第72話 依頼
それからの一ヶ月間は怒涛の如く過ぎていった。
子供達も覚えることでいっぱいだ。
ラビの料理屋にアルバイトとして入る者。
ダンジョンに入る者。
クランハウスの受付をターナに教わる者。
鍛冶師の元に勉強に行く者。
買い出しや家のことをする者。
子供達も何かしらの役割を与えている。
それとは別にフウカの教養と文字の勉強も行われる。
流石に行き成り多くのことを学ぶのはキツイかとも思えたが、皆生き生きとした顔つきで楽しんでいる。
やはり意欲のある奴らを選んで正解だったな。
ただその中でもサラサだけは桁違いの忙しさである。
子供達が学ぶ場所の交渉や冒険者ギルドとの仲介、さらにはクランハウスの運営など一人で担っている。
最近は学ぶ場所の交渉が落ち着いたので二名ほどサラサの下に子供をつけて学ばせている。
本当ならば元貴族のフウカをサラサの下に付けたいのだが、以外にも戦闘面で活躍しているので今はダンジョン組で活躍してもらっている。
フウカの《投げる》と《カエル》の組み合わせは反則に近い。
刃先の尖った槍を投げると一定のスピードで飛んで行く。
そこに《カエル》のスキルを使うことで武器が手元に戻ってくるのである。
魔力消費も少ないので、使い勝手がいいスキルである。
そのため俺はフウカ専用の武器を探している。
魔剣の効果が《貫通》《威力上昇》《スピード上昇》《頑丈》など使えそうな物を必死で探すしている。
もし見つかれば俺の《まぜる》で専用の武器を作る。
今は低階層なので大丈夫だが、今後を考えると戦力アップが望ましい。
武器も以前の戦争の報酬で頂いた物があるので壊れても大丈夫なので、フウカに思う存分投げろと言っている。
俺はサンと一緒に低階層を散歩する日々だが、サンにも任務を与えている。
エターナと一緒に奴隷商に行ってもらい、スキル鑑定で奴隷のスキルを調べてもらうことだ。
もちろん奴隷商にもエターナに新しい奴隷が入ったら見せてくれと言っている。
さらには優秀な欠損奴隷がいたら買うとも伝えている。
ここからは妥協はしない。
拠点があるのなら戦力を拡大していく。
ただ、欠損奴隷とは言え、優秀な者はそれなりの費用がかかるので資金稼ぎに必死である。
そんな矢先にサラサから破格の指名依頼がきたと言われた。
・依頼内容
聖魔法が使える者を募集。あるお方の体力回復や呪いの解除。
効果がなくても金貨5枚。効果があれば金貨50枚。解除に成功した場合金貨500枚。
(その他交通費や護衛費など負担と書かれている。)
聖魔法を使うだけで効果がなくても日本円で500万である。
ただ俺達の故郷のシャイン王国の王都まで行かないと行けない。
ちなみに俺が聖魔法を使えることを知られての指名依頼である。
まあ、スタンピードの時に自重なく使っているのでバレてるよね。
それに王都と言えばダンダンもいるし当然か。
隠すようなことでもないので俺は条件をつけて行くことにした。
依頼と護衛はクラン・フェニックスが承ることが条件とした。
無事承認されたのだが、向こうからも是非セツナ殿を護衛にお願いしますと速達便で書かれていた。
日々過ごす分以上の資金はダンジョンで稼いでいたので、いざ王都へ。
今回の向かうメンツはいつもとは違う。
・護衛
セツナ・リーリア・フウカ・アラン・エターナ
・護衛対象
ミロード
今サラサが抜けるのが一番不味いので今回はお留守番だ。
また、ミナミも王都に行きたいと言っていたが「お前が言い出したことだ…落ち着くまでうだうだ言ってないで子供達の面倒を見ろ」と言っておいた。
ナイトは流石に今回の依頼では場違いなのでミナミのサポートをしてもらう。
ついでにチロリとグレイスの面倒を見てダンジョンで食費を稼いでもらおう。
こうして俺達は王都へ向かった。
向かったのだが、貸し出された馬車は魔導馬車だった。
「この馬車って王家の貸出許可がいるんじゃなかった?」
エターナとフウカが頷いている。
「第4王女のセツナへの愛か?それとも違う方の便宜か?」
「流石に個人の私欲では許可がおりないと思います」
「やはりそうだよね。じゃあこの依頼は王家の依頼と思ったほうがいいな。セツナは大丈夫?」
「何がだ?」
「あまり王家を良く思っていないだろう?」
「まあ、良くは思っていないが今はどうでもいい。こうしてミロード様のおかげで楽しく生きているからな」
「そう、なら良かった。今の王家はどうなんだろうな?」
「評価は二分されています。貴族からの評価は高いですが民衆の評価は低いです」
「なら俺とは合わなさそうだな。Aランク冒険者って王家にはどうなの?」
「それ相応の体様が求められます。ただ、無理に言うことを聞かせる効力は持ち合わせておりません。まあ中には言うことを聞けと脅してくる貴族や王家もいますが…」
「効力がないとだけ分かれば十分だ、有り難う」
こうして王家の依頼と思われる故に慎重に行動をしようと決めたのであった。
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