺は声を掛けた。
「今日も薬草などを探しに行くんですか?」
雑草と呼ばれていたシシオウと言う名の男がこちらに来て挨拶をしてくれた。
「そうです。私にはこれしか取り柄がないので」
「そんなことないでしょう?何故、実力を隠しているのですか?」
シシオウはギョッとした目で見つめてきた。
「なんのことですか?」
「何か理由があるんですか?」
「………。」
「あ、別に気にしないで下さい。詮索するつもりはないので」
「貴方は大切な人を目の前で亡くしたことはありますか?」
「ありますよ」
「嘘…は言ってないみたいですね」
前世で俺は親の死を見ているので嘘は言っていない。
「それが何かありますか?」
「貴方は心が強いのですね?」
「そうかもしれませんね」
「一つお聞きしても宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「大切な人を亡くしてどうして何事も無かったように、そう平然としていられるのですか?」
「人はいつか死にます。早いか遅いかの違いでね」
「それだけですか?」
「亡くなった者が今の自分を見て誇れるように心がけていたらこうなりました」
「今の自分を見て…」
「貴方はその人に胸を張って今の自分を見せれますか?」
「そう言うことですか…」
「今を生きる貴方が大切に思う気持ちと死者の気持ちは違うのではないですかね?」
「………。」
「まあ、知らないですが…。人間なんて自分本位な生き物です。亡くなった人をそんなにいつまでも想える人は逆になかなかいないんじゃないですかね?」
「そう…なんですかね?」
「いや、知らないです」
すこしの沈黙が流れた。
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