第28話 精霊
さっそくツバキギルド長に確認した。
「精霊族の女の子はどうなりました?」
「任せろ、ギルド長としてメリットを伝えた結果OKがでた」
「メリットなんてあったか?」
「セツナ殿に一つ貸しができる。それと、冒険者本部としては奇跡にあやかりたいと考えているそうだ」
「貸しどころか、マイナスだな。俺はミロード様の奴隷のままでいいのだが」
「まあ、まあ。それで精霊族の女の子の解放でいいのか?」
「一つだけ条件がついた。女の子の名前はリーリアと言うのだが、そのリーリアが望んだ場合君の奴隷として開放するとのことだ」
「まわりクドイな。それでセツナはいくらで解放するの?」
「そ、それは…。私の私財なので安くしてもらえないかと…?」
「ちなみにセツナは普通に開放されるの?ツバキギルド長の奴隷?」
「もちろん解放して、自由になってもらう予定だ」
「そう。まあ、リーリアさんが望まないと意味がないから、会わせてもらえる?」
「すぐに呼んでくるから待っててくれ」
そう言って出ていってから30分後、ツバキギルド長が戻ってきた。
一緒に連れてきた女性は身長150cmほどで、ピンク色の髪をハーフポニーテールにしている。
ずっと下を向いているため、俺は屈んで彼女の目を見ながら話す。
「初めまして、冒険者のミロードだよ。君に少しだけ質問していい?」
リーリアはこちらに目を向け頷いた。
頷いた瞬間リーリアの髪からピョコンと何かが顔をだした。
俺はその動物?いや、羽が見える。
あ、もしかして精霊か。
その瞬間頭に声が聞こえてきた。
『僕が見えるの?』
声が聞こえたがどう返したらいいかわからない。
『頭の中で僕に向かって念じて』
『こうか?』
『そう。凄い、僕が見えるなんて嬉しい』
『君は精霊かい?』
『そうだよ』
『どうしてその子の頭の上にいるの?』
『この子の声が喋れなくなったのは精霊のせいかもしれないんだ。それにね、僕はこの子が大好きなんだ』
『そう、ちなみにその子の声が治ったらどうするんだ?』
『たぶん治らないと思う。仮にもし治ったならリーリアと契約したいな』
『今は契約しないのか?』
『契約の一つに精霊に名前をつけることってあるの』
『ああー、その時に声が必要になるのか?』
『そう』
『わかった。ちょっと彼女に質問をするからまたな』
俺がリーリアになかなか質問しないので皆がこちらを心配そうに見ている。
「ごめん、ごめん、君は声が喋れないって聞いてたからどう言う風に質問しようかと思ってね。だから、さっきみたいに首を振って教えてね」
リーリアは頷いて返事をしてくれた。
「冒険者ギルドは楽しい?」
リーリアは何も返事をしない。
「人生楽しい?」
リーリアは横に首を振った。
「もしこの先楽しいことが待っているならば僕についてくるかい?」
リーリアは考えているのか、しばらくして頷いた。
「そこにいる鬼人族のセツナって人が君にお礼をしたいんだって」
リーリアはセツナを見た。
「だから、君に幸せになって欲しいんだよね。君の幸せを聞きたいけど…、あっ、紙に書けばいいだけじゃん。君が何をしたいか紙に書いてくれないか?」
リーリアは首を横に振って悲しそうにしている。
「ミロード、その子は文字が書けないのよ。昔は喋れていたそうだから、声は聞きとれはするけど…」
「あー、ごめんね。どう伝えようかな、君の幸せの手伝いをしたいんだけど、よかったら一緒にこない?いろんな景色を見て、美味しい者を食べて、一緒に冒険しないか?」
リーリアは真剣に考えているみたいだ。
その時ペルルがリーリアに近づいて「クルゥ、クルゥー」と鳴いている。
そしてそっと手を触った。
何故かリーリアは涙を流し頷いている。
その後、俺を見ながらうんうんと頷いて見せた。
リーリアが頷いたことで俺はツバキギルド長に話かける。
「決まったみたいですが、セツナの費用はどうします?」
「金貨10枚程でいかがだろうか?」
「えっ、国を救うほどの戦力がたった金貨10枚ですか?貴女の愛はそんな物ですか?」
「ち、ちがう。ただ私の私財が…。ぶ、分割で金貨100枚で勘弁してもらえないだろうか?」
俺はにこやかに微笑んだ。
「奴隷にするって言っているなら俺は首を横に振ったでしょうが、無償で解放のみとのことなので、今回はそれで手を打ちましょう」
ツバキギルド長はホッとしているようだ。
それもその筈、Sランク級の実力者ならばそれ以上の値段が当たり前なのだから。
俺に関してはリーリアと言う相棒ができた上に金貨が増えてラッキーである。
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