第93話 殲滅軍
海鮮料理や休みを堪能した後、俺達は商業都市に帰った。
戻るなりサラサに笑顔でお出迎えをされて癒されたのは言うまでもない。
帰ってきた翌日には会議を開き、皆にアンケートの件を伝えた。
転生者は皆賛同をしてくれたのだが、この世界の人達はアンケートなどなくても結果は一緒でしょ?とハテナを浮かべていた。
むしろこの多人数なのだから、死ぬ覚悟があるメンバーを募集するだけでいいのでは?と言われた。
まあ、確かに全員のアンケートを集計してその中から選別するよりかは募集した方が早いのでその方向に切り替えた。
クランの掲示板に募集要項を記載。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
・魔物のスタンピードや高ランクの魔物の討伐
・盗賊や闇ギルドなどの討伐
上記の討伐を目的とした命を賭けて戦う軍を設立する。
いつ死ぬかも分からない危険な軍のため慎重に考えること。
一次募集期間:一週間
希望者はクラン受付まで。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
悩むくらいなら入らない方がいいので、まずは一週間の期間での応募とした。
一週間後。
受付に希望者を確認しに行くと…。
俺は受付のロザンヌに確認する。
「ねぇ、これって自らの意思で皆希望してるんだよね?」
「そうです。問題ありましたか?」
「問題と言うか、希望者が多すぎない?」
「そうですか?皆ミロード様と一緒に戦えることを楽しみにしてるみたいですよ」
「死ぬかもしれないんだよ?」
「ここにいるほとんどの人は、このクランに入ってなければ死んでいたかもしれない人ばかりなので」
「そうかもしれないけど、せっかく新しい生活に慣れてきて人生を楽しみたいとは思わないのかな?」
「皆さん今が一番楽しいそうですよ。誰かに必要とされるだけで嬉しそうにしてますよ」
「そ、そう。ならいいけど」
「かく言う私もこのクランに救われた1人として感謝しています。流石に戦闘スキルがないので後方支援しかできないのですが…」
「十分助かってるよ、有り難う」
「キャー、ミロード様に感謝されるなんて私明日死ぬのかな?」
「ねぇ、俺ってクランでどんな存在になってるの?」
「えっ、知らないんですか?」
「うん」
「奇跡、英雄、伝説、神の使徒、賢者、聖天者、導く者の7つの異名を持つレインボーブレットと呼ばれていますよ」
俺はしばらくの間思考が停止した。
もはや奇跡、伝説って人じゃなくて単語だよね。
過大評価されるにもほどがあるでしょう。
とりあえずロザンヌにお礼を伝えて去った。
ちなみに後で聞いた話、裏の名前で女殺しとも呼ばれていた。
そのことをセツナに話すと今さらって顔をされた。
この世界は権力者や強き者は人気だから色仕掛けには気をつけろと言われた。
何処の世界にもあるよね…。
日本ならばアイドルや芸能人が、この世界では賢者や勇者などの強者になるのだろう。
まあ、サラサやエターナが居るので色仕掛けは大丈夫だと信じたい。
話は逸れたが、応募者はクラン全体の半数にも上った。
中には戦闘スキルがない者まで応募していたことにビックリである。
今回は第1募集としてその中から300名を選抜して軍を作る。
続々とクランの人数は増えて現在は2000人を超えたところである。
なので、次の第2募集でも300人を募集すると伝えておいた。
今回は前衛・中衛・後衛と工作部隊をバランスよく採用し配置する。
ただ、今後を考えるとどうしても欲しい人材がいる。
この世界の英雄章の物語にも出てくる歌姫がどうしても欲しい。
スタンピードなどで限界を超えて戦う時にバフの効果と共に皆を励ます歌姫が今後どうしても必要になると考えている。
ただ、2000人を超えるクランであっても歌に関するスキルを持った者はいない。
様々なスキルがある世界で歌のスキルは貴重なのだろうか?
そう言えば音楽が懐かしいな。
酒場などで楽器演奏はあるが、日本みたいなオーケストラなどの繊細な音楽はない。
また、歌詞や曲などは定番な曲が多いのでなかなか新しい曲が生み出されない。
まあ、テレビや情報が少ない世界なので当然とも言えるが、唯一そこだけは寂しい限りである。
やはり歌は偉大であるとしみじみと思う。
いつか、音楽集団を作りたいなと考えてしまう。
話が脱線したが、これからは貴重な人材を探しながら軍を強化して行く。
前衛や中衛はほぼ欠損奴隷が名乗りを上げ、後衛や工作部隊は元孤児の適正がある者が多く応募してくれた。
その中から優秀な人材をピックアップして殲滅軍を作った。
多くの名前を考えたがあえてマイナスのイメージの軍の名前にした。
民衆のイメージに合わせた名前だと何かある度に名前の由来と比べられるので、それならば始めから恐いイメージの名前で浸透させることにしたのだ。
ただ単純に魔物を殲滅する部隊としてもシンプルな名前の由来もあって俺的には気に入っているのだが一部の連中からは不評だと聞いた。
こうしてついに殲滅軍が誕生したのであった。
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