第29話 陰と陽

無事にリーリアを仲間にすることができ、セツナに別れを言う。


「セツナ、短い間だったけど有り難うな」


「何を言っている。俺が奴隷解放されようが一緒についていくぞ」


「そう言ってくれると信じていたよ。ツバキギルド長、これなら問題ないんですよね」


「ああ、奴隷から解放しただけだから問題ない。ただ、わ、私とたまに、か、買い物でもしてくれたら嬉しいな」


「自由にさせてくれているんだ、それくらいならいつでも付き合うぞ」


「つ、付き合う…」


ツバキギルド長は顔を真っ赤にさせて部屋を出ていった。


えっ、ウブなの?


まあ、いいか。


「じゃあ、取り敢えず宿屋に帰ろう。精霊の君も一緒においで」



こうして宿屋に戻ってから、皆で集まった。


「ねぇミロード、精霊って最後言っていたけどどういう意味?」


「えーと、ここに精霊が一緒に居るだけだよ」


「えっ、ミロードは精霊が見えるの?」


「普通に見えるし意思疎通もできるよ」


皆は驚き過ぎて、開いた口が塞がらない。


「リーリアは喋れないだけで、精霊は見えるんだよね?」


リーリアはブンブンと首を横に振っている。


俺はビックリして精霊に問いただす。


「おい、どういうことだ?」


俺の言葉に精霊は答えてくれた。


「彼女は子供のころに声がでなくなり、そのころから体内の魔力が乱れることで魔力操作ができないんだよ。そのせいで魔力視が使えず僕達を見ることが出来ないんだ」


「なんだ、お前らは一緒に側にいただけか?」


「うん、そうだよ。えっ、お前ら?」


「影の中に隠れてないで、出ておいで」


俺がそう言うとリーリアの影の中から紫色のユニコーンに似た精霊がでてきた。


ちなみにリーリアの髪の中に居た精霊は翼を生やした人型の精霊だった。


「あー、まだいたの?僕らが交わると災害や不運が起きるって前に言ったよねぇ?」


「そう言うことか、お前らが交わったことでララの声が喋れなくなったってことか?」


「た、たぶん。精霊に伝わる言い伝えでは、陰と陽の精霊が交わる時災いが起こるって言われていたから」


「確証はないのか…。それ以降は何か起きたか?」


「起きてない…と思う」


「そうか…、陰と陽ねぇー。あ、後で試したいことあるからお前ら手伝ってくれ。そうしたら、お前らの大好きなリーリアの声を治す手伝いをするから」


「ほ、本当?治る?」


「治る保証はないが、最善の努力をすると誓おう」


俺がそう言うと精霊達はくるくると俺の周りを飛びながら頷いた。


俺は仲間達に事情を話、今は近場の丘の上にいる。


人がいない場所を確認し、尚且つ魔物がいる場所を見つける。


丁度よくイノシシに似たボアと言う魔物の群れがいたので、俺は手をピストルの形にし狙いを合わせて、陰と陽の気精を混ぜた弾丸を放った。


放った弾丸の威力に俺は後ろに吹っ飛んだ。


それと同時に放った弾丸はボアに命中した瞬間、ドゴーンと言う凄まじい音と共に地面に風穴を空けた。


「おい、おい、これはヤバイな」


そう、俺は精霊の交わると言う言葉を聞いた瞬間にまぜるのスキルが頭をよぎったのだ。


精霊の魔力と言う名の気精を陰と陽をまぜて放った結果がこれだ。


まあ、俺への体の負担も凄いことからそう何度も使えないが、一撃必達の技としては十分だろう。


それに、これは辺り一面の陰と陽の気を晴らすことで正常化するのではないだろうか?


まあ、言い伝えが本当かどうかも分からないし、当分の間はこれで様子を見るとしよう。



そんなことを考えていたら、仲間達が詰め寄ってきた。


「な、なんですかあれは?」


「おいおい、ミロード様は攻撃魔法もすげぇのかよ」


「クルゥー、クルゥ」


リーリアは目を見開いて驚いている。


「まぁ、まぁ、落ち着いて。ついでにここでリーリアの声帯を治そう」


俺はそう言うとリーリアの首元に手を当て、喉の声帯をイメージしながらパーフェクトヒールを唱えた。


眩い光がララの首元に集まり、スーと消えていった。


「リーリア、なんでもいいから声を出してごらん?」


リーリアは疑問を浮かべながらも声を出そうとした。


「ァ、アゥ、アッ」


「よし成功だな。まだ喋るまではいかないだろうから、サラサが面倒見てくれる?」


「ええ、わかったわ」


「やはりミロード様は凄まじいな」


精霊達は目をパチパチしながら泣きじゃくっている。


「お前らもこれでいいだろう?その代わり、先程の魔法の手伝いを宜しくな。あっ、後リーリアの魔力の流れも念のため明日パーフェクトヒールをかけるから安心してくれ」


精霊達はもの凄い速さで頷いている。


「じゃあ、宿に戻ろう。あ、声の練習は人がいないところで頼むな」


サラサは俺の考えが解ったようで任せろとピースをしてくれた。


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