第57話 お持ち帰り

冒険者ギルドでの告白をミナミと異世界らしいねと話していたのだが、そう言えばお土産はないのと聞かれた。


「おいおい、こっちは命がけで戦ってきたんだぞ」


「そうだよね、ごめんなさい。本当は私も一緒に行きたかったから…」


俺は忘れていた地竜のお肉をそっとだした。


「地竜の肉は美味なんだって。ターナやペルルと一緒に食べてね」


「あ、有り難う」


ミナミはスキルのせいもあって、食い意地が張っているので一番のお土産だろう。


「そう言えば精霊ユニスに貰った加護で水魔法は使えるようになったの?」


「任せて。お留守番の間に初級魔法までは使えるようになったわ」


「精霊も誰にでも加護を与えるわけじゃないから気に入られてよかったな」


「当然よ。ユニスちゃんは可愛くて毎日可愛がってるからね」


そうなのだ。戦いの時は別だが何もない時はミナミと良く一緒にいる。


そこにペルルも加わってミナミの周りは華やかである。


流石はテイマーと言ったところだろうか。


まあ、ミナミが作る料理に惹かれている部分もあるのだろうが…。


あ、料理で思い出したが、丼屋にお持ち帰り用のおにぎりが販売された。


なんでも常連の冒険者の人が腹持ちが良いから持ち帰れないかと相談されたそうだ。


そこで丼はもちろんおにぎりも追加で持ち帰りのメニューに加えたとか。


それ以降、朝が一番忙しくなったとのことでさらに人を雇ったと聞いた。


ミナミが残ってくれたことで店が順風満帆で何よりだ。



「店も順調だし、アルバイトも増えたからラビとターナに任せてミナミも冒険しに行くか?」


ミナミは体を前に乗り出しながら凄い勢いで返事をした。


「行く。絶対に行く」


「やけにやる気だね」


「お留守番は寂しいわ。それに、いろんな具材や調味料を揃えてお菓子も作りたい」


流石はミナミ。食べ物のことに夢中で自分がテイマーであることを忘れてそうだ。


「ま、まあ、気持ちは分かるが相棒を探しに行かないか?」


「相棒?」


ミナミは首を傾けている。


おい、本当に忘れていやがる。


「お前はテイマーだろうが」


ミナミはパッと思い出したようだ。


「あー、ペルルちゃんとユニスちゃんがいるから満足してた」


「それ、俺の相棒な」


ミナミはテヘッって言いながら頭を叩いた。


「まあ、いいや。俺はワイバーンと地竜の素材で装備を作りたいから旅にでる予定を考えている」


「そうなんだ。でも、この都市にも有名な鍛冶師さんもいるよね?」


「居るのは居るんだが、有名な冒険者さんの装備などでかなりの順番待ちだそうだ。それに鍛冶の町に行った方が炉などの設備がここよりも優秀で装備を作る素材がいいほど鍛冶の町にいけと言われたんだよね」


「そうなんだ。すぐに行くの?」


「冒険者ランクが上がったから、丁度いい依頼がないか探してからかな」


「わかった、いつでも旅に出れるように準備しておく」


「宜しく」


何故旅の準備をミナミがするかと言うとマジックバックをミナミに渡しているからである。


俺はAランク冒険者になったことで、無理にスキルを隠す必要が無くなったので遠慮なくアイテムボックスを使うことにした。


サラサと一緒に鍛冶の町に行くついでに依頼がないか確認しに行く。


「普通の護衛依頼ならあるけど、どうする?」


「護衛依頼はパスかな。まあ、無理に依頼を受ける必要もないしね」


「ただの旅行になりそうね」


「食材や骨董品も見たいしノンビリでいいんじゃないかな」


「そうね。それなら馬車を購入するのは?」


「この人数じゃ乗り合い馬車もキツイし馬車を買うのはありだな。高ランク依頼なら冒険者ギルドが用意してくれるが、依頼がない時は毎回必要になるもんな」


「じゃあ、このまま馬車を見に行くわよ」


こうして馬車を買いに来たのだが、一から作ると一ヶ月はかかると言われたので中古品を見せてもらうことにした。


貴族みたいな派手な馬車から速さに特化した馬車など沢山あった。


俺は馬車の中が快適そうな物を選び、外観はシンプルな見た目の物を選んだ。


もちろん屋根付きで機能性に優れた馬車を選んだのでそれなりの金額となった。


馬車の店員から馬はどうすると聞かれたので、詳しく教えてもらった。


馬、ロバ、バッファローや魔物まで多種多様に馬車を引く動物などを揃えている店があるそうなので教えてもらい、テイマーが役に立つかもしれないのでミナミを連れてから行く。


ミナミを連れて行くと当然一緒にペルルも付いてくる。


あら、君は俺の相棒だよね…。


郊外の外れまで足を運び、牧場のような場所にやってきた。


店員さんに事情を説明すると好きな子を選べと言われた。


多くの動物や魔物がいるなかで好きに選べっていわれても…。


フィーリングが大切だから店員があてがうことはしないらしい。


しょうがないのでミナミに任せることにした。


ミナミは一匹ずつ触ったり話したりしている。


もしかしてミナミは動物と話せるのかと驚いている。


そのことをミナミに聞くと何となく分かる程度よと言われた。


それだけでも凄い気がするので、ミナミが決めるの牧場の中央付近で待つことにした。








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