第46話 閑話 ミナミ4

待ちに待った料理が運ばれてきた。


私の目の前にはカツ丼、牛丼、親子丼とサラダが並んだ。


えっ、この世界にも丼があるの?この世界で硬いパンや野菜や葉っぱしか食べたことのない私にご主人様が聞いてきた。


「懐かしい?」


「えっ?」


懐かしいってどういう意味?


「丁度3人分だから召し上がれ」


「は、はい」


私は考えることを止めて無我夢中で食べた。


おいしいーーーーーーーーー。


こんなに美味しい物をこんなに食べていいの。


私の目には自然と涙がでていた。


食事が終わると気づけばご主人様と二人きりだった。


さらには場所を移動してご主人様と話をした。


結論から言うとご主人様は私と一緒で転生者だった。


今までのことやスキルの話、今後の話を沢山話した。


始めはご主人様だけズルイとも考えたけども、やはりご主人も最初は小さな村の孤児でイジメからのスタートだったって聞いた。


それをスキルと運で乗り越えてきたと聞いた時、やはり運が重要なんだと実感した。


私も運上昇のスキルを取ったほうが良かったのかな。


でも、ご主人様に出会えて本当に良かった。これで運を全部使い果たしたのではと思ってしまうほどに幸運な出会いだった。


ご主人様は時がきたら奴隷から解放してくれると言ってくれたけど、この方の近くに居た方が安全で楽しい人生を歩める気がしてしょうがない。


ご主人様はタメ語で話していいと言われたけど今は感謝の気持ちが大き過ぎて無理だ。


今まで恋をしたことのない私の気持ちは高鳴るばかり。


恋愛や異世界物でピンチの時に助けられると恋に落ちる場面があったけど、いざ実際にその場面に遭うと破壊力がハンパない。


恋なのか尊敬なのか判らないくらいご主人様を見るだけで心が熱くなる。


これが恋なのかな?


でもご主人様の周りには綺麗な人ばかり。


この世界が一夫多妻制で、この体の前任者の知識があるせいなのか私も一緒に娶ってくれないかなって考えてしまう。


こんな貧相な体じゃ無理だよね?


今からご飯を沢山食べたら胸が大きくならないかな?


そんなことばかり考えていたらご主人様から提案を受けた。


この世界は平等ではないから、何があっても乗り切れるだけの力やお金が必要だと。


力に関してはダンジョンでレベルを上げようと言われた。


お金に関してはお店の経営アシスタントをしないかと言われた。


詳しく聞くと、私が食べた丼を中心に一から店を立て直すから一緒に協力してくれないかと言われた。


えっ、この店のオーナーだったの。


お店ごと買い取ったって、どんなけお金を持ってるのよ。


奴隷の私に何故そんなに優しくしてくれるの?


同じ異世界人だから?


こんなの好きにならないわけないじゃん。


それ以上私に優しくしないで、心が追い付かないよ。



それからの日々は楽しくてしょうがない。


ご主人様がダンジョンで戦う姿を見ては胸が高鳴る。


今までは魔物が恐くてしょうがなかったのにレベルが上がった今では私も一緒に戦いたいと思うほどに欲がでてしまう。


ただ他の女性と仲良くしている姿を見るとすこし寂しい気持ちになる。


愛人でもいいから側にずっと居たいな。


転生前の昔の私なら何言ってるのって思うだろうけど、法や環境が変われば自然とそれが普通だと認識してしまう。


この世界では魔物が居て戦争もある。


自ずと男性の死亡率が高くて男女比では女性の方が高い。


奴隷から解放されたらこの知識とテイマーの相棒次第では高みを目指せるだろうとご主人様から言われた。


私が望むのは地位や名誉じゃなくて貴方なのに…。


こうなったら私をほっとけないほどの魅力的な女になってやる。


側に居て欲しいと言われるほどに有能な女になってやる。


絶対に振り向かせてみせる。


ずっと恋に恋してた女の本気を見せてやる。


サラサさんとも今後の話をして外壁から埋めてやるんだから。


こうして私は初めての恋と戦う覚悟を決めたのである。






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