第99話 誓い
亡くなった者達の弔いを終え、護衛が再開し出発する前にクランメンバーを全員集めた。
「全員聞いてくれ。ここにいる者は誰かのために死んでもいいと思いながら殲滅軍に加入してくれたメンバーだ。本当に有り難う。
ただ、今回見てわかるようにいざ仲間が亡くなると抑えきれない感情がこみ上げてくる。
これは俺からのお願いなんだが、どうか死んだ者の意思を受け継いで欲しい。
勇気と意志を胸に仲間の想いを受け継ぎ今よりも強くなってほしい。
俺も1人でも多くの仲間を守れるように精進する…、共に成長して行こう」
俺は右手に拳を作り、心臓を軽く叩いた。
「尊き命の火を誰かに繋ぐまでは全力で走れ」
メンバーも同じように右手に拳を作り、心臓を軽く叩いて返事をした。
「はい」
クランメンバーの返事が響き渡る。
この行動を見ていた誰もが目に力強さと意志が宿っていた。
美人三姉妹でさえも何かを感じていたようだ。
その後は王都までの護衛は続くが、馬車の中は静かである。
しばらくして馬車の中から話し声が聞こえる。
俺の耳では内容は聞き取れないが何かを話している模様だ。
美人三姉妹の会話
博識の長女のランカロールが話出した。
「今までは外に意識を向けてこなかったけど、闇ギルドに狙われてからは考え方が変わったわ。今回の件で護衛の方々の有難みをひしひしと感じるわ」
「お姉さま、私が狙われたばかりに申し訳ありません」
「ラブイーナのせいではないですよ。それに今回の件は私にとって価値観が変わるほどの経験ですわ」
「それはいい意味ですか?」
「もちろんよ。人が亡くなってるからいい意味とは言いづらいですが、私は今回の護衛の方々に感謝をしています。流石はラブイーナが尊敬する人ですわね」
「それなんですが、私はとある一件でミロード様を軽蔑していたのですが、今回の件で私は上辺でしか人を見ていなかったのだと反省しました」
ラブイーナはランカロールに出発前の出来事を話した。
「憧れていた人がそのようなことを言ったのなら幻滅するのも無理はないかもしれませんが、やはりその行動や言葉には意味があったのではないですか?」
「今ならそうだと考えられます。ソンミンは昨日二人で何か話てましたが何か知りらない?」
「内容は言えませんが、私が悪かったのだと思います」
「そう。私が見てきた殿方達とは違って、初めて男性に興味をもちました」
「えっ、知識欲しかなかったお姉さまがですか?」
「ええ。武力や権力ではなく彼自身の考え方や行動に自然と目がいってしまいます。これが恋なんですかね?」
ラブイーナとソンミンは驚いている。
「大丈夫よ、ラブイーナが尊敬している人をとらないわよ」
「そんな…。ただ今回の件で上辺だけで判断して軽い言葉で口にするのは止めようと思います。もちろん今でも尊敬はしていますが、見る視点や考え方を知った上で一切ブレない気持ちで好きと言いたいので」
「不思議な人よね。今までならただの護衛だと思って考えることもなかった人種なのに」
「そうですね、お姉さま。でも、やはりソンミンが奇跡を受けれなかった理由が知りたいです」
ラブイーナの疑問にソンミンは俯いている。
「その顔はソンミンも思い当たる付しがあるのね?」
「はい。彼からは覚悟や想いだ足りないと言われました」
「なるほど、奇跡を起こせる条件があるのかもしれませんね。噂でもお金と時間が必要と言われていますので、何かしらの制約があるのかもしれませんね」
「だとしたら、何故ミロード様はソンミンの体を交換条件に奇跡を使うと言ったのでしょうか?」
「ソンミンの覚悟や意志を計ったのかもしれませんね」
「あっ」
「どうしましたラブイーナ?」
「そう言うことですか。ソンミンの覚悟や想いの強さが本物だった場合に奇跡が発動するのではないですか?だから、ソンミンの覚悟を試したのでは?」
「ありえますね。ただそれだと費用面でつじつまが合いませんので可能性の一つとしておきましょう」
ソンミンはずっと考えごとをしている。
「まあ、私達で考え事をしても始まりません。それにソンミンは何かに気付いているのでしょう」
「そうなのソンミン?」
「はい、お姉さま。あまり言いたくはなかったのですが、彼からは自分のことしか考えてない奴に奇跡は起きないと言われました」
「そう。言いたくないと言うことは思い当たる付しがあるのね?」
「はい。今回の件で私は考えさせられました。貴族である環境に甘えていたことも含めて…」
「今まで我が儘で好き勝手に生きていたソンミンが流行り病で死にかけた時に別人のように考え方が変わったように、今回も良い方向に何か変わるといいですね」
「はい。私は自身のため、そして皆のためにこれからは歌おうと思います。歌った結果喋れなくなっても後悔しません。後何回歌えるか分かりませんが困っている人や誰かを守るために私は歌います」
「ソンミン…」
ラブイーナはソンミンの覚悟を聞いて抱き着いた。
「いつか私が絶対にスキルを覚えて治してみせるから。私も決めた、弱気者や困っている人のためにこれからは聖魔法を使う」
「貴方達を誇りに思うわ。私も二人の道を繋ぐ架け橋となれるようにさらに知識を取り込むことを誓うわ」
こうして美人三姉妹は各々が決意を決めたのであった。
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