第30話 昇格試験

翌日、朝食を食べているとサラサが提案をしてきた。


「ミロード、冒険者ランクの件だけどいいかしら?」


「うん、お願い」


「昨日のボアの群れを一掃したことで、残りは護衛依頼だけなのだけど受けていいかしら?」


「そんなに改まってどうしたの?」


「護衛依頼の内容は本部が依頼を持ってくるから選べないのよ」


「あー、なるほど。でもセツナもいるから問題ない」


「了解」


「護衛依頼の間はリーリアと一緒にお留守番ね。リーリアは発声練習頑張ってね」


「ァ、ィ」


今の精一杯の声で答えてくれた。


ちなみにリーリアは声がだせるようになってから俺に対してセツナと一緒で尊敬し始めた。


やけに距離が近い気がするが、負けじとペルルも引っ付いてくるので可愛らしい。


ちなみにリーリアを治してから精霊のユニコーンは俺と行動を共にしている。

陰と陽の関係もあるが、一番は何故か俺に懐いてきたのだ。


もしかして俺って陰側の人間?

まあ、考えてもしょうがないので遠慮なく可愛がることにしている。

ペルルが焼きもちを焼くかと思いきや、一緒に撫でてーと来るので可愛くてしょうがない。



数日後、本部から護衛依頼の詳細がきた。


なんでも急遽護衛に参加してほしいとのことで、ラングード都市から水の都サンターナへの護衛だそうだ。


王都の貴族が冒険者ギルド本部での用事が終わり、水の都サンターナへ寄ってから王都に帰るそうで、サンターナの冒険者であった俺に急遽声がかかったそうだ。


貴族の騎士も大勢いるのに急遽俺を呼ぶ意味が解らない。


嫌な予感がするので、目立たないようにしよう。



そして護衛依頼当日。


今までで見たことのないような豪華な馬車を騎士が30人ほどで護衛している。


さらに俺を含めて冒険者が20人はいるだろう。

まあ、8割ほどが王都からの冒険者らしい。


おいおい、この人数はなんなんだ?

セツナとこの光景を眺めていると今回の護衛依頼のリーダーが話だした。


「今回の護衛依頼も前回と一緒で、馬車の周りを親衛隊が守り、その前後に俺達冒険者達が10名ずつ配置する、いいな」


その後各冒険者に配置が伝えられ、俺は後方の配置を言い渡された。


「ミロード様、この護衛はもしかしたら偉い方が乗っているかもな」


「そうだよね、ここまでの護衛見たことないし」


そんなことを話していたら、王都の冒険者が得意気に話をしてくれた。


「護衛対象をしらないのか?」


「うん、良かったら教えて」


「あの馬車には第4王女が乗っているんだ。だから皆護衛はピリピリしている」


「あー、だから親衛隊なのか…。面倒くさいな」


「バカ、そんな声で言うな。バレたら目をつけられるぞ。それでなくても他の冒険者達は親衛隊に誘ってもらえるように媚を売っているってのに」


「へぇー、皆親衛隊に入りたいんだ?」


「当たり前だろう。のほほんと護衛をしてるだけで給金をたんまり貰えるんだぞ」


「そんなもん?むしろ今の発言の方がヤバイんじゃない?」


「あっ…。」


「でも、この護衛に着いている冒険者なら稼ぎもいいのでは?」


「装備に宿代・アイテムなど出費が多い上に年齢と共に衰える冒険者なんて、いいのは若い時だけだ。だから皆目をギラつかせているんだ」


「そうなんだ。教えてくれて有り難う」


「情報のお礼をいつか期待してるぞ、俺の名はダンダンだ」


「了解、ダンダン宜しく」


俺とセツナも名を告げ、会話に花を咲かせた。



時刻となり、ゆっくりと出発するのであるが俺はセツナとダンダンと王都の話などを聞きながらのんびりしている。


後方の護衛リーダーがたまに睨んでくるが気にしない。


その後も軽快に進み、初日は何事もなく終わった。


前回は馬車で行き来した場所を今回は護衛しているのだが、やはり初めて護衛をすると大変さが身に染みてわかる。


この人数でこれなら少人数の護衛なんてヤバイだろうな。


ちなみにダンダンとのんびり話をしていられる訳は、気配察知を精霊ユニコーンがしてくれているからだ。


魔物が近づこうとした時には俺の不死鳥が魔物を殲滅している。


おかげで後方の冒険者リーダーも俺達に何も言わないのだ。


「それにしてもDランクと聞いてたのに、ミロードは凄いな」


「まぁね。セツナに関しては接近戦に関してはもっとヤバイよ」


「おいおい、魔法と気配察知がミロードで近接戦闘がセツナかよ。情報をお前らに教えといてよかったよ」


ガハハと笑うダンダンは本当に気のいい奴だ。


何故パーティを組まずに一人で護衛依頼を受けているのかが不思議だ。



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