第60話 疑心暗鬼
今までは貴族の脅威があるため急いでAランク冒険者に上がったが、脅威が無くなったので急いで旅にでる必要はないのではないだろうか?
もちろん魔物がいる世界で力をつけることは大事だが、一度原点を見つめ直す必要があると考えた。
日本に居る時と違って異世界は情報が手に入り難い。
一度人口が多い帝国の中心部に行く方が今後のためになるのではないかと考えた。
現在の商業都市は人口300万と言われている。
それが帝国ともなると3憶の人口が居ると言われ、その中心部の帝都では3000万の人々が暮らしているらしい。
現在の商業都市の10倍である。
俺が転生した国、シャイン王国も8000万ほどの国ではあるが帝国には及ばない。
さらに帝国に向かう途中に魔法大国と呼ばれるマジリク王国に寄ることもできる。
残念ながらドワーフの国の鍛冶の町は逆方向なので皆と相談して決めようと思う。
晩御飯を食べながら先程の内容を伝えた。
「急ぐ旅でもないので皆で決めようと思うのでどちらがいいか手を上げてね。
もちろんそれ以外に行きたいところがあれば遠慮なく言ってね」
こうして皆に聞いたところ、魔法大国に行ってみたいと言う結果になった。
情報と言う観点でも研究が盛んな魔法大国を一度見てみた方がいいと言われた。
こうして予定を変更して魔法大国に行くことが決まったが、急ぐ必要もないので商業都市でしか出来ないことや情報を集めてから出発することにした。
ダンジョン攻略も考えたのだが、ダンジョンは無数にあるのでこだわらないことにした。
心に余裕ができたことで様々な視点から自身を見つめ直す切っ掛けとなった。
もしかしたら小説などで憧れていた内容を俺は思い描いていたのかもしれない。
その知識と願望が仇となって神様によって誘導されていた可能性がある。
今は胸のつっかえが無くなり、生きる為の最善策と楽しむための最善策を模索しながら進んでいる最中である。
これも全てキュイが仲間となり、サラサ達が幸せをくれたおかげである。
キュイが何者であるかは定かではないが、この俺の未来図の鍵を握っている気がしてならない。
また、ミナミとは別の転生者を見つけることが出来れば何かが分かる気がする。
そんなことを考えながら寝るのだが、最近は両隣りにいつも二人が一緒に寝ている。
とても嬉しいのだが、以外と寝返りをうてないのは辛いものだとしみじみと感じた。
その後もミナミと異世界の話を沢山した。
「俺達は何故異世界に呼ばれたと思う?」
「えっ、自身の意思で異世界に来たよね?」
「そうだけど、そうじゃない。問いかけがあったってことは向こうが最初に呼ぼうとしたことになる」
「そっか。私は日本にいた時よりも幸せになれると思ったから来たのに始めは散々で考える余裕もなかったわ」
「今は来てよかったと思うか?」
「思う。まあ、ミロード様のおかげだけどね」
「様は要らないんだけど。ちなみに今後は何かしたいことはある?」
「沢山食べれる環境になって、思いっきり走れるようになったのにもっと走れと心が訴えている感じがたまにするの」
「その走れってのはどう言う意味?」
「わからない。わからないけど前に突き進むような感覚?」
以前の俺と同じか…。
やはり何かがあるな。
まてよ、この点とあの点を結んで線にすると…繋がる絵図は?
ちっ、この考えがもしも合っていたら最悪だな。
他の転生者がバカでないことを願うばかりである。
人の欲望は果てしない。
仮に大金が急遽入ってきたなら貴方ならどうする?
始めは貯めておくと考える人も多いだろう。
だが、気持ちが大きくなるにつれて少しぐらいならと考えるようになる。
その少しが次第に当たり前となっていく。
その日常が当たり前となりさらにお金を欲する。
地位や名誉も同じである。
上を見ればキリがないのに欲望がさらに私欲を駆り立てる。
その結果、一時の快楽を忘れることが出来ず、過去の栄光を引きずって裕福な生活を抜け出せなくなる。
待っているのは破滅の道だと言うのに。
何が言いたいかと言うと自身を制御できる人間こそが未来図を鮮明に描くことができるのだ。
もちろん願望や欲望の先に一握りの成功者はいるだろう。
ずっと勝負に勝ち続けることで無限の富を得る者も確かにいるだろう…。
最初の神の言葉を思い出して欲しい。
「ここには何かを熱望する程の想いを持った者が訪れるはず」
この言葉を意味するならば、何かしらの願望や欲望を持った人間が集められたと言うことだ。
そんな人間に一つのスキルを選ばせるとどうなる?
願望ならばいい。その願望に向かったスキルかその趣向を考えたスキルを選ぶだろうから。
逆に欲望なら危険だ。欲望に飲み込まれなれなければいいが…。
神は何かを試しているはず。
そして、欲望に飲まれないようにマイナスの要素を念頭に入れさせたのだろう。
それを踏まえた上で神はこう言ったはずだ。
「地獄の謳歌の幕開け」と…。
だが、これだけでは最終段階へと誘うピースが足りない。
後一つの情報が分かれば…、答えに辿り着ける気がする。
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