第84話 集結

とある青年の旅立ち。


俺の名前はドガン。


とある村に産まれスキル《スピアマイスター》を授かった15歳だ。


15歳になったら村をでて冒険者ランクを上げながら旅をすると決めていた。


行き先は決めていないので村に来る商人に毎回情報を教えてもらっている。


そんな折、ついに飛び切りの情報が舞い込んだ。


その情報は俺が憧れている人の情報だった。


ちなみに俺が憧れている方は俺が住んでいる村を剣一本で救ってくれた人だ。


片手、片足を失いながら魔族を倒したと聞いたとき身震いした。


己を犠牲にしながらもこの国を救った英雄として語り継がれている神のようなお方。


俺もそんな偉大な人になりたい。


その方はそれ以降表舞台には表れていないそうだ。


それもそうだよな、片手・片足を失っているもんな。


そんな折、俺が旅に出る前にその方の情報が聞けるとは…俺は運命だと思った。


商人曰く、その方は奇跡を起こして治療してくれた人と共にクランを立ち上げたのだとか…。


えっ、英雄の体が元に戻ったの…。


あのお方が立ち上げたクランに入りたい。一緒に冒険してみたい。


クランの募集条件を確認すると…、寝床と食事のみ?


後は働き次第で追加報酬か…、まあ普通だな。


それよりもあの方に恩を返したい。


俺が無事に生まれることができたのも全てあの方のおかげ。


あの方の元で俺はもっと強くなって、いつか俺も語り継がれるような英雄になってやるぜ。




ある女性の葛藤。


私の名前はミズリル


回復魔法が使える17歳の乙女。


乙女って自分で言うのも恥ずかしい年頃なのに、教会がそう呼んでいるので自分で言ってみたの。


回復魔法が使える私は教会に勧誘されて入った。


もちろん活動理念に共感して入ったのだが、実際の現状は全然違う。


何をするにも金をとり、慈善活動なんて一切ない。


何が治して欲しかったら献金せよよ。


お金のない孤児は相手にするな。貧乏人は助ける価値がない。


ふざけるな…、何が神の慈愛を受けし慈愛教よ。


聞いてあきれるわ。私は嫌気がさして逃げ出したい気持ちよ。


ただ村に帰るくらいしか行く当てがない。


そんな折、冒険者ギルドにてクランの募集要項が話題になっているそうだ。


私もその貼り紙を読んだ。


奇跡を起こすためには時間とお金がかかると書かれていた。


言いたいことは解るけど…、そのためのクランであるため基本報酬は寝床と食事のみだって?


能力に合わせて追加報酬があるとは言え酷い内容だわ。


ん?


よく考えたら今と全く変わらないわね。


むしろ堂々と公言するなんて清々しいわね。


今と変わらないなら奇跡を起こせる可能性があるクランに行ってみようかしら。


まあ、どうせ奇跡なんて起きないでしょうが…。


どうせこの教会に居たくないし、言ってダメな時は村に帰ればいいか…。


よし決めた。私がこのクランを見定めてやる。




ある孤児の決意。


僕の名前はサービ。


掃き溜めの町と言われた所で暮らす孤児だ。


暮らす?違う、ただ居るだけの存在だ。


残飯を漁り、食べれる葉っぱと井戸水で過ごしているだけの孤児だ。


もうこんな生活嫌だ。


ただ、行く宛も場所もない。


スキルも《無魔法》ってなんだよ。無い魔法なら何も出来ないじゃないか。


こんなスキルのせいで僕はこのまま孤児のまま過ごして死んでいくのかな?


そんな折、信じがたい噂が流れてきた。


あるクランの募集要項らしいが、寝床と食事と働く場所を提供してくれるそうだ。


まあ、孤児で能力がない僕じゃ入れてもらえないよね。


えっ?


身分や種族・能力は一切関係ないだって。やる気があるやつは来いって話らしい。


いきたい、行きたい、生きたい。


行きたいけどどうやって行こう?


まってまって、各村や街に定期的に馬車が来るからそれに乗ってこいって話は本当?


こんな話嘘だよね?


でも本当なら…。


嘘でも騙されてもいいから賭けにでてみよう。


どうせ失う物なんてないんだし。


早く迎えの馬車がこないかなー。




ある種族の旅立ち。


私の名前はトリー。


珍しいと噂される鳥族である。


鳥族は情報部隊としてこき使われることが多い。


見つかれば奴隷にされ、命枯れるまで飛び続ける運命。


今は山奥に隠れて暮らしているけど、魔物の脅威もあるので安心して暮らせる場所が欲しい。


そんな折、山に冒険者が来た時に会話してた話に興味を惹かれた。


種族や能力は関係ない。やる気があれば寝床と食事を提供するだって?


本当?私でも安心して過ごせる場所をくれるの?


でも、命枯れるまで飛び続ける運命は変わらないよね?


でもでも奴隷じゃないなら自由もあるかも?


そんなことを考えていると勝手に足が噂していた都市に向かっていた。


まあ実際は飛んで行くけどね。


この生活がずっと続くと思うと嫌だ、私は決死の想いで賭けにでるのであった。




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