第103話 クラン集結のその後
ドガンのその後。
俺は無事にクラン・フェニックスに加入することが出来た。
駆け出しとも言える立場だが、皆親切に指導してくれた。
このクランは元冒険者や孤児が多い。
なので個人の力量は天と地ほどの差がある。
俺はスキルに恵まれている分、指導のかいあってメキメキと頭角を現していった。
槍の間合いや二段突きや三段突きなどの基本を覚えながら日々楽しく過ごしている。
そんな矢先に憧れのセツナ様が稽古してくれることに…。
槍と剣では間合いの関係から槍の方が有利と一般的には言われているが…、俺は瞬殺された。
最近では元Bランクの冒険者との模擬戦でもいい勝負をしていただけに悔しい反面、やはり憧れの人の凄さが分かって嬉しかった。
お金は増えないが自身を成長させられるこの環境に感謝している。
そんな中、クランとしての依頼でゲーデ町に行くことになった。
この人数での夜営や隊列を教えてもらいながら町に向かったのだが、町に着いた時には海の魔物が溢れかえっていた。
すぐさま指示が飛び、俺は前衛部隊にて魔物の進行を食い止める。
魔法部隊の足場や一斉魔法の指示など現場は忙しなく動いている。
俺はこれがクランならではの戦い方かと感心しながら戦った。
後から聞いたが、こんな戦いかたが出来るのは指揮者がよほど優秀じゃないと無理だと言われた。
そうだよな、あの魔物の群れを死者を出さずに勝利するんだから…。
さらにはこのクラン代表者の魔法にもどきもを抜かされた。
七色に光る不死鳥は綺麗で目を奪われたと言っておこう。
この経験がまた一つ俺を成長させてくれるはずだ。
こうして勝利の宴を楽しんでいると町の人から感謝を沢山言われ、俺は凄く嬉しくも誇らしい気持ちでいっぱいだった。
それなのに幹部の連中は何故か落ち込んでいた。
自分達の不甲斐なさを反省しているようだ。
おいおい嘘だろう。こんな上出来な戦に反省するなんて、どんだけストイックなんだよ。
こんなことを考えていた俺の幼い時期もあった。
その後、殲滅軍に志願して護衛の任務の最中に盗賊と戦った時に気付かされた。
俺はこの面子なら10倍の盗賊でも余裕だと豪語していたからだ。
実際はこちらの精鋭メンバーに3倍の人数相手の盗賊団に防戦一方である。
盗賊の一人や二人なら俺でも瞬殺できると奢っていた俺は、蓋を開ければ盗賊二人からの攻撃を凌ぐのでやっとだった。
さらには途中闇ギルドの部隊により何人か死人がでたほどだ。
この時ほど俺は無力を感じさせられたことはなかった。
死人を出しながらも依頼は達成したのだが、その時に死者の意思はクランメンバーが命の灯として引き継ぐとミロードさんが言った言葉に俺は涙した。
俺は絶対強くなって先輩達の意志を引き継いで皆を守ると心に誓った。
そこからは自身の未熟さを懸命に補うためにも全力で精進している。
ただ、化け物揃いの先輩達も懸命に努力しているので差が縮まらないことはここだけの話である。
トリーのその後。
鳥族の私は無事にクランの面接を受けることが出来た。
面接官のミナミさんに事情を全て話した瞬間に採用と言われた。
私はあっけにとられながらも集団生活に勤しんだ。
奴隷のように働かせられるんじゃないかとビクビクしていたのに一切強要されることはなかった。
このクランは基本自身の意志でやりたいことをやるスタンスであった。
皆が目を輝かせて働いている中で私は逆に切ない想いを感じていた。
そんな矢先にナイトさんと言う幹部の方が話かけてくれた。
「このクランにはなれましたか?」
「は、はい」
「このクランはどうですか?」
「皆が自ら望んで励む姿を見ると凄いなと思います。ただ私は…」
「どうしたらいいのか迷っている顔ですね?」
「は、はい」
私は心の何処かで、情報部隊に上手く誘導させられるのだと思っていた。
「鳥族は空を飛べることで情報収集や情報伝達に優れているそうですね」
ほら、やっぱりきた。
「そうですね」
「貴女はやりたいことはないのですか?」
「これと言って…」
「そうですか…、ではよかったら魔法を覚えませんか?」
「えっ?」
「あ、もちろん無理強いはしませんよ」
「情報部隊の勧誘ではないのですか?」
「情報部隊はすでにありますし、スキル持ちが円滑に回しているので勧誘はしませんよ」
「何故魔法なのですか?」
「空を飛べると言うことは視野が広くなると言うことです。貴女は貴重な存在なので相談しに来た次第です」
「私は皆の役に立てるのでしょうか?」
「それは貴女次第です。何事も自信の意志で動かない限り意味はないですので」
思ってもみなかった言葉に私はやってみようと思った。
「やらせて下さい」
こうして私はナイトさんの指導の元、空での戦い方を教わった。
基本は影に隠れている者や状況が悪い場所に合図として魔法を放つのだ。
余裕があれば空からの援護射撃として魔法を放つ。
ただ、これが意外にも難しい。
空を飛ぶ、周りの状況を把握する、魔法を放つの三つの動作を行わないといけないからだ。
海の魔物の時は二方向の情勢を見ながら空から援護射撃をしていたのだが、援護射撃に夢中になって劣勢の場所の合図が疎かになってしまった。
死人はでなかったが、私がもっと早くに気付いて合図を送っていれば情勢は変わっていただろう。
さらにはミロードさんに魔法を放った者にも気付けずにいる始末である。
こんな私にナイトさんはご苦労様と労ってくれた。
更には、劣勢の場所が多くて大変だったでしょと庇ってくれた。
私は自身の未熟さを痛感し、この時に私はナイトさんのために頑張ると心に決めたのである。
ここだけの話、ナイトさんに恋心を抱いているのは内緒だよ。
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