第61話 魔法大国

考えても俺自身は己の道を突き進むと決めた。


俺が望む物は小さな幸せを探す旅と大切な者の笑顔である。


小さな幸せが何かって?


それは旅の途中に偶然出会えた綺麗な景色や町や村の美味しい郷土料理でもいい。


日々生きていくなかで、その一つ一つの出会いや出来事が幸せに繋がることを大切にしたいと思う。


そして、自分の好きな道の途中で俺のために付いてきてくれる優しき仲間達と一緒に笑い合える日常があるからこそ温かくなれると実感した。


本当にエターナやサラサ達に感謝である。


こうして皆と一緒にのんびりと買い出しや情報を集めながら出発の準備を行った。


いつこの都市に戻るかも分からないのでターナにその旨を伝えると一緒に来たいと言ってくれた。


なので皆で一緒に旅に出ることにした。


家はラビに無償で貸す代わりに税金だけ宜しくと言っておいた。


ちなみにラビの店の純利益の20%が俺の冒険者ギルドに振り込まれることになっている。


赤字になると店を閉店させる条件を契約魔法で結び、後は好きにしていいよと伝えておいた。もちろん店の状況が変化しそうなら冒険者ギルド経由に手紙を出しておいてと伝えている。


ラビはすこし寂しそうだが、故郷のライスを私が頑張って料理して売るのと気合いを入れ直していた。


こうして全ての準備が整ったことでついに出発する。


目指すは魔法大国。


また国を越えての旅なので長い馬車旅になりそうだ。



馬車の中で俺はセツナに聞いた。


「そう言えばツバキギルド長と進展はなかったの?」


「特にはないな。俺も彼女も長寿の種族だから急ぐことはしないさ」


「その言い回しだとセツナも少しは興味があるのかな?」


「もちろん綺麗な女性だからな。ただ、人に騙された経験が俺を慎重にさせるみたいでな」


「そっかー。まあセツナの人生だから相方ができた時は教えてくれよ」


「ああ。ただ嫁ができても一緒に付いていく予定だけどな」


俺はその言葉にビックリする。


「えっ、嫁さんの国を離れて大丈夫なの?」


「その言葉をミロード様が言うか?」


ふと考える。


あっ、サラサとエターナの故郷を離れて俺は遠慮なく旅してるや。


「サラサとエターナは大丈夫なの?」


「今更よね。私は愛人の子だし問題ないわ。それにお父様も貴方を気に入ってるから大丈夫よ」


「私の実家も大丈夫です。スキルが進化した時に両親と話し合っておりますので。それに町を救ってくれた殿方を逃すなよと念を押されて送りだしてくれましたので…」


流石は異世界だ。


「そ、そうなんだ。今更だけど何かあったら遠慮なく言ってね」


二人は笑いながら頷いてくれた。


「リーリアは一緒の旅で良かったのか?奴隷から解放することも視野に入れておいたのに」


「私は今の環境に幸せを感じています。うーちゃんが側に居てくれて皆と一緒に会話できる日常が本当に幸せです。それにミロード様と一緒にいると今まで見たことない景色が沢山見れるのです」


「あ、それわかる。」


「確かに、そうかもな」


「私の町を救ってくれた景色は一生忘れないと思います」


それは奇跡的な景色のほうだよね?そう簡単に奇跡は起きないからね。


「たまたまだよ。俺は皆と楽しく旅出来ればそれでいいさ」


「美味しい物食べたい」


「そうだな、旅の途中の村々で郷土料理を味わってみよう」


ミナミのおかげで賑やかで助かる。


それに可愛いもふもふ達が側に居るだけで旅の疲れも癒される。


こうして順調に馬車は進むのだが、長い道のりなのでいろんな出来事に遭遇する。


馬車の前輪が壊れて途方に暮れている者や盗賊から命からがら逃げてくる者までいた。


近くの村まで運んであげたり予備の部品があれば提供しながら旅を続ける。


なんだかんだで心に余裕があるからこそ親身になってしまう。


ただ、一度だけ騙されたこともある。


盗賊から逃げてきたと言う破れた服を着た女性を乗せて次の村に送っていたのだが途中に盗賊に囲まれ、馬車の中ではその女性がリーリアがを人質にとったのだ…。


何処にナイフを隠していたのと考えていたらすでに物事は終わっていた。


うん、セツナの抜剣は早かったとだけ言っておこう。


馬車を囲んでいた盗賊に対しても皆は運動だーと言って襲い掛かっていった。


なんか盗賊の方が可哀そうに思えるほどに瞬殺していた。


盗賊を運ぶのに時間がかかったり、盗賊に懸賞金がかかっていて褒賞を貰うのに時間がかかったりしながらも旅を楽しんでいる。


そんな矢先に懸賞金を貰った町から頼み事をされた。


ギルド経由で頼まれたので、今はギルド長と話をしている。


「Aランクの冒険者と見込んで頼みたい」


「前置きはいいので内容を聞かせてもらってもいい?」


「わかった。この町の西に鉱石を採掘する小さな洞窟があるのだが、その洞窟の入り口に魔物が住み着いてしまっているのでどかして欲しい」


えっ、どかす?どう言うこと?


「討伐じゃないのですか?」


ギルド長は困った顔をしながら話してくれた。


「それが以前子供達を魔物から救ってくれたクマの魔獣がいまして…。」


「そのクマの魔獣が入口を塞いでいると?」


「はい。ただ中に入ろうとすると威嚇されるだけで、それ以外の被害はないのです」


「そうですか、内にはテイマーがいますから様子を見てきますよ」


俺が承諾したことでギルド長は肩の荷がおりたのか嬉しそうにしている。




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