第95話 肖像画
クランの問題が一段落したころ、フウカが尋ねてきた。
「フウカが来るなんて珍しいね、何かあった?」
「最近は夜の講義が忙しくて困ってます」
「うん?ほとんどの者は礼儀や言葉遣いの講義を終わったはずじゃなかった?」
「講義は終わりましたよ。ただミロード様のせいで大忙しです」
「え、俺のせい?」
何かしたかな?
「ミロード様が言葉には言葉で遣り返せって言ったせいですよ」
「どう言うこと?」
「言葉で言い返すために、一から言葉を教えてくれと…」
うん、それは俺のせいだな。
「いい傾向と思って我慢してくれ。今なら元貴族のメンバーもいるし数人助っ人を見つけて頑張ってほしい」
「まあ、それはいいのですが、皆がどうしたらミロード様のようになれますか?って聞いてくるんですよ。そんなの無理に決まってるのに」
「別に俺は口が上手いわけではないから…な。俺よりも凄くなれって言っておいて」
「もう、こっちは大変なんですからね」
「給料上げるから頑張ってとしか言えないな」
「やったー」
あ、これが狙いだったのね。
まあ、頑張ってくれてる者にはそれなりの報酬は必要だよね。
クランの依頼もきてることだしいいか。
クランの依頼で思い出したのだが、数日前にキュイが一枚の紙を加えてもってきたのだ。
紙をよく見ると貴族からの依頼だった。
簡単に言えば闇ギルドに狙われているので護衛を頼みたいとのこと。
何でも北の辺境の地から王都への護衛の依頼である。
シャイン王国の北の辺境ならここからも近いな。
そこで現在はナナに情報を集めてもらっているところだ。
何故闇ギルドに襲われているのか?
テンゼット家が良い貴族なのかどうかを…。
数日後ナナからの情報が伝えられた。
テンゼット家は美人3姉妹で有名な良識のある貴族だそうだ。
博識の長女(19歳)、慈愛の次女(17歳)、歌姫の3女(16歳)と呼ばれている。
その中で慈愛の次女が闇ギルドに狙われている。その理由は俺と同じで聖魔法を使えるのが理由だそうだ。
俺が狙われたことにも繋がっているので気になる。
何よりもキュイがもってきたことに運命を感じる。
さらにはナナの情報によると3女は歌系のスキルを持っているが声帯が委縮して今は歌えないらしい。
本当かどうかは分からないが様々な理由からこの依頼を受けることにした。
護衛依頼なので精鋭20名を連れて参加する。
費用の限りで優秀な護衛を連れてきて欲しいとのことなので、予算を計算して20名とした。
もちろん辺境伯の護衛もいるので計30名以上いると予想される。
護衛とあって依頼の値段よりも多くの人数を投入したのは死者をだしたくないからだ。
こうして俺達はテンゼット辺境伯に向かった。
無事に到着し、現在テンゼット辺境伯と挨拶が終わり雑談をしている。
「噂に違えぬほど君達クランは冒険者とは思えないほどしっかりしているね」
「有り難うございます。ちなみに噂とは?」
「奇跡のクランから始まり、神の使徒のクランとまで言われているのは御存知だろう?」
「その噂は聞いておりますが、ただの噂ですので悪しからず」
「そうは言うが本当に奇跡を起こしているそうだね?」
「ええ、そのためのクランですから。お金も時間も必要ですから」
「その割には貴族からの支援はお断りしているのだろう?」
「支援を受ければ強制的にそちらを優先せざる負えない時がくると考えていますので」
「言い方は悪いが、平民に奇跡を授けるよりも貴族に奇跡を起こす方が有意義だと私は思うがな」
「そこは何とも…。ただ、私達は絶望の中で足掻いている者にチャンスを与えているだけですよ。なので貴族の方でも懸命に抗っている方になら平等に奇跡は訪れると思いますよ」
その言葉を聞いて辺境伯は微笑んだ。
おそらく3女のことがあってこの話題を振ってきたのだろう。
その直後に階段をバタバタと降りる音が聞こえた。
その直後バタンと扉が開いた。
「ミロードさまーーーーーー」
甲高い声がなり響いた。
そのまま俺の元へと…抱き着いた。
「ミロード様会いたかったです」
うん?声が喋れるってことは3女ではない?
「ラブイーナ、貴族らしく振る舞いなさい」
「はーい。ミロード様、辺境伯次女のラブイーナ・テンゼットでございます。この度は護衛依頼を受けていただき誠に有り難うございます」
そう言うとラブイーナはスカートの端を軽くつまみお辞儀をした。
「ミロードです。護衛の期間宜しくお願い致します」
「そんな、護衛の期間と言わず仲良くして下さい」
潤んだ瞳をしてラブイーナは見つめてきた。
「ミロード殿、すまない。次女は君の大ファンでね」
「えっ、俺のファンですか?」
「はい、尊敬しております。数々の奇跡を起こし、弱気を助けるミロード様をお慕いしております。あー、肖像画で見るよりも実物はもっとカッコイイなんて…あー、愛おしい」
ラブイーナの俺への称賛が止まらない。
「肖像画まで出回っているのですか?」
「おや、知らなかったのかい?高ランク冒険者はギルドで肖像画を所有しているぞ」
「そうなのサラサ?」
「まあ、そうね。スキル持ちが見ただけで書くから本人は知らないこともあるけど」
そうだった、肖像画に関してもスキルがあるはずだよね。
俺はもっと頭を柔らかくしないといけないなと感じたのであった。
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