第63話 ノギス
ナイトが仲間に加わったことでタンク役が揃った。
まあ、戦闘の痛みを嫌がっていたのでタンク役を断られると思っていたのだが「女性のナイトなので頑張ります」と言いながら張り切っていた。
人は不思議な生き物である。
不老不死のタンクなんて極めればチートではないだろうか?
ナイト曰くダメージの蓄積次第で骨の原型が保てなくなりバラバラになるそうだ。
その後時間と共に回復してスケルトンに戻るそうだが原理は良くわからないとのこと。
やはり魔法が存在する異世界だけあって不思議なことは多々ある。
そんなことを考えながら再度魔法大国に向けて出発する。
もちろん依頼報酬とこの町の名産を楽しませてもらった。
馬車の中ではミナミが料理の話で盛り上がっている。
今回の町の名産はジャガイモで郷土料理は肉じゃがに似た料理だった。
違う点は始めにジャガイモと野菜を蒸してから下味をつけ、その後煮込んでいた点だ。
はっきし言ってめちゃくちゃ美味かった。
食感が違うので肉じゃがと言っていいか判らないが、見た目は肉じゃがだった。
ナイトもコグマの姿でむしゃむしゃと食べていたので安心である。
そんな話をしている中で俺は違うことを考えていた。
各国に転生者が散らばっている可能性が高い中、どうして俺の行く先々で出会うのだろうか?
ただの偶然ならばいいが…。
トラブルだけはゴメンである。
まあ、取り敢えず一つの危険性だけでも消えたことは有り難い。
絶対に不老不死を望む者がチートスキルを経て、好き放題している絵図を想像していたからだ。
行く行くは神々との戦闘まで起きるのではと考えていいたのだが、考えすぎだったようだ。
いろんな絵図の中の一つが消えただけなので俺自身は慎重に行動するに限る。
むしろ最大の懸念は転生者同士の国同士の戦いに巻き込まれたくないので全員で移動しているのだから。
そんなことを考えていると魔法大国ノギスに着いた。
ノギスの城壁を見渡す限り、今までの国と違うことがわかる。
城壁からして金属なのでは?と思うほどに突出している。
さらには城壁の所々に魔道具が埋め込まれているみたいだ。
ヤバイくらいに今までの国とはレベルが違う。
城門から入国に関しては幾つもの列がある。
庶民用・冒険者用・貴族用・商人用などに分かれている。
俺達は全員冒険者カードは作っているので、冒険者用の列に並ぶ。
並ぶこと30分、俺達の順番がきた。
「ようこそ魔法大国ノギスへ。この国は初めてですか?」
「はい。俺達はどうすればいい?」
「では、こちらの機械に冒険者証をかざし、もう一つの手をこちらの水晶に手を触れて下さい」
俺は言われるがままにした。
「本人で間違いないのでお入り下さい。また、奴隷や従魔に関しては書類か契約印を見せていただきます」
こうして皆無事に入国したのだが、この国だけは技術のレベルが違いすぎる。
魔法大国と言われることだけはある。中に入って見ても道や外灯など至る所に魔石や魔道具が使われている。
「これは凄いな」
「こんなに凄い国なら料理も美味しいのかしら?」
「お前はぶれなくていいな」
「エッヘン」
「いや、褒めてない」
ミナミはナイトにポンポンと叩かれ同情されていた。
取り敢えず冒険者ギルドに向かう。
城門をくぐって真っ直ぐ行くと魔法学院や研究者棟に行くらしいが、冒険者ギルドは西の外れにあるそうだ。
中央通りから離れて行くにつれて見慣れた光景が広がってゆく。
なるほどー、流石に国全体を魔道具で賄うことはできないんだな。
離れれば離れるほど住宅や道がみすぼらしくなっていく。
まあ、そうは言っても石畳が無くなり通常の整地された土に変わるだけである。
ある意味安心する。
近未来的な国だったらどうしようかと考えていたが、見栄や最先端の意地が見える範囲で着飾っているだけのようだ。
こうして西の外れにある冒険者ギルドに着いた。
ギルドの中に入りたいのだが、入り口手前で誰かが揉めている。
「ま、待ってくれ。俺も一緒に連れていってくれ、仲間だろ?」
「だから、お前はパーティを首だと言っただろう。俺達は魔法師の専属冒険者になるんだよ。人数指定があるって言っただろう」
「なんでだよ、ずっと一緒に冒険してた仲じゃないか」
「ああ。でもお前はいつも役立たずだったがな」
「そうかもしれないが、雑用まで全てこなしていただろうが」
「雑用なんてだれでも出来るんだよ。じゃあな」
痴話喧嘩なようなので、そっと回ってから冒険者ギルドに入ろうとする。
うん、無事に絡まれずに冒険者ギルドに入れたのだが、ギルドの中の感じははっきり言ってガラが悪い。
冒険者ギルドと併設している酒場で昼からお酒に浸っている風貌の悪い冒険者ばかりだ。
そんな酔っ払いの横を通って行くのだから、必然と絡まれる。
「ヒゥー、可愛いねぇ。姉ちゃんお酌してくれよ」
ついに異世界お決まりの出来事がきた。
俺はワクワクしながら様子を見ようとしたのだが、セツナが一歩前に出て人睨みした。
「お、男連れかよ。な、ならしょうがないな」
チンピラはそう言いながら俯き酒をチビチビと飲みだした。
えっ、もう終わり?チンピラ頑張れよ。
普通はここから喧嘩に発展するんじゃないの?
俺の期待を返せ。
そんなことを考えていたのだが、サラサに心を見透かされたようで頬っぺたをつねられた。
「顔が喜んだり落ち込んだり忙しそうね」
「そ、そんなことないよ。さぁ、受け付けに行こう」
俺は逃げるように受け付けに行くのであった。
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