第100話 勇者
その後は魔物の襲撃があるぐらいで闇ギルドが襲ってくることはなかった。
闇ギルドも流石に失敗するとは思ってなくて次の準備までは間に合わなかったのだろう。
こちらの護衛人数は25名まで減っているので、無事に王都まで護衛できて安心している。
辺境伯に依頼達成の印をもらったのだが、ここで追加の依頼を頼まれた。
今回の闇ギルドの一件で危機感を強くしたらしく、王都のにいる期間も護衛をして欲しいと言われた。
内容は辺境伯と婦人に一人ずつと娘達に一人ずつで計5人の護衛を希望された。
俺はどうしようか悩んだ。
闇ギルドと戦闘になるとこちらの被害も尋常ではないからだ。
俺が迷っていると辺境伯は出来れば辺境伯と次女だけでもいいからと再度頼まれた。
俺はその条件ならと護衛を継続することにした。
もちろん他の者にも王都の冒険者ギルドで護衛者を頼んで万全な状況にすることとクランで王都に来ているので滞在費を上乗せすることでOKをした。
流石に闇ギルドに対して魔法職のメンバーに護衛させるわけにもいかないので、護衛するメンバーは限られている。
こうして辺境伯と一緒に行動を共にすることとなった。
一名ずつで護衛依頼を受けたが実質は2名ずつで護衛することにしている。
さらにはナナ率いる影部隊が一名ずつ近くで監視する万全な体制をとっている。
俺達クランはまだまだ発展途上であって成長段階であるが故に人数を増やしているのだ。
多くのメンバーに護衛や対応などの勉強をしてもらうためだ。
護衛依頼は順調に進み、現在は王城で開かれる式典に参加している。
なんでも他国で勇者が現れたそうで、魔族や魔物の襲撃に対して専用の部隊を結成する式典だそうだ。
勇者が存在した後には必ず魔王が生まれるらしい。
それを踏まえて各国では急ぎで軍事強化するそうだ。
シャイン王国では各町や村からの兵の募集を始めるそうだ。
貴族の私兵からも最低1人は軍に派遣するように強制し軍事強化を図る。
この部隊の隊長は王都近衛兵団の副団長が務めるそうだが、俺には関係ないからどうでもいい。
ただ商業都市が今後どう動くかを考えないといけない。
情報を元に一つ一つ整理していくと点と点が線へと繋がっていった。
俺はまんまと商業都市の手の平で転がされていたようだ。
・新しい区画の新設
・費用投資
・クラン新設や諸々の支援
・各国からの孤児や人員が集まる環境
・etc…
流石は情報が早い商業都市として笑うしかない。
何処よりも勇者の存在の情報を知ったところに俺と言う格好の素材が現れたのだろう。
あまりに順調過ぎて、俺の存在や名前が売れた効果だと思っていたが勘違いだったようだ。
魔王や魔物が活発することを視野に入れて事前に動いていたのだろう。
治める者がやり手だと思うと今の状況では安心できるほどに頼もしい。
逆に商業都市がここまで動いている状況で、シャイン王国は今から動きだすことを考えれば心配である。
そんなことを考えているとラブイーナが話しかけてきた。
「今後どうなると思いますか?」
「漠然と聞かれても答えようがない」
「勇者の存在には驚きましたが、こうやってすぐに行動しているこの国なら大丈夫ですよね?」
「他の国はもっと早く動いている国もある。現状では遅いくらいだと思うよ」
「えっ?」
「今から兵を募集して形になるまでに早くても3ヶ月以上かかるだろう。さらにはそこから熟練した形に持っていくとなると…」
「えっ、この国は大丈夫ですよね?」
「俺に聞かれても困るんだが。どこの国が襲われるかやこれからの魔物の活性化もわからない状況では全ての国が運次第だ。その中で事前に準備できた国だけが運だけではなく魔王軍に対抗できるのかもな」
「そ、そんな…。でも状況次第では各国が協力しますよね?」
「してもらわないと困るがな。そればかりは各国の治める者に聞いてくれ。ただ、戦争が無くなることには期待したい。南部の方では未だに戦争していると聞いているからな」
「そうですよね」
「俺と話てないで、周りの貴族と話た方がいいぞ。ちらちらと視線を送っているぞ」
「あー、この容姿なので慣れております。それに聖魔法が使えるので子孫繁栄のために娶ろうとする殿方が多いので」
「まあ、俺には関係ないからいいが…」
「そんな冷たいことを言わないで下さい」
「俺に幻滅したのではないのか?」
「どうしてそれを?」
「一時期護衛が外れた期間があったからな、アホでも気付くさ」
「ごめんなさい。何も考えずにあの時は…。」
「別にあんたらに嫌われようが構わない」
「貴族を味方につけようとは考えないの?」
「味方?貴族の味方が増えれば敵も増えるだけだ」
「でも、これからは魔王の出現でみなが協力して…」
「全貴族が協力するのか?困った時だけ協力しろと投げかけるのではないのか?だから自身のことしか考えない貴族が多いから嫌いなんだ」
「そんなこと…」
ラブイーナはこれ以上言い返してはこなかった。
この会話を後ろで聞いていたソンミンも複雑そうな顔をしていた。
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