第71話 フェニックス

その後の旅は順調に進んだ。


フウカとの約束通りに休憩をこまめにとりながら進む。


もちろん進行スピードは遅いので期間はかかるだろうが問題はない。


さらには疲れが溜まる頃に回復魔法を使っている。


フウカは回復魔法に気付いたようで、何故初日から使わないのよ?と言う目で見てきたが知らんぷりだ。


順調の旅にも一つだけ面倒なことがある。


それは魔物と盗賊だ。


子供達が大勢で歩いていれば、もちろんカモだと思って襲ってくる。


その度にセツナ、リーリア、ナイトの三人で討伐する。


さらに一匹の魔物がはぐれて襲ってきた場合はミナミが風魔法で撃退する。


三人の強さを証明しつつ、ミナミの存在感をアピールすることで今後の子供達との関係をスムーズにするためだ。


商業都市で基盤ができたら、ミナミ、ナイト、ターナが子供達の面倒を見ることになっている。


もちろん、多くの子供を助けたいと言ったミナミ本人が長となり、発言した言葉に責任をもってもらう。


ナイトとターナも共感し自らの意思でミナミのサポートをしたいと言ってくれた。


まあ、ナイトがいれば戦力的な部分も含めて大丈夫だろう。


旅の間も三人が積極的に面倒を見ながら他の者はサポートのみをしている。


俺は別で子供達のスキルを確認しながら活用方法を模索する。


一ヶ月以上の旅なのでいろいろと試すことで有意義な時間を使っている。


さらには寝る前に子供達全員に魔力操作の練習もさせている。

魔法のスキルが無かろうが、隠れた才能をもっている子供もいるはずだ。


子供達は何をするにも興味津々だ。


自分達の可能性を見つけることが嬉しくてしょうがない見たいだ。


2週間も過ぎた頃には、料理やテントなどの夜営の準備は全て子供達がやっている。


今では10歳以下の子供達も一緒に歩いて体力をつけたいと言ってくるほどだ。


やはり子供の成長は早い。


水を吸収するかの様に覚えていく。


セツナとナイトが魔物の剥ぎ取りを行うと興味がある子供達はずっと見ている。


ミナミやリーリアが魔法を使えば、それを見てイメージさせていく。


サラサが魔物や冒険者の知識を喋るだけで子供達が集まり耳を傾ける。


ターナが雑用をしていると一緒になって手伝う。


意識や意欲のせいなのか、本当に優秀な子達だ。


ただ、5歳の女の子(サン)だけは何故か俺にベッタリである。


まだ小さいからお父さんのことでも思い出しているのかもしれない。


俺が胡坐をかいているとその上に乗ってくる。


別に遊んでと騒ぐこともなく、胡坐の上で大人しくしている。


うん、可愛いな…よしよし。


ターナがミロード様の上はダメです、私達の上にしなさいと言っても聞く耳をもたない。


強引にどかそうとしたら泣くじゃくるので、今はそのままでいいよと言っている。


傍に居れば大人しいので本当に可愛い奴である。


なんか初めの頃のペルルに似ているなと思ってしまった。


そのことをペルルに伝えると何故か飛び蹴りされた。


ツンデレなのか、それ以来はペルルとサンは仲良しである。


俺の傍でいつも何かをしていると思ったら真似をしてるようだ。


仕草や表情、そして魔力操作や魔法など全てを形から真似している。


一ヶ月が経ったころ、なんとサンは水の不死鳥を発動させた。


確かにサンのスキルには可能性が秘められていたが、まさか俺のスキルを真似できるとは…。


そう、サンのスキルは《まねっこ》である。


まさかスキルをマネ出来るとは思わなかった。


ただ、側にいる者のスキルを理解した上で一つだけしかマネできないようだ。


同時に二つのスキルは無理みたいである。


まあ、それだけでも凄いことである。


俺の虹の指輪のスキルを理解して真似たのだから…。


虹のスキルは7つのスキルを使えるチートスキルだ。それを覚えるとは…。

もちろん全ての魔法が今は使える訳ではない。


もちろん可能性を感じたからこそずっと傍においておいたのだが…想像以上の成果である。


5歳児の発想と想像力を舐めていたよ。


そうは言っても、やはり虹の不死鳥は真似できないそうだ。


こうして子供達の可能性を引き出しながら商業都市へと到着した。


まずは自宅に戻り子供達全員にお風呂に入らせる。


もちろんクリーンを使用しているが匂いまではとれない。


ターナ達に順番に入れてもらう。


その間に俺はクランの設立へ。


サラサとミナミは中古の物件を見に行った。


Aランク冒険者とあってクランの設立はすぐに終わった。


注意事項などのパンフレットをもらいすぐにサラサ達と合流する。

ちなみにクランの名前は「フェニックス」である。


その後俺はペルルを召喚して、サラサ達の元へ案内してもらい内見を終わらせた。


裏通りの店舗として使っていた3階建ての物件を購入した。


一階は店舗だが、2階・3階は住宅スペースとなっていて大人数でも問題ない。


さらにはクランハウスをギルドに申請して借りる手筈となっている。


大まかな流れは以上だが、資金の予備が無くなった。


ご飯だけは旅の途中で魔物の肉を調達しているので大丈夫であるが、子供達には野菜も食べさせないと…。


お米はラビから大量に買うことで逆に感謝された。


資金を調達するために俺達は3チームに分けてダンジョンに入り浸る。


Aパーティ→ミロード・サン

Bパーティ→セツナ・リーリア

Cパーティ→ミナミ・ナイト・アラン・フウカ・グレイス・チロリ


3パーティ目は優秀な子供達を含めた部隊なので低階層でのレベル上げも兼ねてである。


えっ、俺の所にサンがいるって?

ペルルに面倒見てもらいながらパーティを組んでのレベリングだ。

サンはまだ5歳なので魔力量を伸ばせば伸ばすほどに無限の可能性が広がる。


こうして忙しい日々の幕開けとなった。






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