第77話 旅行
その後は順調に進み商業都市に帰ってきた。
真っ黒の卵をミナミにお土産として渡したら大層喜んでいた。
そして、テテを見た瞬間に一目散に駆け寄りナデナデしながらズルイとだけ言われた。
テテがヨタヨタと歩く姿にサラサも目がハートになっていた。
卵から産まれて俺を親だと思っていると伝えたら、私とエターナがお母さんだねと言われた。
まあ、可愛がってくれるならいいか…。
最近はテテとキュイを連れて散歩に行くのだが、都市の人達から沢山のエサをもらっている。
その都度テテはエサを食べているのだが、好き嫌いはないのだろうか?
むしろ産まれたばかりなのに何故肉を美味しそうに食べれるんだろうか?
やはり魔物なのだろうか?疑問ばかりが浮かびテテの種族が気になるが、戦闘要員ではなくモフモフ要員なので良しとしよう。
テテはいつも俺の膝の上に乗ってくるのだが、人差し指でウリウリとお腹をナデながら可愛がっているとサラサとエターナとキュイが来て一緒に遊びだす。
アイリスの一件があったからこそ思うのだが、こんな温かい日常が幸せなのだと感じる。
そんな想いから、俺は二人にも幸せになって欲しくて、サラサとエターナに一緒に旅行に行こうと伝えたら喜んでいた。
今回はセツナ達はお留守番である。
家族の親睦を深めてくると言ったら、セツナは笑っていた。
クランのメンバーも俺達が依頼で出かけていた間に随分と成長したように感じる。
この分ならサラサがいなくても大丈夫だろう。
こうして旅行に行くことが決まったので二人に何処に行きたいか聞いたら、口を揃えて虹の琵琶湖と言われた。
俺がなんでと聞くと、ミロードと言えば虹でしょって言われた。
ちなみに虹の琵琶湖は朝に日が昇ると同時に琵琶湖の湖が蒸気を発して霧がかかり、そこに虹が現れるそうだ。
幻想的で綺麗だと評判で有名な観光スポットなのだが、行くまでが大変で魔獣がいる森の中を通るためお金持ちや冒険者など成功者だけが行くことが出来ると噂され憧れの場所となっているらしい。
商業都市からは2週間ほどでいけるそうなので、今回は三人と三匹で行くことにする。
虹の琵琶湖の周辺には宿屋が一つあるだけらしい。
さらには宿屋の当日の予約は出来ないらしいので、着いてからの確認となる。
最悪はテントになるが、キャンプみたいでそれはそれで楽しそうだ。
まあ、予定通りに到着するとも分からないのに日にちを予約も出来ないのかと考えていたのだが、サラサから凄いお金持ちは一ヶ月間の期間で予約するらしいと聞いた。
何処にでも金に物を言わせるやつがいる。
そんな奴らと一緒にならないことを願いながら出発した。
もちろん乗り合い馬車もで出てないので、ハクバに馬車を引いてもらう。
馬車の中でエターナから聞いた話では、虹の琵琶湖では運が良ければ精霊に出逢えると言われてるらしい。なんでもユニコーンの姿をした精霊らしい。
俺はユニスをずっと見つめる。
見つめる。
ユニスは照れた。
「何故照れる?お前じゃないのか?」
俺の問いにユニスは違うよと首をふった。
「お前と同種なら会わない方がいいか?異端として仲間はずれにされていたんだろ?」
ユニスは再度首を横に振り、気にしないという素振りを見せた。
「まあ、何かあったら俺の傍にいるといい」
そう言いとユニスは俺の頬にスリスリしてきた。
それを見たテテも混ぜてと言わんばかりに顔をペロペロと舐め始める。
こうして馬車の中で自然とほっこりとしているとあっという間の虹の琵琶湖に着いた。
宿屋に向かい泊まれるか確認すると一部屋のみ空いていたので、その一部屋に三人で泊まることにした。
いずれ家族になるし問題ないよね?
朝日が昇る時に見れるとあるので、今日は宿屋で食事を楽しみ早くに寝ることにした。
早くに寝ることにした。
何故、2回言ったって?
旅行に来たら何故か人はテンションが上がる。
上がった先には性欲も上がる…。
テテ達が寝静まった後、俺は二人から襲われ…た。
負けてられないと俺も襲い返した結果、寝坊したのである。
まあ、翌日も予定はないので問題はないのだが転生前の記憶がある分、何故だか勿体ない気持ちにもなった。
まあ、それ以上に二人との絆を深めることができ、俺自身も幸せな気分だったので申し分ない。
気を取り直して今度こそ虹の琵琶湖を見ることにする。
翌日、朝日が昇るころに見に来たのだが…凄いの一言だった。
朝日が照らす光と霧が漂う空間に綺麗な虹が見えるのである。
「綺麗」
「素敵ね」
「ああ」
人間はあまりの光景を見た時に口数が少なくなるってのは本当だったのだな。
まあ、時間が経てば今の景色を思う存分話すのだろうが、今はこの光景を目に焼き付ける。
こんな素敵な景色を有り難う。
今の時を大切にするってやはり大事なのだとつくづく実感したのだった。
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