第64話 優劣

冒険者ギルドで受付を終え依頼などを確認する。


「魔石の収穫依頼ばっかしだね」


「そうね。討伐依頼じゃなく魔石のランク事に依頼達成って感じね」


「他は魔法師の雑用の依頼が多いのかな」


「そうね。後は研究用の素材収集かしら」


なるほど、だから先程の冒険者達は魔法師のお抱えの冒険者になったのか。


「ねぇ、ねぇ、魔法師と魔法使いって何が違うの?」


「魔法大国では魔法使いの上の位が魔法師と呼んでいるそうよ」


「へぇー、その上もあるの?」


「ええ。頂点に君臨する10名に魔導士の称号を与えられるそうよ」


「その基準は?強さとか?」


「いえ、各ジャンルに合わせた称号になってるそうよ。研究や強さや魔道具開発など様々ね」


「流石は魔法大国と言ったところかな。冒険者ギルドが寂れているのにも納得がいくよ」


その話を聞いていた受付嬢がやってきた。


「聞き捨てなりません。今の言葉を撤回して下さい」


おー、誇りを持った人もちゃんと居るんだな。


「これは失礼、申し訳ない」


「えっ、あっ、いや、謝ってもらえたなら大丈夫です」


謝ってもらえるとは思っていなかったのだろう。


「よければこの国についていろいろと教えてもらえませんか?」


「もちろんと言いたいのですが、業務に追われていますので簡単にでも宜しいでしょうか?」


「それならご飯でも奢りますので、内の女性陣にでも詳しく教えていただけないでしょうか?」


「えっ、はい。貴方はいいのですか?」


「女性だけの方が話しやすいでしょうから」


「わかりました」


失礼な態度の後だったので、敢えて丁寧語で話したかいがあったぜ。


これは高感度が上がったはずだ。情報も手に入るし一石二鳥だ。


ついでに評判の宿屋を教えてもらってそこに泊まることにした。



サラサ達はギルド職員とご飯に行っているので、俺はセツナと都市を見て周る。


冒険者ギルド方面には夜の店があるのか、逆の東側はどうなってるんだろう?


中央通りの商店街などを抜け、東側に歩いて行く。


最初は住宅街だったのだが、奥に行くにつれて貧民街と言ったところだろうか。


これ以上奥に行くとトラブルになりそうな予感がする。


浮浪者がこちらを警戒してるようにも見える。


戻ろうとした時、一人の少女が声をかけてきた。


「あ、あのー、花を買ってくれませんか?」


薄汚れた服から見える手足が尋常じゃなく痩せ細っている。


大国ともなれば貧富の差が凄いのだろう。


「いくらかな?」


「銅貨一枚です」


俺は銅貨1枚を渡して花を買った。


女の子は屋台の方向へ走って行った。


うん、今日のご飯ぐらいは食べれるだろう。


そんなことを考えていたら、ぞろぞろと子供から大人まで数十人に囲まれた。


「何の用かな?」


「あ、有り金全部置いていけ。さもないと…。」


「さもないとどうなるの?」


「俺達が餓死するぞ」


うん、確かに餓死しそうだな。


「なぁ、ここに居る全員に飯を奢ってやるから都市の情報を教えてくれないか?」


「い、いいのか?」


「ああ。強盗なら容赦しなかったが、正直に頑張って生きてるみたいだからな」


「前に強盗してた悪い連中が捕まってから皆で考えたんだ」


へぇー、優しい奴らの同情心を逆手にとって上手い考えだ。


「そうだな、今はこれを皆で食べておけ。明日食材を大量に買って料理を作ってやるから待ってろ」


「ほ、本当に明日も来てくれるんだな?」


「ああ、その時に話すネタでも考えてな」


こうして俺とセツナは宿屋に帰って皆と情報を共有した。



ギルド嬢の情報はこんな感じだった。


魔法使いが正義の国である。


剣技や武術は野蛮で時代遅れである。


そのため冒険者を見下す魔法使いが多いのだとか。


魔法に優れた者は喝采を受け、それ以外は研究の肥やしだと思っているのだとか…。


凄い言われようだな。これはギルド嬢の偏見ではと思ってしまう。


各地から優秀な魔法使いを集め、帝国の権力の抑止力として日々研鑽しているのだとか。


なので、身分や種族は関係なく実力(魔法)主義である。


また、能力のない者は雑用としか思っていないらしく貧富の格差が大きいそうだ。


以外とあってるのかも…。


俺達の情報も説明した後、明日のことを伝えた。


もちろん強制ではないので来たい者だけと言ったのだが全員来るそうだ。


本当に性根がいい奴ばかりだ。



翌日、大量の食材を買い込んで向かった。


子供達の状態を考慮してスープや雑炊などを大量に作っていく。


食べ物の匂いに釣られて、次から次へと人が集まってくる。


昨日の子達も集まりまずは食事にする。


「おかわりはあるからゆっくり食えよ」


無我夢中で食べる子供達。


よく見ると大人が少ないな。


大人達は遠慮がちに食べている…。


まてよ、よく見ると汚い恰好をして痩せてはいるが痩せ細ってはいない…、どういうことだ?


何か事情があるのか、それとも仕組みがあるのか…。


まあ考えるよりも子供達にまずは情報を聞こうかな。


こうして俺達は食べている子供達に質問をしていった。






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