第83話 クランの加入条件
これはクランの加入条件とビジョンを話し合っている最中に孤児代表としてアランにも参加してもらっていたのだが、アランからでた言葉が衝撃だった。
「ミナミさんは孤児の方を救いたいんですよね?」
「そうだよ。何かいい案ある?」
「確かミロード様は自らの意思で来る孤児の奴らにチャンスを与えてくれるんですよね?」
「まあ、そうだな」
「でしたら、寝床と食事を与える代わりに働いてもらうでいいのではないでしょうか?」
「えっ、それだけ?もっと孤児を救って幸せになってもらいたいのに」
「そもそも孤児は寝床と食べる物があれば現状より幸せになりますよ。さらには働く場所を作っていただけるだけで希望しかないですよ」
まさかの答えに俺達は驚愕している。
転生した知識がある分、最低ラインの基準にズレが生じていたことに3人とも気付いた。
そこで俺はこの基準を元に考え抜いて提案した。
「アラン有り難う、おかげで決まったぞ」
「そんな、お礼を言われることなんて一つも」
「何を言ってるの。アランのおかげよ。それでミロード、何に決まったの?」
「まず募集内容だが、基本このクランに従事する者は最低限の寝床と食事のみを提供する。働きに応じて追加報酬はあるが微々たる物と思えと示す」
「なるほどなるほど。でも、それだと孤児の子以外加入しないんじゃないの?」
「別にクランの人数を増やしたい訳じゃないからな。欠損奴隷の隠れ蓑にするだけだから丁度いい」
「そうなのね。それで?」
「次は詭弁内容だが、奇跡を起こすには時間とお金が必要だ。だからこそクランフェニックスに従事する者は奇跡を信じそのために人生を捧げる者のみを希望する」
「凄い内容だね。奇跡を見る代償として人生を捧げろなんて…」
「だからこそ、貴族や勘違いの者を排除できる。まあ、普通の生活を送っている者は入る気にならないから丁度いいだろう。それに欠損を治した奴隷もその内容を聞いてクランに加入している者にも感謝するだろうからね」
「そこまで考えてなら文句なしだね」
「それでも加入したい者には加入してもらって様子を見ればいい。もちろん脱退は自由だからね。むしろ孤児には一人立ちしてもらわないと増える一方だかたな」
「いいわね、ワクワクしてきた。ところで内容は分かったけど掲げるビジョンは何にするの?」
「ビジョンは《絶望を乗り越えし者》だ」
この言葉にセツナとリーリアが反応した。
「確かに欠損した者や最底辺の孤児にはピッタリのビジョンだな。絶望してた頃が懐かしいな」
「私と同じような人を救えるなら頑張ります」
「あ、君達は乗り越えた成功例だから、むしろもっと幸せになって欲しいのだけど」
「何を言ってるんですか、今が一番幸せです」
「俺も今が一番楽しいかもな」
「僕なんて未だ夢の中にいる気がして怖いくらいです」
「アランはもっと自信をもて。あ、言ってなかったけどアランは孤児の代表だからな」
「えー、無理ですよ」
「アランにこの言葉を捧げよう。寝床と食事の対価として働け」
皆が一斉に笑いだした。
「アラン、この言葉は使えるな。まあ冗談は置いといてお前の補佐役は自由に決めていいからナイトと相談しながら頑張れ」
俺の言葉を受けてアランはやる気になってくれたようだ。
「頑張ってみます」
「あ、最後に俺のスキルとパーフェクトヒールで奇跡を受けた者には契約魔法を結んでもらおうと思う」
「情報漏洩対策だね」
「そう。簡単に奇跡を起こせるって思われると掲げた内容と矛盾するからね。サラサは冒険者ギルドに俺の能力を広めないように伝えておいてくれ」
「わかったわ。まあ、個人の能力は黙秘されているとは言え、あまりに凄い能力は噂になるのが早いから念を押しておくわ」
「有り難う。ところで信頼できる契約魔法を使える者を知らない?」
誰も心当たりがないようだ。
「しょうがない、こればっかしは信頼できる者が欲しいからナナに情報収集してもらおう」
「主君、任せろ」
何処からか現れて返事だけして去っていったナナは流石である。
「取り敢えずこの内容でクラン募集事項に記載するとして、この他に何かあればこの機会にどうぞ」
俺が声を掛けるとナイトが手を上げた。
「これから孤児が増えると想定したら、仕事が足りないんじゃない?」
「これ以上は私の方でも無理よ」
「しばらくは俺の方でして欲しいことがあるからいいけど、増え過ぎたら考えものだな。いっそ派遣会社でも立ち上げるか?」
「あ、ゆくゆくを考えるとアリですね。急には無理なので今から準備していけば安心かもしれませんね」
「じゃあ、その方向でナイトに任せる」
「俺でいいのか?」
「クランの補佐約もあるから大変だと思うけど宜しく頼む。ナイトの後釜も育ててくれると助かるよ」
「わかった。ちなみにミロードの仕事は?」
「俺は奇跡を起こすこととクランの維持費を稼いでくる」
「欠損奴隷をダンジョンに出せばそれなりに稼げるぞ」
「それはお願いするよ。まあ、そのための装備も必要だし一石二鳥の案があってね」
「ミロードは秘密主義が多いな」
「私達のスキルは知ってるのにズルイ」
「まあまあ、契約魔法を使える者が現れたら俺のスキルを教えるよ。ちなみにチートスキルだけどな」
こうして俺達クランの今後の方向性が決まったのであった。
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