第49話 Bランク冒険者
ワイバーンを討伐した俺は無事にBランクへと昇格した。
Aランクに昇格するにはAランク級の依頼を3回、Sランク級の依頼を1回以上達成するか、国や街の窮地を救うほどの活躍が必要らしい。
また、Bランクからは上位の依頼の観覧をすることが出来る。
なんでもスタンピードの前兆がある街への依頼や災害級の魔物の討伐依頼などがあるそうだ。
国を越えての移動となるが全て冒険者ギルド持ちである。
可能性の依頼の場合には実際にスタンピードが無くても最低限の報酬が約束される。
それほどまでに高ランクの冒険者は優遇されるのだ。
最短でAランクに上がりたいのならばスタンピードの前兆がある街に向かい無双すればいい。
ただ、俺はそんな命知らずではない。
無双出来る可能性はあると思うが、規模も解らない場所に一か八かで行くほど無謀ではないのだ。
そう考えていた俺なのだが、何故か現在はスタンピードの前兆がある街に向かっている。
いつでも沈着冷静の素振りを見せている俺の言葉を返せ。
ことは一週間前に遡る。
Bランク冒険者に昇格後サラサと高ランク依頼を見ていた時に俺とサラサ宛に手紙が届いたのだ。
アクア嬢からで、なんでもミリオンの町にスタンピードの兆しがあるのだとか?
ミリオンの町?俺らになんか関係あったかな?
サラサに聞いてみると、なんとエターナ嬢の町だった。
さらにはアクア嬢も兄上と一緒にサンターナの私兵団を連れて行くと書いてあった。
あいつらは貴族なのに何てお人好しなんだ。
それなのに俺達に一緒に来て欲しいとは一言も書いていなかった。
最後になるかもしれないので念のため手紙を残します…とだけ。
今、俺の隣りで猛烈に怒っている人がいる。
「何で私を頼らないのよ?確かに私は戦闘能力はないけど、妹が命を賭けて行くならすこしぐらいは頼りなさいよ」
確かに。
前回の戦争で恩を返したと思って、俺にも頼らなかったのかな?
それともたった一人の戦力じゃ状況は変わらないと思ってる?
あまいな。低級のモンスターなら100や200くらいなら高ランクの冒険者なら楽勝だと言うのに。
あっ、高ランクの冒険者に上がったことを知らないんだった。
「サラサ、どうする?」
「ミロードと一緒に助けに行きたいけど…、流石にミロードを巻き込むのは…」
「君も妹と同じことをするのかい?本当に困っているなら遠慮なく頼むのが信頼の証じゃないのかい?」
サラサは涙を浮かべて頼んできた。
「いいの?死ぬかもしれないのよ?でも私は死ぬときもミロードと一緒がいい。お願い一緒に妹を救って」
サラサの心からのお願いに俺は答える。
「任せろ」
こうして俺はさらにセツナとリーリアにも協力をお願いした。
二人とも俺のためならと言って笑顔で引き受けてくれた。
本当にいい奴らだ。
流石に相棒のいないミナミの戦力では身を守ることもできないので店を守っておいてほしいと伝えてある。
さらに俺はある場所に一つの手紙を送ることにした。
ついでに冒険者の高ランク依頼があるか確認し、スタンピードの前兆依頼として依頼があったので受けた。これで馬車の手配から全て冒険者ギルドが行ってくれる。
明後日の朝には準備が完了すると言うことで俺らも準備を入念にする。
こうして今は馬車で向かっているのだが、状況を確認しておこう。
ミリオンの町は王都とラングード都市の中間地点をずっと南に行った場所にある。
さらに冒険者本部にいる俺達は真南の位置にミリオンの町がある。しかし、国が違うためアクア嬢達よりも到着までさらに時間がかかる。
現在は王都とラングード都市の中間地点辺りだと聞いた。
ここで俺は冒険者ギルドより借りた望遠の魔道具で王都の方面を確認する。
「流石に王都までは見えないか」
「当たり前よ、どんなけ距離があると思ってるの?」
「ちなみに何故その魔道具を借りたのだ?」
「セツナいい質問だね。スタンピードは情報が大切だからね。こちらの戦力と魔物の戦力をすこしでも早く確認したいからね」
「なるほど、流石だなミロード様」
「ところでミロード、今回のスタンピードは生き延びれそう?」
「初級のダンジョンとミリオンの町の郊外の山から魔物が溢れだしたんだよね?同時に溢れることなんてあるの?」
「過去には同じ事例があったものの、通常はどちらか一つよ」
「初級のダンジョンのスタンピードであれば規模次第だが問題なかったのだが、両方となるときな臭いな」
「俺が魔族と戦った時と状況が似ているな。ただ、あの時は中級のダンジョンだったから魔物のレベルも高くて死者が沢山出たがな」
「魔族か…。」
嫌な予感しかしない。
逃げるのが最善策なのだろうが、助けると約束してしまったからな。
始めは初級のダンジョンからのスタンピードと聞いていたから、自信満々で任せろと言ったものの、今ではすこし後悔している。
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