第79話 更生

それからと言うもの、俺達はギルドに顔を出す度にクーデリオンに絡まれている。


他の者が見たらクーデリオンは人が変わったように傲慢な態度はなくなり別人に思えるそうだ。


そんなことからも俺達は今話題のクランとして噂されている。



今思えば仲間以外で冒険者ギルドに親しい者などがいない気が…。


普通はギルドの中で仲良くなったり合同で依頼を受けたりするはずなのだが、今までは一切そう言う関係を作ってこなかった。


守る場所を増やしたくないので今までは避けてきたが、これからはクランを設立して拠点を構えてしまった以上ご近所付き合いもしていこうと思う。


でも、多少なりともギルドには顔を出していたのに誰からも絡まれることはなかったのは何故なんだろう?。


そんな矢先、ある女性パーティから声をかけられた。


「あ、あのー、すこしお話をしてもいいですか?」


「別にいいいよ。向こうで話そうか」


「は、はい」


お互いのメンバーも含めて椅子に座り話を聞いた。


「急に申し訳ないです」


「そんなに気を遣わなくていいよ。怖い人なんていないし」


何故か女性達は驚いている。


腑に落ちないので純粋に聞いてみた。


「えっ、俺らってもしかして恐れられてる?それとも嫌われてる?」


女性達は首を縦に横に忙しそうに振っている。


「ごめん、俺達のイメージなどを教えてくれるかな」


「は、はい。クーデリオンを更生させた今は鬼神と呼ばれ噂されています。あとミロードさんはいつも女性を侍らしているので男性冒険者の敵と…。」


なるほどなるほど、俺はそんな風に思われていたんだ…泣きそう。


「その割りに誰も絡んでこなかったのは何故なんだろう?」


「高ランク冒険者と言うのもありますが、セツナ殿がいるからだと思います」


「ちなみにセツナの評判を聞いてもいいかい?」


「はい。英雄ナツナ殿は奇跡を乗り越えし者と呼ばれ凄い人気です」


「セツナ、俺とお前で真逆の好感度だったとは…」


「まあ、俺は昔の一件を知っている者が良く思っていただけだ。ミロード様の良さは今から伝わっていくさ」


「そうだといいけど。あ、ごめん、それで話って?」


「クーデリオンを更生したように、私達のパーティの一人を更生していただけないかと」


彼女達は5人パーティなのだが、今いる者達は4人なので残りの一人が問題児なのかな。


「取り敢えず話だけ聞いてもいい?」


「はい。私達絆のパーティは全員女性で構成しているのですが、今いないサドって言う女性が大の男好きで困っているのです」


「別に男好きでも問題ないのでは?」


「それが、依頼の度に男を連れてきたり、ダンジョンで安全地帯に居る時でさえ声をかけて…。さらには毎日泊まる部屋での雑音が酷くて困っています」


「それを本人には言ってみたの?」


「はい。言ったのですが私の休憩中に何をどうしようが勝手だろうと…」


「それは全員が同じ意見なら、クビにしたらいいのでは?それに今の内容だけ聞くと彼女は休憩の時だけプレイをしているのだろう?」


「そ、そうなんですが、彼女のせいで私達も男性から厭らしい目で見られ、さらには軽い女達だと思われて困っています」


難しい話がな。男女の色恋は自由だがパーティが変な目で見られるのが嫌だと。


「セツナはどう思う?」


「本人達の意思次第じゃないのか?」


「サラサは?」


「男達の厭らしい目なんて、今に始まったことじゃないわよ。その子がいなくても男なんてそんなものよ」


うん、酷い言われようだ。


「別にそのせいで無理やり襲われたことはないんでしょう?」


「一度だけあります。彼女がダンジョンの安全地帯で夜にプレイしてたのですが、その声に触発された男どもがこちらのテントに忍び込んできたことが。もちろん返り討ちにしてやりましたが…。」


「あ、それは困るわね」


「確かにそれは危険だね。彼女をクビにしたくないのなら残り一枠に男性冒険者を入れるのはダメなの?」


「ダメではなですが、女性だけのパーティの方がいろいろと楽で」


「まあ、いいたいことは解るが、そうなると本人と話し合うしかないのでは?」


「お願いです、一緒に説得してくれませんか?」


「えっ、俺が?」


「はい。クーデリオンを更生させた実績があるのでどうかお願いします」


「説得と言うよりも俺は自分が思うことを伝えるだけだぞ?もしかしたら君達に不利益が生じるかもしれないがいいのか?」


「それでもいいのでお願いします」


こうして夜に再度集まり、食事をしながら話すことにした。


俺達が酒場で待っていたら、例の問題児を連れて彼女達がやってきた。


サドは俺達を見て驚いている。

「お、珍しいな他のパーティと一緒に飯を食うなんて」


「あんたのためよ」


「そうなのか?お、どこのパーティかと思えば色男のパーティか」


「そんな言われ方は初めてだな。取り敢えず飯を食いながら話そう」


こうして俺達はご飯を食べながら話すことにした。

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