第75話 休息
宿屋に帰り俺は皆に話した。
「依頼は終了したけど、せっかく王都に来たのだから帰るのは3日後にしようと思う」
「何かすることでもあるんですか?」
「特にはないけど、人生いつ終わるか分からないから楽しめる時に楽しんだ方がいいと思ってね。俺は王都の劇を見てみたい」
「私も見てみたいです」
セツナ以外は興味深々だ。
「セツナはどうする?」
「そうだな、知り合いの所にでも顔を出してくる」
「了解。ちなみに明後日は骨董品や市場を見て周る予定だから気が向いたら…。」
こうしてセツナ以外の5人で翌日に劇を観に行った。
劇は今流行りらしく、ギリギリ座ることができた。
内容は聖女の国に魔族軍が襲来をしたところに勇者が助けに来ると言うお話。
そんなお話なのだが、内容が一切入ってこない。
何故なら勇者役の人が髪をかき上げるだけで女性の悲鳴が聞こえてくる。
喋っている時は大人しいのだが、それ以外の時は騒がしく集中できない。
楽しみ方は人それぞれで店側も容認しているのならこれが普通なのだろう。
「劇はどうだった?」
「聖女様を勇者様が助けるシーンが良かったです」
みんなは集中できたのね…。
「アランはどうだった?」
「こんな世界があるなんて驚きです。逆に今までの生活から急変して戸惑っています」
「何に戸惑う?」
「こんな良い暮らしをしていいのでしょうか?」
「アラン、これが普通なんだよ。ちなみにこれはいい暮らしとは言わないぞ。貴族達やお金持ちの商人なんかは凄い暮らしをしているぞ」
「そ、そうなんですね。僕には今の環境が幸せ過ぎていつか死ぬんじゃないかと思ってしまいます」
「あ、それ分かる。私もたまに不安になるもん」
「その内慣れるさ。人間は環境に適応する生き物だ。さらには欲深き生き物だ。だからこそ今の気持ちを忘れるなよ」
「はい」
「あ、そうだ。ついでに言っておくとお前達の人生だから好きに生きろよ。結婚やクランを抜けて旅をするのも全て自由だからな」
「えっ、ずっと居たらいけないのですか?」
「お前達がそれを選ぶなら、それがお前達の人生だから問題ないさ」
そう言うと何故か二人はほっとしていた。
「私の人生はミロード様のものですよ。2度も助けていただいたこの命を捧げていますから」
「エターナも気にせず自由に生きていいのに」
「これが私の選んだ道なのでいいですよね?」
「それなら…。そうだな、サラサと三人で幸せな家庭を作ろうな」
「えっ」
「きゃー」
「ミロード様、流石です」
エターナはボロボロと涙を流している。
やばい、待たせ過ぎたかな。
「う、嬉しいです。ずっと傍に居ていいのですね?」
「ああ、宜しく頼む」
皆が祝福をしてくれる。
たぶん昨日のアイリスのことがあったからだろう。今生きているこの瞬間を大切にしようと考えさせられた結果だ。
一途にずっと傍に居てくれるエターナとサラサに感謝しないとな。
そんなことを考えていたらキュイに頭を翼で叩かれた。
「そうだな、キュイやペルルもずっと一緒だな」
キュイは嬉しそうに顔にすり寄ってくる。
本当にキュイは可愛い。
我が子ができたらこんな感じなのかな?
この世界に来て本当に良かったと思える。
こうして1日目を楽しく過ごした。
2日目は市場や骨董品など珍しい物を探していく。
もちろん皆のお土産も一緒に買う予定だ。
今回の依頼でまた資金に余裕ができたからな。
フウカ用の投げ槍を作りたいし、いい物が見つかるといいな。
結果から言うと食材や調味料が充実した。
やはり装備や魔道具は望む物は見つからなかった。
もちろん使える物はあったが、無駄遣いする気にはなれなかっただけだ。
ただ情報で商業都市で来月オークションがあると聞いたので早く帰ろうと思う。
Aランク冒険者は入場資格をクリアしているそうなので見にいこうと思う。
まあ資金はあまりないので買えないだろうけど…。
休日を王都で満喫し楽しんだので商業都市に帰る。
流石に帰りの馬車は普通の馬車が用意されていた。
そうだよね、急ぎでもないのに帰りまで魔導馬車がでるはずないよね。
ついでに帰り道の途中に村での魔物の討伐依頼を受けている。
人数が増えすぎたので、今はすこしでも稼いでおかないと心配なのである。
基盤が整えればそれぞれの稼ぎがあるので大丈夫と思う。
こうして帰りはノンビリと帰ることにした。
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