第52話 スタンピード2

ついに望遠の魔道具でミリオンの町が見える場所までやってきた。


「ミロード様、何か見えたか?」


「やばい、ミリオンの町の兵が横一列で凌いでいる」


「まだ町な無事なのだな?」


「ああ、ただもう一時間も持たないかもしれない」


「そんなにヤバイ状況なのか」


「誰かこの馬車の馬に加速のバフを掛けれる者はいない?」


「待ってろ、呼んでくる」


俺達は急いでミリオンの町に向かう。


「それで状況を鑑みてどうするつもりだ?」


「俺が指示してもいいの?」


「しょうがないだろう。どう見ても最大戦力はお前とセツナ殿だろうからな」


「有り難う」


俺はダンダンにこの後の流れを伝えた。


ダンダンは大まかに兵達に作戦を伝える。


本当にそんな作戦上手く行くのかよと半信半疑である。


そもそも、始めに高火力の魔法が一人で放てるのか疑問に思っているのだろう。


その期待に応えてやろうではないか。



そして、ついに目と鼻の先に見える位置まで辿りついた時にはミリオンの兵達の陣形が崩壊しだした。


ヤバイ、この位置から水平に魔法を放っても間に合わない。


考えろ。


そうだ、上空を起点に魔法を発動させれば…。


俺は神経を研ぎ澄まし、上空に虹の不死鳥を最大級の魔力を使って作りだした。


親衛隊を含め、皆がどよめきの声が上げる。


「お、おい嘘だろう」


「本当に超級並みの魔法を…」


「もしかして虹の不死鳥使い?」


「実在していたのか…」


「こ、これなら」


皆が希望に満ち溢れているので、俺は上空から虹の不死鳥を放つ。


場所はミリオンの町と山の麓から魔物が押し寄せてきている中間地底。


ドゴーンと言う音と共に爆風が押し寄せる。


「今だ、一気に爆発地点に向かえー。」


一斉に親衛隊達が馬を加速して行く。


そんな中俺達はミリオンの町に一直線に向かう。


もうすでに魔物がミリオンの町の門まで到着している。


ミリオンの兵達は状況が判らずにいるが、アクアの兄コーズだけは声を高らかにして叫ぶ。


「お前ら、戦争で奇跡を起こした虹色の不死鳥使いが援軍に来てくれた。

わかっているな、下を向いている兵は顔を上げろ。そして、今回のスタンピードでも奇跡を見逃すなぁー。」


「援軍が来てくれたのか?」


「おい、前を見ろ」


「あれは騎士団?」


「ま、まだ間に合うのか?」


「本当に援軍だ」


「有り難う」


「本当に有り難う」


「この町のために…、感謝する」


皆が涙を溜めながら、懸命に剣を振るう。


「ミリオンの兵は町に向かった魔物の討伐を、サンターナの兵は中央に集まり下がりながらアーチ型で魔物を食い止めろ。これ以上町に魔物を通すな」


コーズの指揮がギリギリの瀬戸際で持ちこたえる。


そして、ついに俺達がコーズ殿達の元へ到着する。


「セツナ、リーリア頼む」


「了解」


「畏まりました」


リーリアが広範囲の精霊魔法を放つ。


セツナが前方からくる魔物を瞬殺していく。


そして俺はアーチ型の布陣の中央までくて魔法を放つ。


「星の導きよ、懸命な戦士の傷を癒し、さらなる高みへ導け、エリア・エクストラヒール」


広範囲の聖魔法で兵達を回復させる。


「う、嘘だろ?」


「体が癒えていく」


「それだけじゃない、剣を持つのが精一杯だったのに腕が上がる」


「気力も回復してる気がする」


「ここにいる全員を一瞬で」


「奇跡だろう…」


兵達が驚きながらも回復した体を実感している。


「全員良く聞け、爆発地点から300もの馬がこちらに向かってくる。

混乱する魔物を迎え討て。馬は町に誘導しつつ魔物にぶつけていくように」


俺が指示すると同時にダンダンがタイミングよく馬を解き放った。


「それと同時に俺が町の中の兵を回復させる、前方で親衛隊がかく乱しながら食い止めている間に建て直せ」


俺は叫びながら町に向かう。


前方では親衛隊300人が防御陣営を作っている。


さらに残りの騎馬隊300が魔物をかく乱させている。


コーズは前方との連携に驚愕している。


な、なんて高度な連携だ。私が今の間に立て直さないと全てが無駄になる。


「皆顔を上げたな。そして腕も上がるな?目の前の奇跡に続けぇー。

後方から回復した兵が合流する。魔物が混乱している隙を見て討伐しながら三列陣形に戻すぞ」


「「了解」」


兵が陣形を築く間にリーリアはセツナの道を作るように精霊魔法を放つ。


セツナは私兵団と親衛隊の間まで進み、剣を構えた。


「疾風乱舞」


無数の剣の刃を乱れ打つ。


1人で何匹の魔物を葬っているのだろうか?


そんな姿に兵達は驚愕する。


たったの二人のはずが、何百人とも思える程の活躍をしている。


後ろの脅威が減った親衛隊が動きだす。徐々に後退し、私兵団の位置まで下がりながら防衛する。


私兵団は前からの魔物が少なくなってきたので、無事に陣形を形成し始めた。


そして、親衛隊が私兵団の元まで辿り着くとダンダンが叫んだ。


「ミリオンの兵達よよくぞ持ち堪えた。俺は第4王女親衛隊の副隊長ダンダンである。今の間に町に戻り食事と休憩を挟め。それまでは親衛隊が維持でも守ってみせる」


私兵団は頼もしい応援部隊に安心して託し皆休息に入るのであった。













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