第31話 一閃

護衛依頼開始から2日後。


「なぁセツナ?何かおかしくないかい?」


「何がだ?」


「同じ周期(時間間隔)で魔物が襲ってくるものなのか?」


「どうだろうな?一度俺も考えたが、一定の間隔で魔物を仕向ける意味がないからな」


「そうなんだよね。考え過ぎか?」


「そんなことないぜ、護衛依頼だからな。少し違和感を感じることは大事だ」


「ダンダンはどう思う?」


「ここだけの話、第4王女はスキルのせいで心良く思っていない人が多くいるらしい」


「王女とは言え、スキルで嫌われるなんてどんなスキルだろう」


「俺もスキルまでは知らないが、噂でな…」


「だからこんなに大勢の護衛がいるんだ」


「まあ…」


ダンダンが返事をしようとした時、緊急の笛の音がピーと鳴り響いた。



前方の方が騒がしい。


その後魔法の衝撃と音が伝わってきた。


後方の護衛リーダーが指示をだす。


「全員周辺の警戒を…」


さらに冒険者二人を偵察にだす。


しばらくして偵察が帰ってきて状況を話だした。


なんでも、盗賊と魔物が多数前方で戦闘が繰り広げられているそうだ。


その数盗賊だけで100以上。


その他に魔物もざっと200以上いるそうだ。


その数を目のあたりに近衛騎士の8割は全員前方に加わり、なんとか凌いでいるそうだ。


早急に応援が欲しいとのことで、護衛リーダーを含めほとんどが前方に応援に行くそうだ。



おいおい、リーダーが行ったら誰が後方を指揮するんだよ。


「ミロード様どう思う?」


「これは不味いな」


俺の言葉を聞き、ダンダンが尋ねる。


「腕利きの冒険者と近衛騎士がこの人数いて、何故不味い状況なんだ?」


「魔物と盗賊が一緒にこちらに攻めている状況ってことは、その魔物は盗賊の配下か操られていることになる。魔物を含めるとこちらの6倍以上の数がいるのに前方からしか攻撃しないってことは…」


「あっ、囮か!やばい、ティファ様が危ない」


そう言うとダンダンは一目散に馬車の方へ走っていった。


後方には俺とセツナだけになった。


「セツナどうする?」


「ダンダンには情報料の借りがあるからな、俺が行こう」


「じゃあ、任せるよ。流石に後方の警戒に一人もいないのは不味いだろうからペルルと一緒に残るよ」


「御意」


ペルルと後方を警戒していると後方からも魔物が押し寄せてきた。


状況が状況だけに俺はペルルに頼むことにした。


「ペルル、俺が水魔法放つから濡れた魔物を凍らせてもらってもいい?」


「クルゥー、クルゥ」


何故かペルルは短い尻尾をブンブン振って喜んでいる。


俺は水の不死鳥をドンドン魔物に放つ。


魔力を温存するため、少しの魔力しか込めていない。


しかし、ペルルがどんどん魔物を凍らせていく。


一通り落ち着くと俺は身体強化を駆使して剣で魔物に止めを刺していく。


こちらが一段落すると今度は中央に林の中から盗賊達が一斉に出てきた。


案の定王女を狙っての襲撃だろう。


さてさて、セツナとダンダンは無事だろうか?



中央の馬車では残りの2割の親衛隊とダンダンが懸命に戦っている。


セツナはと言うと、ダンダンから王女を守ってくれと頼まれたのだ。


馬車の扉の前で仁王立ちしているセツナ。


ダンダンは親衛隊に指示を出している。


「後方の弓がやっかいだ、二人前にでろ。その援護に魔法部隊は集中しろ」


「副隊長、それじゃあ盗賊の魔法を障壁で抑えられません」


「こちらでなんとかする」


その言葉通りにダンダンと楯兵が魔法をなんとかスキルと意地で抑えている。


ただ、魔法の数が増え、流石のダンダンも捌ききれなくなってきた。


そして、ついに盗賊の魔法がダンダンの横を通過して馬車に向かっている。


ダンダンは焦りながらも叫んだ。


「セツナ殿ーーーーーーー」


その言葉に答えるようにセツナは剣を一閃した。


馬車の前まで迫った魔法を剣を一振りするだけでかき消したのだ。


正確に言うなれば剣で魔法を切ったといえるだろう。


「えっ」


「えっ」


「えー」


「マジか」


「マジで」


誰もが魔法の行方を目で追った故に、盗賊も含めて目が点になる。


皆が固まっている隙に一人の盗賊だけは魔法を放ち続けた。


その威力は先程の倍はあるだろう。そんな魔法が立て続けに5発も放たれた。



流石に皆ヤバイと感じ、背筋が凍る思いで魔法を見ることしかできない。


セツナは剣を一振り、二振りと振るっていく。


最後の魔法を切ると同時に魔法使いに向かって、軸足に力を込め居合切りの構えから剣を一閃する。


その瞬間剣の斬撃が魔法使いに向かって放たれ、すぐさま片腕を切断した。


「…。」


「…。」


「…。」


「…。」


「こんな依頼無理だ」


「死にたくねぇー」


皆が驚きで固まっていたが、一人の盗賊がすぐさま逃げ出した。


それを見た盗賊は次から次へと逃げ出した。


さらには一人の盗賊が撤収の音をなり響かせている。



その音を聞き前方の盗賊も逃げ始めた。


魔物は囮なのか未だに襲い掛かってきているが、統率が取れなくなった魔物を一匹ずつ片付けていく冒険者と親衛隊。


そして全てが終わると少し場所を移動して休息となった。

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