第58話 キュイキュイ

しばらく待っていてもミナミは帰ってこないので俺は寝転がり、サラサと二人でのんびりと待っている。


「たまには外でゆっくりするのもいいな」


「そうね。私はミロードと一緒ならそれだけで幸せよ」


サラサの笑顔にドキッとする。


「何よそんなに見つめて…」


「いや、嬉しくてつい…」


「すこしは惚れた?」


「ああ。サラサは凄い魅力的な女性だよ」


俺の言葉にサラサが泣きだした。


「本当?嘘じゃない?」


「本当だよ。不安だったの?」


「当然でしょ。周りには綺麗な女性が増えるし、戦闘の仲間も増えて人数的にもダンジョンに一緒に付いていけなくなりそうだし、そもそも私が一方的に押し掛けた形だし、エターナなんて側にいることがスキルで確約されてるいるわけで…。」


凄い不安だったのだろう、いつも強気のサラサが凄い勢いで早口となった。


「不安にさせてゴメンね。待たせたね、俺と付き合って下さい」


「嬉しい」


サラサは寝てる俺の上に乗り、優しくキスをしてきた。


「もう我慢しなくてもいいんだよね」


「もちろん」


「一つ聞いてもいい?」


「なに?」


「なんで結婚じゃなくてお付き合いなの?」


そうか、異世界と俺達の世界で価値観が違うのか…。


「付き合うことで相手の嫌なことが見える時があるでしょ?その時にサラサが他の男性の方に惹かれることだってありえるからね」


「ないわ。ずっと沢山の人に誘われてきたけど、私が恋したのはたった一度だけよ」


「有り難う」


「もしかして夜の相性のことを気にしてる?それなら大丈夫よ、ミロードは立場的にも一夫多妻制を望まれるんだから、何人もの女性をお嫁にするんだから問題ないでしょ?」


そうなのか?日本では結婚して年月が経つとレスになる夫婦がほとんどだと読んだことがある。一夫多妻制ならそれが心配ない?


「そう…なのかな?」


「そうよ。でも私は性欲強いと思うから相手してくれないと拗ねるからね」


俺はサラサの髪を撫でながら可愛いなと思ってしまう。


サラサとイチャイチャしていたら一匹の動物?が近くによってきた。


見た目はどう見ても日本で言う猫なのだが、翼があり空を飛んでいる。


俺達の周りをグルグルと周り、しばらくすると俺のお腹の上に乗ってきた。


「人懐っこい動物だね。サラサは知ってる?」


「初めて見るわ。図鑑でも見たことないわね」


「そうなんだ」


俺は動物に話しかけた。


「触ってもいい?」


「キュイ」


「もしかして人の言葉を理解できるの?」


「キュイキュイ」


俺はその動物を撫でながらスキル鑑定を使ってみた。


そうすると《人語理解》《???》《???》とでた。


「なぁ、サラサ?動物にもスキルがあるもんなの?」


「スキルがない動物の方が多いわね。もちろんスキルがある動物も居るけどあって一つ、多くても二つくらいらしいわよ」


サラサの言葉でもっとわからなくなったので直接聞いてみた。


「君は動物かい?」


翼の猫は横に首を振った。


「君は魔物かい?」


翼の猫は横に首を振った。


「君は精霊かい?」


翼の猫は横に首を振った。


全部違うのかよ。


「君は何者かな?」


「キュイキュイ」


「そう君はキュイなんだね」


俺の言葉と共に翼の猫は光り輝いた。


この光景は見たことがある。もしかしてその光は俺の胸の中にくるのでは?


予想通り光は俺の中に吸収された。


「俺は名前を付けたわけではなかったんだが…」


「キュイキュイ」


キュイは嬉しそうに飛び回っている。


まあ、嬉しそうならいいか。


「仲間になったみたい」


「ミロードと居ると本当に楽しいわね。私も撫でていいかしら?」


サラサとキュイは見つめあった。


「キュイ」


いいそうだ。


サラサがキュイを可愛がる姿が微笑ましい。


むしろその姿が可愛い。



俺達がキュイを可愛がっているとミナミが1頭の真っ白な馬を連れてきた。


「なになになに、その子はなに?」


動物好きのミナミはやはり食いついた。


「これ?これはもふもふだよ」


俺の言葉にキュイが反応する。


「キュイキュイ」


「違うって言って怒ってるわよ」


「いや、間違いではないんだが…。仲間になったキュイちゃんです」


「もう、ミロードばっかりズルイ。私はテイマーなのに」


「そう言われても。それよりもその子に決めたの?」


「あ、そうだった。この子に決めたいんだけど訳ありで…」


「どうしたの?」


「この子はスキルを持ってる見たいなんだけど、足を悪くしてもう走れないんだって…」


なるほど、それで俺に治して欲しいと…。


まあ、まずはスキルを確認して見るか。


《重量軽減》と《脚力》のスキルを持ってるなんて当たりだな。


流石はミナミと言ったところだろう。


「いいよ、治すからその馬に伝えて」


俺はパーフェクトヒールを使い完治させた。


ミナミに治ったことを伝えて走ってもらった。


馬は楽しそうに走り回り、戻ってくるなり俺の顔を舐めだした。


うん、俺の顔は涎まみれである。


一緒にペルルやキュイも俺の顔を舐め始めた。


ついに俺も切れた。


「このやろー、お返しにもふもふさせろー」


こうして一時間ほど牧場で皆を可愛がったのであった。



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