第68話 閑話 フウカ

私の名前はフウカ・ラングナード。


ラングナードの街を治めている貴族の子供である。


まあ、愛人の子供なので扱いは平民以上貴族未満ってところね。


ところが母が亡くなってから私の環境は変わった。


事あるごとに本家の子供から嫌がらせやセクハラを受けるようになった。


ギリギリの所で逃げているのだが、このままここにいたら危ないだろう。


そんな矢先にお父様から縁談の話が舞い込んだ。


ただ、相手の年齢は48歳の伯爵家当主だ。


何人もの奥さんや子供もいる当主が何故今さら私見たいな子供を要求する?


そんな時にメイド達の噂を聞いた。


縁談相手はどうやらロリコンで私の体が目当てだそうだ。


私は子供ながらに発育もいいのに、なんで私なのよって思ってしまう。


今はそんなことはどうでもいいわね。


今後のことを考える。


もし結婚するならば暮らす所には困らないだろうが、私の人生は何の楽しみもないだろう。


ただ、正妻の奥様に嫌われたら居場所は無いと言えるだろう。


まあ確実に嫌われるだろう…が。


結婚しない場合はどうだろうか?


まあ確実に縁を切られて出て行くことになるだろう。


最善策はないかひたすら考える。


それならばこちらから結婚は出来ないと手紙を残した上で必要な物を持って逃げるのはどうだろうか?


どの道辛い未来しかないのならば可能性に賭けるしかない。


その考えに至ってからの私の行動は早かった。


どの国に逃げるのか?

どのルートで行くのか?

何を持って行くのか?

さらには高価で他の国で売れる物をとにかく探す。


何とか縁談の返答期日までに用意が間に合ったので、私はすぐさま逃げ出した。


追ってがくる気配はないので逃げ切ったのだろう。


馬車を乗り直ぐ日々を2ヶ月もの間繰り返し、ようやく魔法大国に到着した。


無事に入国まで出来たが資金が心元ない。


宝石などを途中で売り捌きながら2ヶ月もの旅の費用にしていたので当然である。



ちなみに魔法大陸にしたのには理由がある。


何でも噂では孤児でも生存率が高く、何とか生きていけると聞いたからだ。


孤児から這い上がり成功した者も多数いるのだとか…。


普通は孤児の多くは餓死をするか、一か八かの賭けにでて死亡するかが多いらしい。


その情報を頼りに来たはいいが勝手がわからない。


今は残りの資金を大切に使いながら過ごしていく。


もちろん宿屋で毎日暮らす余裕はないので食事だけ買って日々を過ごす。


気付けば孤児のいる場所で一緒に同じような子供達と過ごしていた。



2年後。


とっくに資金は無くなり孤児とまったく同じ生活となった。


花を売り、そのお金で屋台の残り物を売ってもらう日々。


私は何のために家をでたのだろう?


あのまま結婚していた方が良かったのだろうか?


いいえ、そんなことはない。


あんなオヤジに体を売るぐらいなら…。


その感情だけは強く想っていたので未だに私は体を売っていない。


そこの一線だけはずっと守っている。


だからいつもひもじいよぉー。今の生活は本当にシンドイ。


何とかしたいが私には魔法の才能はない。


この国ではそれ以外のことは関係ないとばかりに相手にされない。


早くに孤児の場所で寝ていたのも運が悪かった。


孤児と思われ何処も雇ってくれなかった。


せっかく貴族の勉強や教養を頑張って来たのに何も通用しない。


私の考えが甘かったのかな…。



そんなことを考えながらさらに一年が経った。


私は考えることも諦めかけていた。


そんな時、綺麗な服を着た二人組の男性が私達孤児の場所へと現れた。


その男性は子供の花を優しく買ってくれた後、全員にご飯をやるから情報を教えてくれと言ってきた。


後日、本当に大量のご飯の材料を持ってきて作り出した。


美味しい匂いに釣られて、情報くらいならいいかと思いご飯をいただいた。


スープが胃の中を包み込むように優しい味だった。


こんなご飯いつぶりだろう…美味しいよ~。


自然と涙が溢れる。


この境遇に慣れすぎていた。やはり普通の生活がしたいと心から思えた。


やはり空腹で何も考えられなかったのだと今更ながら気づいた。


そして、食事が終わるとその人達は帰ろうとした。


その時私達と同じ子供が声を掛けた。


「また来てくれる?」


私と同じくらいの年の青年は答えた。


「いいか良く聞きな。無償で毎度毎度恵んで貰えると思うな。」


「食事が欲しいなら対価を示すしかない。全員で一つのことでもいいし、個人でこれならやれるってことでもいいから考えておけ」


そして、1週間後にまた来ると言って帰って行った。


そうだよね、無償でずっと施しをしてくれる人なんていないよね。


逆に言えば子供を騙そうとはせずに正直に話してくれている?


何故かあの方達は信じれるような気がする。


そんな気持ちから私は前を向いて考えるようになった。


私の出来ることってなんだろう?


対価を示すことが出来たら、この生活からも抜けられるの?


そんなことを考えながら一週間はあっと言う間に過ぎていった。









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