第97話 剣VS剣

後方では迫りくる盗賊達にリーリアが魔法を放っている。


負けじと盗賊達側も障壁や魔法で応戦し、一進一退の攻防が繰り広げられている。


「リーリア大丈夫か?」


「はい。ただ、障壁持ちが厄介です。セツナさん何とかできないですか?」


「了解、任せろ」


セツナが急いで障壁持ちに向かったのだが、突如横から剣圧が飛んできた。


「おっと、ここから先には行かせねぇよ」


「ほぉ、闇ギルドか」


「知っているならば話が早い。前方の仕事が終わるまで大人しくしているか死ぬかのどちらかを選びな」


「お前が死ぬ可能性は?」


「あるわけねぇだろ。神速のデイビットとは俺のことよ。俺に傷一つでもつけたら褒めてやるぞ」


そう言うとデイビットは凄い勢いでセツナの周りを駆け巡る。


「言うだけはあるな」


あまりの速さにセツナは防戦一方である。


デイビットの剣を受ける剣戟だけが木霊する。


セツナも負けじと剣気を飛ばし応戦するが簡単に躱される。


「ここまでの実力者は厄介だな。負けるとは思わないが時間がかかりすぎる…」


後方は人数の差もあり耐えることで精一杯だ。



その頃前方では…。


ナイトが無数の攻撃を受けとめていた。


「この鎧のおかげで何とかなってますが、これはシンドイですね」


ナイトのおかげでギリギリ持ち堪えているが、いつ状況が変わってもおかしくない。


そんな矢先、悲鳴が沸き起こった。


「ぐおぉーー」


「キャーー」


辺境伯の護衛達の悲鳴の後に、クランメンバーの悲鳴も聞こえてきた。


「影だ、影から攻撃されているぞ」


言葉の通りに影から心臓を一突きで攻撃してくる者がいた。


影からの攻撃になすすべがない。


こうなるとさらに現状は悲惨である。


クランメンバーも元冒険者の精鋭達なのだが、劣勢の状況の中で影からの攻撃に手も足もでない。


そしてとうとう死者がでた。


「ぐはぁ。1人でも多く、道ずれにしてやる…喰らえ。皆の者後はたの…ん…。」


「よくもゴジョウを…。このやろう、ぐがぁ…」


「ロクジョウ無理に突っ込むな」


「ミロード様、ご武運を…。」


ロクジョウは亡くなる瞬間に走ってくるミロードを見ながら最後に微笑んだ。


俺はロクジョウの笑みを遠目で見ることしかできなかった。


後数10秒早く到着していれば回復してやれたのに…。


ゴジョウやロクジョウの死を無駄にはしない。


状況を確認し、光魔法で無数の光を照らす。


「輝け、光源なる光よ、ライト」


無数の光が周り一面の影を無くす。


「ナナ、闇魔法使いを探せ」


「御意」


怒りの炎が剣に宿る。


炎剣術で近くの盗賊を瞬殺していく。


「ナイトの後ろで体制を整えろ。相手のペースに吞まれるな」


俺の一声で状況が一変する。


元々BランクやCランクの腕前を持つ者ばかりなのだから当然だ。


そんな中、俺にファイヤーアローが飛んできた。


とっさに俺は剣で魔法を切る。


「これはこれは、流石はミロード殿」


「俺を知っていると言うことは闇ギルドか?」


「ええ。まさかこの人数差で私達の出番があるとは思いませんでしたよ」


「闇ギルドの割に口調が丁寧だな」


「ほっほっほ。もちろん外面ですよ。死にやがれー」


その言葉と共に無数の炎の矢が飛んでくる。


炎使いとあって魔法に自信があるのだろう。


「ダブル・ウォーターウォール」


2重の水の壁で対抗する。


相性の良い属性で対抗するが、向こうは上位の炎魔法なので念には念をいれる。


案の定一枚目の水の壁が蒸発させられた。


「こいつらはヤバイな。さらに影使いなのか闇魔法使いなのかわからないがいるとなると…」


その後も魔法の打ち合いが続いている。


「ミロード、どうする?」


「ナイトはまだ持ちそうか?」


「俺自身は問題ないが、他のメンバーがやばい」


「だよな、セツナも呼ぶべきだったか…。ペルル氷魔法で皆を援護して…、いや炎魔法を相殺してくれ」


「クルゥ」


「テテとキュイはペルルを他の盗賊から守ってくれ」


「キュイ、キュイ」


「アゥーン」


テテとキュイの了承も得たので、こちらから反撃にでる。


ちなみにテテの成長は著しく、本当に犬・狼なの?と思うレベルである。


「主君、見つけた」


「いいタイミングだ、場所だけ教えてくれ。」


「前方やや左の一番大きな木の後ろに隠れている」


「サンキュー。喰らいやがれレイ・ストームガン」


俺は木の影に隠れている闇ギルドを大きな木もろとも貫通させて精霊魔法を打ち込んだ。


「バ…か…ナ」

見事に闇ギルドの闇魔法使いに命中したみたいだ。


「闇魔法使いは死んだ、目の前の敵に集中しろ」


「流石はミロード様」


「後はお任せを」


厄介な敵を倒したことで形勢逆転である。


もちろんもう1人の闇ギルドをペルルが抑えているのも大きい。


炎の魔法使いは焦っているようだ。


「チッ、撤退する。信号弾を打ち上げろ」


相手の声が響き渡った後に上空に信号弾だ放たれた。


その合図を見た盗賊達は一斉に逃げていった。



その合図を見た後方の部隊も同じである。


「まさか暗殺に失敗するとはな…、お前も運がいいな」


「まさか…、運がいいのはお前の方だろう?」


「次会ったら必ず殺す」


「待っているぞ、デイビット」


セツナの声と共にデイビットは消えていった。


こうして死者を出しながらも、なんとか守り切ることができた。






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