第54話 宴

魔力がギリギリのため、俺もフラフラになりながらミリオンの町に戻る。


流石に連続で魔力を行使し過ぎた。


地竜との戦闘はアドレナリンが出ていたから気づかなかったが、複合精霊魔法で倒せなかったと考えたならば危なかったとだけ言っておこう。


もちろん魔族の存在の可能性を考慮してセツナの余力を残しておいたりもしたのだが、最悪のケースは免れた見たいだ。


まあ他にも余力をすこしだけ残してある。

ここにいないペルルがいい例だ。


何重にも策を巡らせた結果が今回の勝利に繋がったと言える。


後で聞けば、リーリアの魔力も後少しで尽きるところだったとか。


やはり長期戦は魔法使いにとって相性が悪い。


無事にスタンピードから町を守れて本当に良かった。


俺達や親衛隊がミリオンの町に入る時には拍手喝采であった。


もう日も暮れ始めたころ町の広場ではお祭りの準備が行われていた。


なんでも町が助かるかもとなった時に町の子供が「お祭り?」と声を上げたことが始まりだそうだ。


まあ、その言葉がなくても明日には宴が始まっていたとのこと。


宴の準備が行われている時にダンダンが話しかけてきた。


「戦闘の話は後にして、地竜の肉は食べないのか?」


「えっ、なんで俺に聞くの?」


「なんでって、お前が倒したからだろうが。まぁ、地竜の肉は美味とされているから売ればかなりの金額になるがな」


「あー、そんな決まりなんだ。なら、一部を残して全部宴に使ってもらって」


「おいおい、それは大盤振る舞いじゃないか?2mの穴が空いたとは言え、肉は大量にあるぞ」


「町が無事だっただけで俺は満足さ。親衛隊が買い取って皆に提供したとでも言っておいて」


「欲がねぇーな。なら、わかった。報酬は楽しみにしておけ」


報酬と聞いて何故か身震いがした。


もしかして…。うー、さぶ。


こうして地竜の肉が振る舞われることで町の人達は歓喜の嵐である。


宴が始まると美味しい肉とお酒でみな饒舌になっていく。


俺とセツナの所には代わる代わるに人の列が出来ている。


感謝の言葉を述べる者。戦のことを褒める者。涙を流しながら握手を求める者。


多種多様の人が感謝を伝えてきた。


その度に俺はこの町を救えて本当に良かったと思う。


そして人の列が終わったと思った矢先、エターナとその父親がやってきた。


領主として頭を下げてお礼を言う姿を見て、やはりエターナの父親だなと思う。


サンターナに続き、ミリオンの領主も数少ない良い貴族なのだろう。


その後領主は泣きながらエターナが俺に抱き着く様子を見ながら去っていった。


娘を宜しく頼むってことなのか?


そんなことを考えていたが、抱き着いたエターナの胸のせいで意識がそっちにいってしまう。


「ミロード様、ミロード様、ミロード様」


「どうしたエターナ嬢?」


「私決めました」


「何を?」


「貴族の名前を失くしてでもミロード様についていきます」


「唐突だね」


「この体は二度もミロード様に救われています。その恩を一生を掛けて歩むと誓います」


その誓いに答えるように夜空から星の光がエターナに降り注いだ。


エターナの水色のさらさらな髪と水色の瞳が金色に見えるほどに体全体を輝かせている。


「な、何が起きた?エターナは無事なのか?」


未だに光り輝くエターナは幻想的である。


「私のスキルが誓いを認めてくれました」


「どう言うこと?」


「私のスキル《星の誓い》と言うものがあります。私の心からの願いが誓いに変わる時、星が祝福し誓いを認めると…」


「星が誓いを認めるとどうなるの?」


「誓いが成立となり、契約と同じで破棄することは出来ません。さらに星が誓いの度合いによって力を貸してくれます」


「う、うん、良く判らないけど、エターナが俺の側にいるってことだけは分かったよ」


その話を聞いていたサラサが捲し立てる。


「そんなのズルイ。私はずっとミロードの側で尽くしてきたのにエターナはスキルでずっと側に居れることが確約されるなんてズルイ」


「もちろん私は傍に居れるだけで満足です。結婚できなくても生涯尽くすと決めています。なので安心して下さい」


「そこまでの覚悟を…。ズルイなんて言ってごめんなさい」


「サラサお姉さま、一緒にミロード様に身を捧げましょうね」


「そうね。でも私が先でいいかしら?あ、一緒でもいいわね」


その後二人はキャッキャウフフと話している。


えっ、俺の意思は?


まあ、あんな綺麗どころなら男としては嬉しいけど…。


その内覚悟を決めないとなぁー。


まあ、お金目当てや権力目当てじゃない二人だからこそ俺も二人を大切にしたいと考えていることだけは確かである。


その後も宴は続き、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

















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