第69話 閑話 フウカ2
約束通りに1週間後に彼らはまた来てくれた。
それにしても綺麗な女性ばかりだなー。
周りの男の子達も目が釘付けである。
そんなことはどうでもいいか。
この後はどうするんだろうと考えていたら男性が話し出した。
「チャンスは一度キリだ。自分に何が出来るのか?どうしたいのかを列に並んだ先の大人に伝えろ。全員が伝えた後にご飯にしよう」
そう言うと私と同じくらいの年の青年はやる気のある子達を呼び列に誘導していった。
各言う私も彼の所に行き、何処に並ぶか聞いて始めの一歩を踏み出した。
列の先には黒髪の女性が担当していた。
私の番となり話をする。
「私の名前はミナミよ。貴方の名前は?」
「フウカです」
「列に並んだと言うことは今の生活から抜け出したいと思ってる?
」
「はい、もうこんな生活は嫌です」
「では、貴方の出来ることを教えてくれる?もしも得意なことがなければ情熱を語ってくれてもいいわよ」
「先に一つお伺いしてもいいですか?」
「いいわよ」
「何故、皆のスキルを聞かないのですか?」
「ここに居る子供達はスキルが優秀じゃないと言われてきたのでしょ?そして今に至ると聞いているわ。違う?」
「そ、そう聞いています」
その女性はにこやかに微笑みながら喋りだした。
何て優しい笑みなんだろう。私が男なら一瞬で惚れる自信がある。
「じゃあ、そのスキルが役に立たないって誰が決めたの?スキルには使い方次第でどんな可能性もあるの」
そうなのかな?じゃあ、私の《投げる》と《カエル》も使い方次第では…。
流石にそんなことないよね。物を投げることなんて誰にでもできるし、もう一つはスキルが発動したことさえないのに…。
家に帰るって意味のカエルだったら最悪だ。こんなスキルでも面倒見てくれるのかな?
「その可能性があるといいな…」
「では、質問の答えを聞かせてくれる?」
「はい。私は礼儀や作法などが一般の人よりも出来ますので、受付や店員、または交渉ごとなどに役に立つと思います。また、人並みに料理や家事も出来るので何でもやりますので、どうか私にチャンスを下さい」
そう言い終わると私は自然に頭を下げていた。
「合格よ。この証を持って明日城門前に来なさい。時間は日の出が上がり2回目の鐘が鳴る時刻よ」
えっ、合格って言った?何も特別なことを言っていなかったのになんで?
私は自然と涙が零れるほどに嬉しかった。
「ご、ごうかく?」
「そうよ。頑張って自らの意思でよく一歩目を踏み出したわね」
ミナミさんはそう言うと軽く頭を撫でてくれた。
この方達は何て温かいのだろう。
もしこれで騙されでもしたら、絶対にもう誰も信用できなくなるわ。
その後は皆で料理を囲み楽しんだ。
私も明日から一員となるのでお手伝いする旨を伝えたのだが、明日からのために体力を回復させなさいと言われた。
私達と見えてる景色が違うのだろう。
あの方達は何処まで先を考えているのだろう?
そんなことを考えながら眠りについた。
翌日。
私は日の出が上がる前に目が覚めた。
こんなにワクワクするのはいつ以来だろう。
居ても立っても居られずに鐘の音がなる前に城門に来ていた。
やはり私と同じような子もいるわね。
そうよね、皆言われてきた訳ではなく、自らの意思で望んだのだから当然よね。
孤児の子供達をこんなにやる気にさせるあの方達は何者なんだろう?
沢山の疑問とこれからのワクワクを考えていたら、ついに2回目の鐘の音がなった。
彼らは2台の馬車を引き連れてやってきた。
門番と話をつけていたのか、すんなりと通ることが出来た。
都市の外に出るといろいろと説明された。
何処に行くのか?
どのくらいかかるのか?
旅の間に何をして、何を覚えるのかなどなど…。
初日はキツイと思うから頑張ってとも言われた。
こうして小さい子供は馬車に乗せられ10歳以上の子供は皆歩いて商業都市に向かう。
2時間経ったころ、休憩と供に朝ごはんが配られた。
パンと温かいスープだった。
えっ、調理もしてないのに何故温かいの?
何処からだした?
私がビックリしているとミナミさんが「アイテムボックスよ」と教えてくれた。
そ、そうだよね。私達にチャンスをくれるような人なんだから凄い人達なのは当然よね。
さらにミナミさんは「そんなんで驚いていたらこれから身がもたないわよ」と笑いながら言っていた。
そんなこと?アイテムボックスなんて凄いスキルで私にとっては羨ましいの一言なのにと思ってしまう。
その後、休憩が終わり再度出発する。
それを昼食と夕食時に繰り返しそれ以外はひたすら歩く。
昼までは良かったのだが、それ以降は子供達は歩くだけで必死である。
数人が馬車で休みを繰り返しながらなんとか一日が終了した。
こんなのが毎日続くと考えると他の子共達は限界が来るわ。
私はどうにか出来ないか考えたけど、私にはどうすることも出来ない。
チャンスをくれたあの方ならば何とかしてくれるかも…。
そう思うと自然と足が勝手に歩き出していた。
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