第91話 不意打ち

俺はイメージを膨らませる。


前は陰と陽のイメージだったが、それに加えて水の水圧と風の暴風を加えてイメージする。


鮮明に色濃くイメージを積み重ねる。


指の先から気精が膨らみ見る見る内に気精が大きくなる。


1m程大きくなった気精に弾丸をイメージして放出する。


「怒りの暴雨よ、全てを消し飛ばせ、レイ・ストームガン」


放たれた弾丸はもの凄いスピードで巨大生物に向かい、魔物の中心部に1m程の風穴を空けた。


巨大生物を討伐したかと思ったが、まだクネクネと動いている。


だが、もう俺の仕事はないだろう。


何故ならばセツナが水面を走り、巨大生物を切り刻んでいるのだから。


そんな矢先、気付けば俺の後ろから火魔法が襲ってきていた。


もう目と鼻の先である。


即座に飛び避けるが間に合わなくて肩に魔法を食らう。


俺は魔法の放たれた方向と魔力を確認し叫ぶ。


「ナナ、そいつを捕まえろ」


魔法を放った奴は逃げようとするが、ナナのスピードには敵わない。


痛みが全身を襲い、肩が焼きただれているがパーフェクトヒールで瞬時に治す。


本当に危ないところだった。


魔物の殲滅戦、セツナとナナが傍にない状況で襲われるとは…。


恐らく闇ギルドだろう。


一歩間違えれば死んでいてもおかしくない状況だ。


気付くのが一瞬でも遅れれば魔力防御もできないのだから。


ナナが犯人を捕まえるのを確認した後、俺はセツナの様子を確認した。


現在はタコの手足を切り刻んでいる最中だった。


20分後、巨大生物は切り刻まれ巨大な魔石を持ってセツナが帰ってきた。


巨大生物がいなくなった途端に海の魔物は散り散りに逃げていった。


もちろん気付かずに町に向かう魔物もいるので最後まで討伐していく。


こうして無事に海の魔物の群れを追い払ったのだが、ナナが捕まえた者は自害し真相を掴むことが出来なかった。



俺としては歯切れの悪い内容となったが、町の者達はお祭り騒ぎである。


ちなみにセツナが切り刻んだタコは茹でるか焼くと美味しいらしい。


そう言うことならと俺は無償で魔物の肉?を提供した。


冒険者ギルドに向かい依頼達成になるか確認すると無事に依頼達成となった。


この後は町を上げての宴会になるそうで、俺達クランも是非参加して欲しいと言われた。


俺はクランメンバーに自由参加とし、好きに行動するように伝えた。


幸いクランメンバーに重症者はいるものの死人はでていない。


少し休んで魔力を回復させてから俺は重傷者にもパーフェクトヒールを使い治した。


クランメンバーの多くは命を賭けた戦いは初体験なので、無理に参加するようには言わなかったが、自分達が救った町を見ることをお勧めしておいた。


1人2人と宴会場所に行き準備を手伝おうとしたのだが、町の人達から主役は座って待っておきなと言われていた。


また、民衆からお礼を言われ戸惑っているクランメンバー。


その様子を見た者が他のクランメンバーに伝え、ほとんどの者が宴に参加していた。


宴に参加した全員が感謝を言われ、喜びながらも照れていた。


こういう経験を経て真っ直ぐに育って欲しいと思ってしまう。



すでに飲んでいる者も多くいるが、準備が終わり本格的な宴は始まった。


俺はリーリアとセツナと一緒に飲んでいる。


リーリアも無事に目を覚ましたのでお詫びをする。


「リーリア悪かったね。もうすこし慎重にいくべきだった。申し訳ない」


「そ、そんな、ミロード様が謝る必要なんてないです。私が未熟だっただけです」


「そんなことはない。近くにいた俺が後ろに魔物を通し過ぎたのが問題だ。スマン」


「セツナさんまで。一緒に語った仲ではないですか」


「だからこそだ。同士が居なくなるのは嫌なのでな」


同士?いつの間にそんな同盟を組んでいたの?


それからは反省点も踏まえて語り合った。


お酒も入り、楽しく食事をしていると兵士長のクゼッタがやってきた。


「魔物の討伐お見事であった」


「そちらは散々な内容だった見たいですが…。」


「まあ、そう言うな。町を救うために戦った仲ではないか」


確かにそうだが、俺はこいつを許していない。


こいつのせいでリーリアが危ない目にあったのだから。


「そちらの陣形のせいで、こちらは被害を被ったのだが?」


「戦に損害はつきものだ。指揮官なら分かるだろう?こちらは多くの死者をだしておる」


「それはお前が無能だからだろう?」


「き、貴様、何を言う」


セツナもクゼッタを人睨みして言葉を発した。

「酒が不味くなる、無能は立ち去れ」


クゼッタは唇を噛みしめている。

「調子にのるなよ、若造が」


その言葉と共にクゼッタは去っていった。


「喧嘩腰で良かったのですか?」


「誰かが伝えないとこの町が可哀そうだからね。武力があったとしても指揮官が無能だと死者が増えるからな」


「そう…ですね。その点ミロード様は流石ですね」


「その言葉は今の俺には堪えるよ。己が未熟だと痛感させられた戦だった」


「何を言ってるんですか、クランメンバーは目を輝かせて今も今回の戦の話をしていますよ」


「確かにそうだな。ミロード様は皆の希望だからな」


「セツナさんも皆の憧れで一緒ですよ。精進しないといけないのは私なんですから。絶対にもっとミロード様の役に立って見せますからね」


キュイがリーリアの頭に飛び乗ってよしよししている。


テテも負けじとリーリアにすり寄っていく。


その光景に俺は癒され、悪い気分はすっかりと良くなったのであった。






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