第39話 休日

俺はどうしても欲しい物があったのでペルルと一緒に探すことにした。


この商業の街にならあるかもという期待を込めて。


まずは朝市の市場に顔を出してみた。


新鮮の野菜や果物など多くの物が売っている。


さらに歩いているとペルルが訴えてくる。


「クルゥ、クルックゥー」


「はいはい、魚だね。買うから待ってて」


俺は大量に買ってから一つをペルルに渡す。


ペルルは美味しそうに食べている。


うん、やはり可愛いな。


大量に買った残りはペルルに凍らせてもらってからアイテムボックスにいれる。


ペルルのお望みの物は見つかったが、俺の望む物が見つからない。


店員さんに米はないかと聞くがコメと言う単語に反応がない。


もしかして、コメと言う名前ではないのか?


そんなことを考えながらも米を探すが見つからない。


お昼ごろとなり、俺はお腹が減ったので近くのご飯屋を探した。


一歩奥に入った路地に看板が見えたので気にせず入った。


店の中は昼時とあって混雑は…していなかった。


むしろ誰もいない?


大丈夫か?と思いながらカウンターに座ると慌ててウサギの獣人の店員さんがでてきた。


「スイマセン、いつぶりのお客様だろうか?」


「俺に訪ねられても困るんだが…。」


「そ、そうですよね。いらっしゃいませ」


本当に大丈夫だろうか?


「注文は何に致しますか?」


「何があるの?」


メニューを見るが初めて見る名前の料理ばかりだ。


「オススメで」


俺は最終手段を使ったのだ。


5分後、美味しそうな匂いがここまで漂ってくる。


店員さんが料理を運んできた。


どんぶりの器に何故かパスタ料理がきた。


気にせず食べているのだが、やたら味が薄い。


塩味のパスタを食べている感じだろうか?


そして、パスタを食べていたら衝撃的な物が目に入ってきた。


「こ、これはコメではないだろうか」


俺は一口食べて確信した。


間違いなく米だ。しかし、米の上にパスタなのが台無しだ。


はっきり言って合わない。


試しに持ち帰りでいろんなメニューを頼んだ。


ご飯の上に生野菜やきのこなど多種多様にあるのだが、組み合わせがあっていない。


何故生野菜なのか?炒めたらいいじゃないか。もしかして嫌がらせなのだろうか?


「一つ聞いてもいいですか?」


「なんでしょうか?」


「このレシピは誰が考えたんですか?」


「私です」


「何故にこの組み合わせなんですか?」


「私の好きな物を組み合わせて見たのです」


「美味しいですか?」


「ライスのほのかな旨味と生野菜の旨味がとても美味しいです」


お米はライスと言うのね。そして、ウサギの獣人の人の味覚はやさしい味が好きなのね。


「お客さんは来ますか?」


「こんなに美味しいのにまったく来ません。たまに同じ種族の方が来てくれるくらいです」


「そうですか…。よくお店を継続させていけますね」


「それが、お恥ずかしい話ですが蓄えも無くなってしまい、もう店じまいをするか悩んでおります」


俺はチャンスだと考えた。


「良かったらお店を立て直しませんか?」


「そうしたいのですが、お客様が来てくれるビジョンが見えないのです」


「そうでしょうね。貴女達ウサギ族の方と人族は味の好みが違いますので」


「えっ、そうなんですか?」


「お客が食べた様子を観察したことはありますか?」


「マジマジ見るのは失礼かと思って」


「そうですか。では、食事が残っていることはないですか?」


「たまにライスだけが残っていることがあります」


おい、みんな別々に最後まで食べるのかよ。


「本来ライスは濃い味付けの肉などと相性がいいのですよ」


「そうなんですか?私はお肉を食べないので初めて知りました」


「ちなみにライスは何処で手にいれているのですか?」


「故郷から大量に運んでもらっているのでこの街ではここでしか食べれませんよ」


何という偶然なんだ。自分の幸運に感謝した。


「それよりもこのライスはウサギ族の方達が作っているのですか?」


「はい。野菜とライスが主食ですので。ただ、ライスはあまり売れていないので私が大量に買っていたのです。」


「ではこの店が無くなっては困るのではないですか?」


「そうなんです。だからギリギリまで店を継続させていたのですが…。」


「では、私が出資しますので一からやり直しませんか?」


「こんな美味しい話がある訳がない。もしや、借金を背負わせて私の体が目当てですね?」


「なんでやねん」


ついついツッコミをいれてしまった。


俺はしょうがなく冒険者証をだした。


「これは冒険者ギルド公認の冒険者証ではないですか」


そして、奥の手の金貨の袋を机にだした。


ウサギの獣人は目を輝かせて前のめりになった。


「やります。是非やらせて下さい」


こうして俺は料理屋を一から立て直すことにしたのである。


まあ、ただ単に美味しいお米料理が食べたいだけである。

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