第50話 ミリオンの町

アクア視点


私は兄様と一緒に私兵団300人を連れてミリオンの町に到着した。


本当はもっと私兵団を連れてきたかったのだが、サンターナの街の防衛にも人数を残さないといけないため、300人程が限界だった。


親友のエターナを救うためと言う理由では借りれただけでも御の字と言っていいのかもしれないけど…。


何故私も一緒に向かったのかと言われると、今回のミリオンの町のスタンピードの情報を聞いた時に私の直感が反応したからだ。


ただの直感だけならいいのだが、私が鍵を握るような感覚の直感だった。


私に出来ることなんてたかがしれているのに何でだろう?


最近で考えると一つだけ心当たりはある…が、どうしよう。


取り敢えずどうなるか分からないから無難に手紙だけだしておこう。



こうして私兵団300とミリオンの町の私兵団200でスタンピードから町を守らないといけない。


王都からも派遣されれば望はあるのだろうが、未だ情報が来ないということは応援に来ないのだろう。


ミリオンの町は農業が盛んな町のため、町の規模に対して住人の人数は若干少ないと言われている。


その為冒険者も100名ほどはいるが、皆低級の冒険者が多い。


高ランク(Bランク)の冒険者は一人しかいないそうだ。


だからこそ初級のダンジョンがスタンピードを起こしたのだと考えられる。


合わせても600人程で最低でも万を超える魔物と戦わないといけない。


仮に100万もの大群だった場合、不可能に近いだろう。


Bランクの冒険者が低ランクの魔物に無双出来ても1000を倒すのがやっとだろう。


もし中ランクや高ランクの魔物が多数いるならば絶望しかない。


サンターナの私兵団がいくら屈強でもランクの高い魔物との戦闘経験が少ないためどうなるか分からない。


そんな不安がある中、最悪な情報が入ってきた。


近くの山の魔物がどんどん増えているらしい。


私はエターナと抱き合うしかなかった。


今は兄様が罠や策などを準備しているが、焼け石に水だろう。



1週間後、入念に準備を進めている中についにスタンピードが始まった。


始めは初級ダンジョンから低レベルの魔物が次々に町に向かって来ている。


布陣としては、先頭にミリオンの町の私兵団、その後ろに門を守る形でサンターナの私兵団がいる。

ミリオンの町の私兵団は二列にならんで横並びだ。


冒険者は各々が得意な場所で戦う配置となった。


さらにスキル持ちの住民に声をかけ門の上から弓や魔法で援護をしてもらう。


ちなみにサンターナや王都の城門と違って、魔物の大群で攻められれば門が崩壊する可能性があるため、門の外で迎撃するしかない。


指揮官は兄上である。


私兵団の人数が多いと言うのもあるが、ミリオンの私兵団長はこんな規模の戦闘経験がないからだ。


本当に不安ばかりである。


遠目で見ても、ゴブリンやウルフにラビットなどが見られる。

その中でも巨大なアリのアントとゴブリンが多いだろうか。


こうしている間に魔物はどんどん近づき、弓矢が届く距離まできた。


一斉に弓矢が放たれるが、皆バラバラで地面に突き刺さっている。


まあ、いきなり訓練もしていない者が放てと言われてもそんなもんだろう。


何故私が状況を把握しているかと言うと、私も弓術のスキルを持っていて一緒に矢を放っているからだ。


よし、一匹仕留めた。


弓矢を素通りした魔物がミリオンの兵と相まみえる。


低ランクの魔物とあって、陣形を崩すことなく戦えている。


しかし、魔物の群れはどんどん押し寄せてくる。


一対一なら余裕な低ランクの魔物だが、数が増えると防戦一方になる。


そこにBランクやCランクの冒険者が魔法やスキルを使って援護してくれた。


おかげで今はギリギリ耐えている。


一時間後、兄上もこれ以上は厳しいと判断したのか100名をミリオンの兵に混ぜる。

二列だった列を三列にし、先頭にサンターナの兵をもってくる。


さらに100名を投入し、疲れて動きが鈍い者や負傷者と交代させる。


流石は兄上だ。


これで予備兵は残り100人。


未だに初級ダンジョンから続々と魔物が溢れてきている。


待って待って、この魔物の群れはいつ終わるの?


そんなことを考えていると山の麓からもチラホラとこちらに向かう魔物が見える。


さ、最悪だこんなの絶対無理だ。


弱音を吐いても状況が変わらないことは知っている。知っているけど愚痴りたくなる。


現状、ギリギリ耐えている状況なのにこれ以上の魔物は無理よ。


そんなことを愚痴りながらさらに1時間が経った。


予備兵は負傷者と次々と交代してゆき、ついに予備兵は0人となった。


今でも耐えていられるのは低ランクのモンスターしか来ていないからだ。BランクCランクの冒険者のおかげと言えるだろう。


もう5000~10000匹は倒しただろうか。


ミリオンの町の外にある畑は踏み荒らされている。


そんな余裕がないのは一目瞭然だが、今後を考えると心が痛い。


むしろ今後はあるのかな?誰もが絶望を感じている。


逃げる場所もないので住民も門の中で鍬を持って待ち構えている。


何十万と言う住民が戦えばもしかしたら全滅は逃れられるかもしれない。


このまま低ランクの魔物しか現れない状況の場合のみだが…。


さらに1時間経ったころ、最悪の状況となった。






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