第78話 兄貴

俺らは余韻に浸りながら宿屋に帰った。


宿屋の亭主は元Aランク冒険者だった。


俺達見たいにあの光景に魅せたれて終焉の場所としてここに宿屋を開いたそうだ。


そして聞いたところ、何故か虹の琵琶湖周辺には魔物が寄ってこないとのこと。


なので買い出しなどで街に行く以外では魔物の心配はないらしい。


冒険者を引退してこういう人生も素敵だよな。


この世界の娯楽は日本と比べればかなり少ない。


その分男女の関係が盛んになるのか、夜の街は栄えているそうだ。


そう言えばこの世界にきて夜の街に行ってないな。


まあ、今行けば怒られるだろうが…。


セツナに一度誘われた時に行っておけばよかったかな。

一度くらいはこの世界の夜の街がどんなものか気になるので見てみたい。


そう言えば依頼で…、確か…、今度受けてみようかな。

依頼で外から見てるだけならOKだよね。


そんなことを考えながら2日目を過ごした。


3日目の朝も虹の琵琶湖を見にきた。


ふと、この光景に虹の不死鳥が加わった姿を想像した。


俺は琵琶湖上空に虹の不死鳥を放った。


虹の方向に向かう虹の不死鳥の姿が幻想的でめちゃくちゃ綺麗だった。


一枚の写真に残しておきたいくらいだ。


この世界に写真はなく、それに近い魔道具が遺跡から発見されたぐらいである。


ちなみに、この時ある新人の画家がこの瞬間を見ていたそうだ。

その絵画が後に一世を風靡し、有名な画家になることを今は知る由もない。


あいにく精霊の姿は見れなかったが、ユニスが琵琶湖で遊ぶ姿を見ていたら他の精霊を見てもしょうがないなと感じた。


ユニコーンの中ではユニスが一番可愛いもんなと親バカのように思っていた。


さらにはテテやキュイなども琵琶湖ではしゃぐ姿を見て本当に来てよかったなと思う。


こうして楽しい旅行は終わり帰ろうとした時に亭主からお願い事をされた。


俺らが今住んでいる冒険者ギルドに子供がいるらしく、今頃はある程度成長していると思うからこの装備を渡して欲しいと言われた。


もし腐っていたら力になって欲しいとも言われた。


俺達は快く引き受けてから帰る。



帰りも何事もなく商業都市に帰ってきた。


流石に今回はお土産はないので旅の話だけである。


この話を聞いて皆行ってみたいと行っていた。


クランの冒険者組の実力が上がれば皆で行けばいいさと言ったら、目を輝かせてやる気になっていた。



翌日俺は冒険者ギルドである人物を探していた。


良くわからないので受付で聞いてみる。


「クーデリオンって冒険者を探しているんだが、今冒険者ギルドにいるか?」


「あー、Dランクのクーデリオンですね。あそこの酒場で寝ているのがクーデリオンですよ」


「朝っぱらから飲んでるのか?」


「噂では、最近パーティから追い出されてやけになっていると聞きましたが」


「そう、有り難う」


俺はセツナ達と一緒にクーデリオンの元へ向かった。



寝ているクーデリオンを起こす。


「起きろ」


なかなか起きない。


「俺は嘘なんて言ってねぇ」


寝ぼけているようだ。


ゆさぶり起こすこと3回、ようやく意識がはっきりとしたみたいだ。


「お前らは誰だ」


「同じ冒険者だ。お前がクーデリオンであってるか」


「ああ。確かお前は指定冒険者でチヤホヤされてた奴か」


「セツナ、俺はチヤホヤされてたのか?」


「まあ、上級冒険者にもなれば周りからそう思われることもある」


「そう言うもんなんだな」


「で、俺になんかようか?」


「なんでパーティから追い出されたんだ?」


「はぁ、お前に関係ないだろうが。あ、勧誘か?」


「お前の親御さんから伝言とお土産を預かっている」


「はぁ、親父からか?親父にあったのか?」


「ああ。お前が腐ってないか心配していたぞ。タイミング悪く腐ってる見たいだがな」


俺達は椅子に座りゆっくりと話を聞くことにした。


話を聞く限り、どっちもどっちだな。


父親が昔Aランク冒険者と言うだけで図にのっていたクーデリオン。


実力がないのに口だけだとパーティからは愛想をつかされた。さらには親父さんがAランク冒険者だと言うことも嘘だと言われ追い出された。


嘘は言ってはいないが、本人の今までの行動がパーティから追い出される結果となったと言うことらしい。


「俺らがこのタイミングで来たのも何かの運命だろう。お前はこれからどうするんだ?」


「俺が図にのっていたのは認めるが、パーティには貢献してたはずなんだ」


「それを決めるのはお前じゃない。そう言う考えがパーティに不調和音を与えたんじゃないのか?」


「…。」


「人は皆自分が一番だ。だがな、人のことを考えられないから今の状況になったんではないのか?」


「そう…だな」


「そのスタンスを貫きたいなら上級冒険者くらいの実力になって、お前中心の冒険者パーティを作ればいい」


クーデリオンは俯き考えているようだ。


クーデリオンになにか伝わればいいな。


こうして俺達は親父さんの装備をクーデリオンに渡してから帰った。


翌日俺達が冒険者ギルドに行くとクーデリオンが近寄ってきた。


「兄貴、おはようございます」


俺達は不意をつかれて固まるしかなかった。

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