第42話 転生者

自宅に戻りまずは奴隷二人をお風呂にいれさせる。


もちろん同じ奴隷のリーリアに面倒を見てもらっている。


同じ奴隷同士で話せばすこしは不安が消えるといいな。


ちなみにもう一人の奴隷はターナと言う。

普通の人族で18歳だ。


お風呂から戻ると何故かバスローブ姿の二人がいた。


「何故にその恰好?」


「脱ぎやすいようにと気を遣ったのですが、ダメでしたか?」


泣きそうな顔で答えるリーリア。


彼女なりに気を遣ってくれたのだろう。


「リーリア、有り難う。でも、夜の営みはしないよ」


「えっ、そうなんですか?」


「うん。隣りを見てごらん?鬼の形相のサラサがいるでしょ?俺はまだ死にたくないからね」


それを聞いたミナミが泣きそうな顔で訴えてくる。


「そ、それは困ります。大量の食事を食べれると喜んでいたのに、約束を破るつもりですか?」


俺は優しく微笑みながら伝える。


「ちゃんと食事は提供するから安心して。まずは食事にしよう」


俺は料理の練習と言う名目でラビを呼んで丼ぶりを作ってもらう。


そして、ミナミの前にカツ丼、牛丼、親子丼とサラダが並んだ。


ミナミは料理を見て目を見開いて驚愕している。


「懐かしい?」


「えっ?」


「丁度3人分だから召し上がれ」


「は、はい」


余程お腹が空いていたのか勢いよく食べている。


食べながらご飯ご飯と言って泣いていた。


今まで余程辛かったのだろう。まあ、固いパンや野菜中心だっただろうから泣くほど嬉しいのも理解できる。


食事が済むとターナには今日はゆっくり休んでもらい、明日は必要品の買い出しを伝え、明後日から家事と料理をお願いしている。


ターナは今日から大丈夫だと言ってやる気に満ち溢れていたので、今日と明日は家の中だったり買い出しの場所とか覚えてねと伝えておいた。


奴隷に優しいは正義なのか、ターナはさらにやる気になっていた。



そして、本題のミナミには二人でゆっくりと話す時間と場所を設けた。


「食事は美味しかった?」


「凄く美味しかったです。私はこんなに良くして頂いても返せる物がないです。身体もこの通り痩せ細ってますし…」


「別に体を求めて買ったわけではないから大丈夫だよ」


「なら、なんで?」


「薄々気付いているんじゃない?」


「もしかして?日本人?」


俺は頷くとミナミは涙を流し始めた。


「俺は運よくここまでこれたから良かったけど、君は辛かったね。」


そう言うとミナミはワンワンと泣きじゃくった。


しばらく落ち着いてから話を再開する。


「何かやりたいことはある?」


「自由に動いて、美しい景色を見て、美味しい物を食べたい。あ、恋もしてみたいな」


「間違ってたらごめんね。君は神様に健康な体を求めていた子かな?」


「そ、そうです。健康で丈夫な体は手に入ったのですが、それを維持するためにデメリットとして消費カロリーが3倍になりました」


「それで毎日空腹に…」


ミナミは頷いた。


「そっかー、貴族の権力が及ばないようになったら奴隷解放するから、今後はスキルとレベルを成長させようか?」


「もしかして私のスキルを知っていますか?」


俺はそっと頷いた。


「同じ歳だし敬語じゃなくていいよ」


「でも、奴隷だし…。」


「普通の奴隷はそうだろうけど、別に俺は奴隷として扱うつもりはないよ」


ミナミの目にすこしずつだが生気が蘇ってきたような気がした。


「今まで生きてきた恩恵のスキルが《速読》で、自身で選んだスキルが《テイマー》だね」


「そうです」


「何でテイマーを選んだの?」


「ずっと車椅子生活だったので、ペットが飼えなくて…。それに、沢山の本を読んでいた中でテイマーが最強のお話が多かったので」


確かにテイマーが最強の異世界物の本は多いが、ミナミの3つの組み合わせのスキルを考えたら非常に微妙だ。


デメリットを考えるとテイムができなければ詰むことが容易に想像できる。


たぶん、転生前の動けない体のせいで知識だけが先行したのだろう。


俺が見つけることができたのが唯一の救いだ。


「予想だけど、小説やマンガのような聖獣やドラゴンなどのテイムは難しいと思うよ」


「そ、そうですよね。強くなくてもいいので、もふもふで可愛い子が欲しいなと…」


まあ、そうだよね。俺ももふもふが欲しかったし。


そして、ミナミにペルルを紹介すると無我夢中で可愛がっていた。


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