第73話 15の呪い
魔導馬車のおかげもあって無事に王都シャインに到着した。
門番に依頼書と冒険者証を見せるとお待ち下さいと言われた。
しばらくして執事と思われる方がやって来て案内してくれるそうだ。
門番にまで話が通っているってことは相当だな。
だが、案内された場所は貴族街の端にある小さな家であった。
隠れ蓑?それともここで暮らしている?
家の中に入ると生活感溢れる様子から判る様に、誰かしらが住んでいるのは間違いなさそうだ。
執事に客間に案内され待っていると一人の女性がやってきた。
「遠いところから来ていただき有り難うございます。私はランカと申します」
「これは御丁寧に、私はAランク冒険者のミロードと申します。この度依頼を受けて参りました」
「あらあら冒険者さんなのに礼儀正しい方なのですね…ウフフ」
なんだろう、この人は天然に人を虜にするタイプなのだろうか。
見た目もブロンズの髪が特徴で人形のように整った顔をしている。
「有り難うございます。それで依頼の方をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「せっかちさんはダメですよ。もうすこしお話を楽しみましょう」
こう言われると付き合うしかない。
もしかしたら向こうも警戒して様子を見ているのかもしれないが…。
1時間も話しただろうか…そうすると見えてくることもある。
そう、この方は単純に会話を楽しんでいるだけだ。
「ごめんなさいね、冒険者さんと話す機会なんてあまりないので」
「そうなんですか?此度の依頼内容でしたら冒険者の治癒師なり受けそうな内容ですが?」
「夫が野蛮な見ず知らずの男性と会うのを嫌がりますので。ミロードさんはある方が信頼できる方だとしてやっと許可が下りたのよ。旦那の束縛も大変なのよ」
「まあ、それだけお綺麗だったら心配する気持ちも分かります」
「まあ、お上手だこと。私の子供も美人なのよ」
「そうなのですね。それは一度見てみたいですね」
「じゃあ、見に行きましょうか。ミロードさんだけついて来て下さいね」
「えっ」
返事を聞かずに行かれるので俺はついて行くしかない。
こうして2階にある部屋に入ると俺と同じくらいの女性が居た。
「お母さん、また連れてきたの?もう希望なんてないから自由に残りの人生好きにさせてって言ったでしょ」
「そうは言っても親としては最後まで諦めきれないの、分かって頂戴」
「どうせそこの男も治らないと分かった瞬間に、念のため体の隅々まで確認しますって言ってくるんでしょ?」
なんだろう、何もしてないのに嫌われている感じは…。
「あのー、私はどうしたらいいのでしょうか?」
「ごめんなさいね。依頼の話になるのですがこの娘を治してほしいのよ」
「お母さん本当に言ってる?私と同じくらいの年齢の奴に何が出来るって言うのよ」
「希望を捨てたんでしょう?なら試すぐらいはしてもいいでしょ?」
「いいけど服は脱がないわよ」
こうして二人は俺の方を見た。
「えっとー、何も理解してないのですが、何を治せばいいのですか?」
「あんた何も知らずにここに来たの?」
「依頼内容にも何を治すか書いてませんでしたので」
「使えないわね」
何故俺は罵られているのだろうか。
「そんなこと言わないのよ。この娘は15歳になる年までしか生きられない呪いを産まれながらに授かったのよ。それを治して欲しいのです」
「何で私だけがこんな人生を歩まなければいけないのよ」
「ちなみに15歳まではどのくらいの期間があるのでしょうか?」
「後1週間よ」
マジ?1週間で死んじゃうの?
そりゃー魔導馬車を手配するわけだ。
「今までの方は何か言ってましたか?」
「この呪いは神が与えた試練でしょう。私共では治すことは出来ませんしか皆言わないわよ」
産まれた時から…、神が与えた試練?
もしかしてスキルか?
俺はその娘のスキルを見た。
・《15のジャッジメント》
成人になるまでに呪いを解かないと死に至る。変わりに呪いを解くことが出来れば…。
なるほど、これが原因か。
「確かにスキルが関係している見たいですね」
「わかるの?」
「内容だけは…、ただ治し方が解りません。何か情報を知りませんか?」
「情報と言われても、他の方も治し方は解らないと言われまして」
「何かスキルに関した議事録や過去の文献はないですか?」
「それならありますが、貸出に時間がかかるかもしれません」
「時間がないのは知ってるでしょ?すぐに権力を使ってでも借りてきて下さい。私もそれまでは冒険者ギルドや図書館を調べて見ますので」
「分かりました」
そう言うとランカさんはすぐに走って言った。
「ねぇ、私は脱がなくていいの?」
「なんで脱ぐの?」
「脱がないと調べられないと言って治癒師や呪術師は体を調べて言ったわよ」
「君が可愛いからじゃない?原因がスキルならば体を調べたってわかるわけがない」
可愛いと言う言葉にすこしだけ反応しているように見える。
「そう…なんだ。あんたは私を治してくれるの?」
「最善の努力はするが、どうだろうな?」
「そこは俺に任せろって言う場面じゃないの?」
「嘘は嫌いでな。取り敢えず1週間の人生を楽しみな」
「そんなこと堂々と言われるのは初めてよ。ただ、嫌味に聞こえないのは何故かしら。むしろ清々しいわね」
ランカの娘アイリスは初めてミロードの前で微笑んだ。
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