第55話 Aランク冒険者

翌日、アクア嬢やコーズ殿とも語り合った。


今後の話や農地の話など多くの話をしたが、コーズ殿が今回の作戦を根掘り葉掘り聞いてきた。


何でも自身の未熟さを痛感したとのこと。


私の指揮次第では死者がもっと減らせたと言って唇を噛みしめていた。


何処までいってもこの方は真っ直ぐなのだろうな。


そんなコーズ殿のために一つ一つ丁寧に説明した。


親衛隊を動かすために使った手紙の内容まで全て話した。


私兵団と親衛隊を合わせると多くの者が亡くなっている。


だが、この世界はこれが日常で当たり前となっている。


そして、亡くなった者の分まで懸命に生きるのだ。


その悲しみが子供達の心に火を灯し、それを継承していく。


だからこそ異世界では家族のために自身が死んででも家族を守る者が多い。


そんな人々が多い国なのに何故貴族は好き放題なのか不思議である。



今回のスタンピードが終わっても皆前を向いている。


農地が荒らされていようが、農地を耕し直して種を植えていく。


その始まりの種が芽を息吹希望へと変えていく。


苦しい日々を乗り越えて前を向いていく姿に感心させられる。


俺のすることは終わったので帰るのだが、ささやかながら地竜の部位を半分ほど寄付しておいた。


地竜クラスなら高い値で売れるだろう。


ただ俺も地竜の部位で装備を作りたいと考えている為半分だけではあるが…。


こうして町を出る時にはパーティが一人増えていた。


「エターナ、改めて宜しくね」


「宜しくお願いしますミロード様」


「戻ったらエターナもダンジョンでレベル上げしよう」


「はい」


何故かエターナは喜んでいた。


さらには星の誓いによって星魔術がスキルに追加されたそうだ。


昔の文献にもデータがないため手探りからのスタートである。


魔法じゃなくて魔術ってところが気になるんだよね。


帰りは急いではいないので一週間以上かけて帰るのだが、エターナに魔力操作のおさらいや星魔術のことを皆で考えながら帰る。



何事もなくラングード都市に戻り冒険者ギルドに向かう。


依頼達成と共に冒険者ランク昇格の申請が通るか伝える。


地竜討伐にスタンピードの貢献度を考えると大丈夫だと思いたい。


しばらくして応接室に呼ばれた。


皆と一緒でいいと言われたのでパーティーメンバーと共に向かう。


部屋に入るとツバキギルド長が待ち構えていた。


「Aランク冒険者に昇格おめでとう」


そう言いながら冒険者証を渡された。


「有り難うございます。お祝いの言葉だけ言いに来た訳ではなさそうですね?」


「まあ座ってくれ」


俺達はソファーに座って話を聞く。


「まず最初にA級冒険者以上に関しての注意点を伝えておく」


こうしてツバキギルド長から注意点を聞いた。


基本的に戦争に介入する行為の禁止である。

(例外として母国を守る戦いor理不尽な戦争に対しての他国を守る戦)


なるほど、一騎当千の冒険者を守る側にのみ許可させることで戦争を少なくしているのだろう。良く考えていると感心する。


次に街や村での大規模なスキルや魔法の禁止。

(例外として災害級の魔物や魔族などの脅威を取り除く戦)


まあ、これも当然だろう。

使う場所を考えろってことだね。


最後にどの国の貴族にも理不尽な対応をされないように《騎士爵・一騎当千》を与える。


よし、これを待ちわびていた。


俺が喜んでいるところにツバキギルド長が注意点を伝える。


「冒険者ギルドが各国に地位を確立するまでに血と汗の滲む努力をしてきた。


意味は解るな?貴族から守るために作られた爵位を穢すな。汚い貴族と同じような行為をするな…いいな?」


「承知しました」


へぇー、自由な冒険者、高ランク冒険者に気品を求めるかぁー、いいね。


その意思を伝えるだけある。仮にその行為が望ましくないとなった場合は注意、警告、3回目で冒険者証のはく奪となるようだ。


「さて、ここからが本題だ」


「えっ?」


「頭のいいお前のことだから気づいていると思ったが?」


「………。この話の後で本題?はく奪となった者のこと?」


「そうだ。実力もあり素行も悪いとなると…行きつく先は解るな?」


「闇ギルド?」


「正解だ。追放されただけならば問題ないが、闇ギルドに加入し悪事を働いた時点で討伐対象となる」


なるほど、力をもった者全員が善人である訳がない…か。


「そこで、Aランク冒険者から闇ギルドの犯罪者の討伐依頼が追加される。


もちろん危険度が高い故、依頼は自由ではあるが極力依頼を受けて欲しい」


「それは全員に同じことを伝えているの?」


「まさか。同じ高ランク冒険者だ、余程の実力がある者にしか伝えていない」


「それを聞いて安心したよ」


「何故お主が安心する?」


「全員に同じことを言って高ランク冒険者が減っていったら闇ギルドと立場が逆転するからね。数の暴挙が如何に大切かを身に染みて解っているつもりだ」


「流石だな。もちろん依頼も協力依頼として複数の高ランク冒険者で当たってもらう」


「それを聞いて安心したよ」


この世界の冒険者ギルドはまともだな。

まあ、始めに言っていたように血と汗の滲む努力をしてきたのだろう。


真っ先に高ランクの冒険者を目指して正解だったな。


こうして注意事項を聞き終わった後はお得な話なども聞いてお開きとなった。








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