第90話 海の魔物
海の魔物は魚の顔をした人形やヒトデの形をした魔物まで多種多様である。
魔法を使う魔物も多く、前線では苦戦を強いられている。
「土魔法部隊、弓部隊と魔法部隊用の足場を構築しろ」
「了解」
「30名の前衛部隊は三位一体の形で迎撃。残りの20名は壁を作り、抜けてきた魔物を対処しろ」
「了解」
部隊はギクシャクしながらも道中で習ったことを実践で行っていく。
「流石に練度はないが、相手が魔物だから何とかなりそうだな」
「まあ、そうだな。それより俺は好きに動いていいのか?」
「いや、嫌な予感がするからセツナは待機で。もし危ない場所があればそこを助ける感じで宜しく」
「嫌な予感か…、分かった」
こうして俺達クランが加わったことでゲーデ町の冒険者や兵士達が落ち着きを取り戻した。
「マジで助かったわ」
「いつ来るか分からなかったから、早く到着してくれてマジでサンキュウ」
「俺達はどうしたらいい?」
お礼の言葉は分かるのだが、何故俺達に指示を求める?
「指揮官はいないのか?」
「兵士長がいるが、まったくもって使えねぇ」
「そうね、武力はあるのだけど…頭はからっぽね」
「そうか、なら兵士達は兵士長が指示を出すとして、クランの指示に賛同する冒険者のみ指示を出す。賛同しない者は冒険者らしく自由にしてくれ」
「ありがてぇ」
「お願いするわ」
「冒険者達は一時撤退、1時間の休息とする」
「お、おい、俺らが今抜けて大丈夫なのか?」
「後ろで休みながら見てな」
冒険者達は不思議そうに後ろに下がって休息を始めた。
俺は道中に陣形と発動魔法を伝えており、魔法部隊に合図する。
左右に火魔法、中央に水魔法部隊の陣形である。
「俺の魔法が着弾した場所に合図と共に詠唱後に魔法を放つように」
その言葉と共に俺は水のフェニックスを放つ。
水のフェニックスは地面に着弾したと同時に合図を送る。
「魔法部隊、放てぇーーーーー」
一斉に放たれた火と水魔法がぶつかると爆発と爆風が巻き起こる。
辺り一面の魔物達が弾け飛び、地面に穴が空く。
水蒸気爆発までは行かないが気圧変化と温度変化が爆発を誘発した。
それを見た冒険者達は目が飛び出るかと思うほどに驚いている。
魔物が集まってくるタイミングで場所をずらして再度発射する。
それを数回繰り返した頃には前方に横一列の穴ができる。
そして、ようやく冒険者達の休息が終わり戦闘に復帰する。
この頃には全冒険者が俺の指示に耳を傾けた。
「冒険者諸君は前方の穴からくる魔物の撃退を頼む」
「了解」
「任せろ」
「これだけお膳立てしてもらえれば楽勝ね」
ちなみに中央と左翼がクランと冒険者で守っている。
残りの右翼を町の兵士達が守っているのだが…。
そんな折、早馬が来て救援を求めてきた。
「セツナ、指揮権を貰うか戦力を送るかどちらがいいと思う?」
「指揮権をすんなりと貰えればいいのだが、言い合いとなれば時間の無駄だからな、俺とリーリアで行こう」
「じゃあ、任せるよ。ナナを含めた10名も念のため連れて行って」
「あいよ」
こうして右翼にセツナ達が向かったのだが、これが裏目となる。
町の兵士達はセツナ達が来たことで負傷者が下がり始め、それを気に休息に入る者が続出した。
始めはセツナやリーリアが無双しながらナナ達が脇を固めていたのだが、時間と共に魔物の群れが数で押し切る形になっていた。
こちらは魔法部隊がいるからよかったのだが、向こうは殲滅スピードが二人にかかっているため魔力や気力が消耗する度に焦りがでる。
俺もどうするか考えていたのだが一足遅かった。
リーリアが魔物の突進によって吹き飛ぶ姿が見えた。
俺は瞬時にミナミに場を任せ、吹き飛んだリーリアの場所に走った。
ミナミが機転をきかせ、セツナ達が後ろに徐々に下がった瞬間に魔法部隊が右翼にも風穴を空けてくれた。
俺はリーリアの所に到着すると回復魔法を使う。
だが、リーリアは一向に起きる素振りがない。
慌てた心を落ち着かせて、リーリアの脈を計る。
「ほっ、気絶してるだけか。ペルル安全な場所に運んで守ってやってくれ」
「クルゥ」
流石の俺も頭に血が上った。
兵士長を殴ってやりたいが、今の状況がそうも行ってられない。
俺は右翼の風穴の空いた場所を飛び越え、剣を持って駆けだした。
向かう場所は海の奥に見える巨大なタコのような生物。
あの魔物が近づいた結果、海の魔物が押し寄せたと考えられるので、都合よく海沿いの近い場所まで来てくれたので殲滅しに行く。
本当は血管がブチ切れそうなほど怒り狂っていたので、居ても立っても居られないだけである。
魔物の群れを踊るように駆け抜け、魔物を切り刻んで行く。
ふと、後ろを振り返ると俺の後ろにも鬼がいた。
どうやらセツナもブチ切れているらしい。
さらにはもう一人?一匹?切れている者がいた。
風精霊のうーちゃんである。
「ミロード、僕も力を貸すから特大の魔法をお願いするよ」
他の者が怒っていると逆に冷静になるって話は本当だな。
俺以外の二人の鬼のおかげで俺の思考がクールになる。
前方の魔物を無数のウインドアローで倒し道を開け、その間に魔力を生成する。
海辺に着いた頃には、上空に特大の虹のフェニックスが舞い、巨大なタコの生物に向かって放つ。
ズドーンと言う音と共に巨大生物は一部が埋没している。
ただ、埋没しても生きているのがわかる。
それを見た俺は叫ぶ。
「うーちゃん、ユニス、例の魔法で行くから怒りの刃を頼むぞ」
俺は精霊の複合魔法を準備する。
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