第32話 第4王女

血の匂いで魔物がこないように離れた場所で今は休息している。


俺はペルルに感謝を込めて、これでもかっていうほど可愛がっている。


一緒に精霊ユニコーンもペルルを翼でよしよししている。


うん、こいつら可愛いな。



俺はセツナとのんびりしているが、他の者達は忙しそうだ。


盗賊や魔物が多かった故に負傷者や死者がでている。


戦闘の傷や後始末に追われ、皆疲れ切っているように見える。


そんな中、ダンダンと一人の女性が近づいてきた。


もちろん休憩中にセツナからダンダンが親衛隊の副隊長だとも聞いている。


「ダンダン副隊長、お疲れ様」


「やはりバレてるよな?」


「ええ、まあ俺達はダンダンが誰であれ気にしないけどな」


「そう言ってもらえると助かる」


「おいダンダン、私にも挨拶をさせろ」


「了解。こちらが親衛隊隊長のローズ・ロージアだ」


ローズはこちらに貴族の礼をしてから話だした。


「今回の護衛に君達がいてくれて助かった。本当に有り難う」


俺はセツナに目配せをさせて話をさせる。


「俺達は依頼をこなしたまでだ。それ以上のことはしていない」


そう、セツナの言う通りである。


回復魔法を使うことも出来るが、今は誰にも使っていないのである。


「そんなことはない、恥を忍んで言うなれば、君達がいなければ最悪のケースになっていたかもしれない」


「まあ、そこまで言うなら感謝の言葉を受け取ろう」


「それで本題なのだが、ティファ王女がお礼をいいたいそうで一緒に来てくれないか?」


「俺がか?」


「ええ。馬車の前でずっと守ってくれた姿を見たのだろう」


「ミロード様、どうします?」


「うーん、セツナ一人でいって来て」


その言葉を聞いてダンダンが割って入ってきた。


「こんな機会はないからミロードも一緒にどうだ?」


「遠慮するよ。窮地を救ったヒーロー(王子様)は一人だからね」


俺はわかるだろうと言う合図を込めてウインクした。


ローズとダンダンは納得してセツナを連れて王女の元へ行くのかと思いきや、ローズだけは一向に動く気配がない。


「一緒に戻らなくていいのですか?」


「案内は一人いれば十分だ」


「そうですか。でも隊長として忙しいのでは?」


「優秀な部下(ダンダン)がいるから問題ない」


「…。」


その後沈黙が辺りを包み込む。


「まだ何か用ですか?」


「何故セツナ殿がミロード様と言っていたか気になってな」


「あー、ただ単に以前までセツナは奴隷だったのですよ。その主人が私だったので今でも呼んでいるんだと思いますよ」


ローズは何かを考えている。


「ティファ王女のスキルを知っているか?」


「いえ、知りませんね」


「お告げだ」


「はい?いきなり何を言いだすんですか?」


「お告げのスキルは生涯何もない時もあれば、予言に誓いことを伝えられる時もある。一番観測されている事例で言えば、命の危機を回避するお告げと奇跡的な廻り合わせを告げられることが多いそうだ」


「だから、人の話を聞いてますか?」


「そこで今回のお告げなんだが、C級の昇格試験を受ける二人組の冒険者を雇えとな」


この方は人の話を聞かないようだ。


「はぁ。その内容で言えば確かに私達が当てはまりますね。あー、だからダンダンは冒険者の格好をして側にいたのですね?」


「半分は正解だ。残りの半分は騎士に向いてそうな冒険者をいつも探している。姫君の護衛ともなれば素行態度や性格も問われるからな」


「わざわざ探すなんて珍しいですね」


「姫様はスキルのせいで敵も多いからな。一人でも優秀な護衛が欲しいのだよ」


「それで、わざわざ私にこの話をしたのはお誘いですか?」


「ああ、セツナ殿と一緒に親衛隊に入らないか?」


「セツナの答えは解りませんが、私は自由な冒険者が性に合いますので」


「そうか、それは残念だ。よければセツナ殿が親衛隊に入れるように説得してくれないか?もちろんこれだけの褒美をつけるぞ」


そう言うと金貨が入っている布袋をドサッとおいた。


「あいにくお金には困っていませんので。まあ、もちろんセツナが迷っている時は後押しぐらいはしますよ」


「そうか、頼んだぞ」


そう言うとローズは急いで戻って行った。


目立たなくて良かったー。ふぅー。


セツナは大変だねー、ご愁傷様。




「」





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